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日本よりざんねんなアメリカ政治の批判ごっこ

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■「民主党に投票すると肉が食べられなくなる」

「民主党が打ち出す厳しい環境規制が実行されると、今まで乗っていた車にも飛行機にも乗れなくなる、ハンバーガーも食べられなくなり食生活も変えなければならない。これまでの生活を守るためには共和党に投票すべきだ」


 

民主党が厳しい環境規制で変えようとしているアメリカのライフスタイルと、それを守る共和党とトランプ、という図式だ。肉をやめてでも環境を守りたいという若者たちの思いを、政治的な意図にすり替えたのだ。

驚いたことに、さらにこれをマネタイズしているのがトランプ大統領である。トランプ選対委員会のオフィシャルウェブサイトでは、有名な赤いMAGAキャップ(「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」と書かれた帽子)などとともにプラスチックのストローが売られている。「トランプ」というロゴ入りの赤いストローに込められたメッセージはこうだ。

「民主党は環境に悪いからとプラスチックのストローを禁止して、紙のストローを押し付けようとしている。紙ではなんとも飲みにくい。ウチのストローはリサイクル可能なプラスチックだし太くて飲みやすいからこちらの方がベターだ」

10本入りで15ドル、これまでに約5万5000セット(80万ドル相当)を売り上げて選挙資金の一部になっているという。

■「肉を食べるか否か」論争は共和党の思うツボ

こうした両党のせめぎ合いは、アマゾン火災が大きく報道され始めた夏の終わりから顕著になっていたが、そこで折しももう一つの巨大な自然災害が発生した。アメリカ人の人気リゾートでもあるバハマを襲った史上最強のハリケーン・ドリアンが、壊滅的な被害をもたらしたのである。

この辺りから、アメリカ人の環境への関心がこれまでで最高潮に達したのは間違いない。

その直後、CNN主催で民主党の大統領候補者を集めた視聴者参加番組「環境タウンホール」が開催された。

各候補者はそれぞれ独自の環境対策を打ち出し有権者にアピールしたが、ここでも肉やストロー、そして省エネ電球などが話題に上がったのだ。

最有力候補の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員はこんな質問を受けた。「トランプ政権は省エネ電球の基準を引き下げると発表しましたが、国民がどんな電球を使うかを政府が決めるべきだと思いますか?」

それに対しウォーレン候補はこう答えた。

「もちろん環境のためにできることはたくさんあリ、人によっては省エネ電球だったり、ストローやチーズバーガーをやめることだったりもする。でも、私たちがそれに関して論争することは、もっと環境を汚している化石燃料産業の思うツボ。大気中に放出される温室効果ガスの7割はこうした産業から排出されていることを考えると、私たちがターゲットにしなければならないのはこうした産業なのだから」

一方、その1週間後に行われた3回目の民主党大統領候補討論会でもこんな会話があった。自身がヴィーガンとして知られるコーリー・ブッカー上院議員は、「環境を守るためにアメリカ人は皆ヴィーガンになるべきだと思うか?」と聞かれ「ノー」と答えている。

いずれも共和党の思惑通り、環境論争が肉やストローに終始してしまうことを警戒しての反応だろう。

■共和党支持でも環境意識が高い若者たち

人間活動による地球温暖化を否定し、不要な環境対策で肉が食べられなくなるという危機感をあおる共和党と、それに対し政府による企業活動の規制を訴える民主党。

真っ二つに分断されているように見えるアメリカ人の環境意識だが、実は若者世代だけをとると、全く違う現実が見えてくる。

ミレニアル&Z世代(18~38歳)に気候変動が人間活動によるものと考えるか尋ねたところ、イエスと答えた民主党支持者は76%だった。これは当然としても、意外だったのは共和党支持者の回答だ。55歳以上の大人の支持者だけだと約半数近くがノーと答えている共和党が、若者世代になるとむしろ民主より1%多い77%がイエス、つまり人間活動によるものだと答えているのだ(ニュースメディアNewsyと調査会社Ipsosの合同調査)。

つまり環境問題に限っては、若者世代の間では二極化は存在しない。これが一体感ある大規模な抗議行動や、肉を減らしたい、ヴィーガンになりたいというトレンドにも反映されているのだ。

■「肉を食べたい大人と環境を救う若者」の構図に?

ここで再び1年後に迫った大統領選に話を戻し、環境問題に敏感な若者票がどう大統領選に影響してくるのかを展望してみよう。

若者の投票率が低いのは日本と同様だが、それだけに投票すれば大きな変化をもたらす可能性がある。実際オバマ大統領を2度当選させたのも、投票所に押し寄せた若いミレニアル世代だった。

当時に比べ、彼らは全体としてますます民主党・リベラルに寄っていて、逆にトランプ大統領の支持率は3割と低い。そんな彼らの投票率が上がることは民主党にとっては大きな追い風だし、共和党には脅威になる。そして彼らを燃え上がらせ、投票に向かわせる大きなファクターになりそうなのは、今のところ環境問題に間違いない。つまり大統領選の行方は、民主党がどれだけ実行可能で効果的な環境対策を打ち出すことができるかにかかっている。

それに対し、共和党は「肉論争」を激化させ、ライフスタイルを変えたくない大人にアピールしつつ、今後も経済優先を訴えて規制緩和に対する批判をかわそうとするだろう。

大統領選を制するのはどうしても肉を食べたい大人か、それとも肉を減らしてでも環境を救いたい若者か? 肉をめぐる政治的ジェネレーション・ウォー(世代間争い)はすでに始まっている。

その票の行方は、今後1年間で地球環境がどう変わっていくのか、つまり今後アマゾン火災や巨大ハリケーンのような大災害が起きるかどうかにも左右されるだろう。一方、11月29日に2回目の世界規模の抗議行動を呼びかけているグレタさんの動きも注目だ。こうした抗議行動が今後どれほど盛り上がるかも見逃せない。

環境問題は大統領選を左右する最大のファクターの一つとしても、今後ますます目が離せないものになっていくだろう。

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シェリー めぐみ(しぇりー・めぐみ)
ジャーナリスト・ミレニアル世代評論家
早稲田大学政治経済学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。ラジオ・テレビディレクター、ライターとして米国の社会・文化を日本に伝える一方、イベントなどを通して日本のポップカルチャーを米国に伝える活動を行う。長い米国生活で培った人脈や米国社会に関する豊富な知識と深い知見を生かし、ミレニアル世代、移民、人種、音楽などをテーマに、政治や社会情勢を読み解きトレンドの背景とその先を見せる、一歩踏み込んだ情報をラジオ・ネット・紙媒体などを通じて発信している。オフィシャルブログ
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(ジャーナリスト・ミレニアル世代評論家 シェリー めぐみ)

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