記事

日本よりざんねんなアメリカ政治の批判ごっこ

1/2

熱帯雨林アマゾンの火災で爆発的に広がった環境保護の動きは、2020年に控えるアメリカ大統領選の争点になりつつある。だが「民主党に投票すると肉が食べられなくなる」など、訴える内容はあまりに極端だ。NY在住ジャーナリストのシェリーめぐみ氏が、白熱するアメリカ政治の様子をリポートする――。(後編/全2回)

米南部テキサス州フォートワースの米軍基地で、取材に応じるドナルド・トランプ大統領=2019年10月17日、アメリカ・フォートワース - 写真=AFP/時事通信フォト

■16歳を起点に始まった世界的ストライキ

9月20日、世界同時に開催された抗議行動「気候変動ストライキ」は、16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリさんを先頭に、世界150カ国400万人の若者が環境への危機を訴えた。彼らの中には率先してプラスチックストローをやめ、エコバッグや水筒を持ち歩き、さらには、肉を食べるのを減らすという行動を実践している者も少なくない。

プラカードを掲げて行進する男性 - 撮影=Kazushi Udagawa

そんな彼らに対する大人たちの反応は、意外な展開を見せつつある。環境問題が2020年大統領選の大きな論点になりつつあるだけでなく、日本人にはちょっと想像もつかない「肉をめぐる争い」が起こっているのだ。

スウェーデンの高校生、グレタさんは2018年8月、毎週金曜日に学校を休み、議会の前で環境対策を訴えるストライキをたった1人で始めた。これがネットで世界に広がり、世界中の高校生がそれぞれ同様のストライキを開始。やがて今年5月には150万人が参加する世界同時の高校生ストに発展した。グレタさんは一躍時の人となり、今年のダボス会議に続き9月の国連環境サミットにも招かれて、一時はノーベル平和賞受賞もささやかれた。

そしてサミット直前の9月20日。今度は若者だけでなく多くの環境保護団体や企業なども巻き込んで、世界150カ国で世界同時の環境ストライキが開催された。主催者推定では400万人が参加したとされている。

筆者も25万人(主催者発表)を動員したニューヨークでの抗議行動を取材した。スタート時刻の正午、集合場所は手作りのプラカードを持ったたくさんの人々で身動きが取れなくなるほど。その過半数は、中高生と大人同伴の子どもたちだった。

■パタゴニア、アマゾン、グーグル社員も参加

この日は平日だったにも関わらず、なぜ多くの児童や学生が集まったのか。ニューヨーク市からは前日、公立の小中高110万人の生徒に対しストに参加するなら学校を休んでもいいと通達が出ていた。民主主義を実地で学ぶチャンスであるとともに、子どもたちの環境への強い関心と危機感の高さに配慮した計らいだったとも言えるだろう。私の友人の子どもたちも、何日も前から熱心にプラカードを作っていた。

実際どのくらいの大人が会社を休んで来ていたかは分からないが、報道ではパタゴニア、バートン、ラッシュなど若い世代に人気のブランドが活動に賛同、当日は店舗やオンラインショップをシャットダウンした。一方、アマゾンのシアトル本社では社員1000人がストライキへの参加を表明、グーグル社員も参加という報道もあった。

彼らの手作りプラカードには思い思いのメッセージが書かれていた。「地球はたった一つしかない」「化石燃料産業と戦え」「自分は破壊された未来のために勉強しているのか?」などなど。

小学生の子どもがかぶっている家を型どった段ボール箱には、炎と共に「私たちの家が燃えている」というメッセージ。グレタさんがスピーチで常に口にするフレーズだ。フランスのマクロン大統領も、アマゾン火災報道を受けて同様の言い方をしていたのは記憶に新しい。

「私たちの家が燃えている」と書かれたプラカードを持つ参加者(右) - 撮影=シェリーめぐみ

■「工場畜産は禁止」「議会はパニックせよ」

また、全身真っ黒なボディスーツに牛の頭の被り物をかぶった2人組、プラカードには「工場畜産を禁止せよ」と温室効果ガスを大量に放出する畜産に抗議している。「地球を救うためにヴィーガン(肉や卵などの動物性たんぱく質をとらない食生活)になろう」というプラカードを持ったグループもいた。

「工場畜産を禁止せよ」というメッセージを持つ2人組 - 撮影=Kazushi Udagawa

「投票することが環境を守る行動だ」と政治参加を求めるメッセージも目立ち、「議会はパニックせよ」と、環境対策に消極的な政治家たちに対する憤りや怒りをぶつけたものもあった。

筆者は参加者数人に「なぜこの抗議行動に参加したのか」という質問を投げてみた。

13歳の女子は「気候変動に対する大人たちの知識が少なすぎる。温暖化がフェイクニュースではないということを知らせたかった」と答えた。またアマゾンの火災に関しても「これまで報道が少なすぎたけれど、今回世界の多くの人が知ることになったのはよかった」と語ってくれた。

14歳の女子は「気候変動に対処するために残された時間は最悪12年(国連が2018年発表した)しかないのだから、温室効果ガスを減らすための抜本的な対策をしてほしい。地球を悪くしている大人もこの抗議に一緒に参加し、政府に圧力をかけ、毎日の生活も変えてほしい。例えば公共交通機関を使うとか、地球を救うためにやってほしい」

■温暖化対策はアメリカを二分する問題に

15歳の男子は「この抗議活動は自分たち生徒が学校を休んでやっているけれど、実際に世の中を変えることができるのは大人だけだ」と訴えていた。

ストには投票権のない少年・少女も多く参加した - 撮影=Kazushi Udagawa

彼らはおしなべて「環境に関する大人の動きが鈍い」と感じている。そしてその背景には、環境をめぐる驚くべき政治の二極化が存在していた。

アメリカ人の環境への意識はにわかに高まっていて、気候変動が人類の未来に深刻な影響を与えると考える人は、6年前の4割から6割近くに増えている(ピュー研究所調べ)。ただし、意識が高まっているのは、野党の民主党支持者だけなのだ。

研究所によると、民主党と民主党寄りのインディペンデント(支持政党なし)の有権者の84%が、温暖化を深刻に捉えているのに対し、共和党支持者は27%にとどまり、6年前からわずかしか増えていないという。つまりアメリカ人の環境意識は、リベラル寄りの民主と保守寄りの共和ではっきりと二極化してしまっていることになる。

その結果、本来ならば地球と人類全体の問題であるべき環境問題は、政治的な対立の火種になってしまっているのだ。

■スター議員が打ち出した「グリーン・ニューディール」

ご存知のように、トランプ政権と共和党は人間の活動による気候変動・地球温暖化を否定し、経済優先で環境規制を次々と緩和している。それに対し、民主党がもっと厳しい環境規制を掲げて大統領選を戦おうとしているのは自然な流れでもある。

今年2月、民主党が提案した「グリーン・ニューディール」という決議案は、環境対策だけでなく、気候変動の影響を最も受ける低所得者の救済も含めた非常にプログレッシブなもので、提案したのが今年ニューヨークから最年少で下院議員に就任し、瞬く間に民主党のスーパースターになった“AOC”ことアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(30)だったことも大きな注目を集めた。

「グリーン・ニューディール」というタイトルも、1930年代の世界大恐慌後のルーズベルト大統領による有名なニューディール政策を彷彿(ほうふつ)とさせ、スケールの大きさとシリアスさを感じさせた。法案は上院で否決はされたが、「環境の民主党」というイメージを強く印象付けることには成功したと言っていい。

ところが驚くのは、それに対しトランプ大統領と共和党が送り始めたメッセージである。

あわせて読みたい

「アメリカ大統領選」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    韓国国民はGSOMIAを理解せず?

    AbemaTIMES

  2. 2

    GSOMIA騒動 隠れて不買続く韓国

    NEWSポストセブン

  3. 3

    現代人にADHD的なミスが多い理由

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    昭和女性描く漫画 閉塞感に愕然

    紙屋高雪

  5. 5

    おにぎり35個万引きした元公務員

    fujipon

  6. 6

    桜を見る会の批判 本質からズレ

    青山まさゆき

  7. 7

    沢尻容疑者めぐる陰謀論の疑問

    自由人

  8. 8

    動物を撃つ マタギの葛藤と信念

    清水駿貴

  9. 9

    「芸能人逮捕は陰謀」真剣に検証

    AbemaTIMES

  10. 10

    廃棄が9割 ジビエブームの裏側

    BLOGOS編集部

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。