- 2019年10月22日 11:15
化粧水は"肌の奥まで浸透しない"科学的理由
2/2死んだ細胞に化粧水を塗る必要はあるか
化粧水が浸透するのは一般的に、この死んだ角質細胞で形成されている「角質層」まで。その下で細胞分裂している肌の「奥」に、届くことはありません。
また、角質層はいちばん外側にあるので、見た目の美しさを左右します。
それゆえ、この角質層を一生懸命ケアしようとするわけですが、角質層はそもそも、しばらくすれば垢となって剥がれる運命なのです。
じつは、化粧品の管理をおこなっている「薬事法」という法律でも、化粧品が角質層(=角層)よりも奥まで浸透するという広告は禁じられています。
ですから、どんなに効果があるように思える宣伝広告でも、よく目を凝らすとかならず、「浸透するのは角(質)層まで」とどこかに明記されているはずです。
多くの人が、このたった0.01~0.03ミリの死んだ細胞の表面をうるおわせるために、化粧水をせっせと使っている、ということになるわけですが、果たして意味があるでしょうか。
肌の最大の役割は「からだを守ること」
では、角質層のさらに奥まで届くものがあるのかといえば、特殊な医療技術を用いない限り基本ありません。
というのも、皮膚本来の機能を考えると、それはあってはならないことだからです。
わたしたちの肌は、そもそも何のために存在するのでしょうか? 肌の最大の役割は、「からだを守ること」。
異物が体内に侵入するのを防ぐ「バリア」の役割を果たしているのが、皮膚なのです。そのバリア機能のおかげで、わたしたちの細胞や血管、神経が守られています。
全身の約30パーセントの皮膚にやけどを負うと、致命的だといわれます。そして忘れがちですが、皮膚はわたしたちの臓器のひとつ。皮膚は体重の約16パーセントを占める、人体で最大の臓器です。
外の世界に直接触れる臓器ですから、さまざまな役割を持っているわけですが、おもには、①水分の喪失や透過を防ぐ、②体温を調節する、③微生物や物理化学的な刺激から生体を守る、④感覚器としての役割を果たす、の4つ。
いずれも生命を維持するために必要不可欠な機能です。
また、「からだを防御する」機能として、最表面にある角質層がもっとも重要な役割を果たしています。この角質層の厚さは平均0.02ミリしかありませんが、健全であれば同じ厚さのプラスチック膜と同じくらい、水分を通しにくい性質があります。
もし、角質層がバリア機能を失って何でもかんでも浸透させてしまうようになると、局所だけでなく全身が危険にさらされる可能性があるということです。実際に表皮を超えて異物が侵入したことで、重篤なアレルギー症状を引き起こした例も報告されています。
肉や魚の切り身を想像してみてください。肌にバリア機能がなければ、肉や魚の切り身のように塩や胡椒や醤油などの下味をすり込めるということになるでしょう。そんなことが肌に起こったら大変です。
肌は外界の異物からからだを守っています。そのバリアに対して、外からすり込んだり、押し込んでみたり、温めてみたり、ラップをしてみたりとがんばっても、バリアより奥深くに成分が届くことは、そもそもないのです。
必要なのは浸透ではなく皮脂の補強
そして、「からだを守る」機能に加えて、「からだから逃がさない」機能としても、皮脂のバリアが重要です。健全な皮膚の表面は皮脂で覆われ、脂質(セラミド)や天然因子・水分が逃げないように守られています。

落合博子『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所)
しかし、一旦バリアが破壊されると保持されるべき物質が角質から外に流出し、乾燥を引き起こすのです。
肌へ化粧品の成分を浸透させようと思うと、バリアを破壊する必要があります。しかし、バリアを破壊すれば肌の大事な成分が保持できなくなり、頻回に化粧品をつけても乾燥するという悪循環を生みます。
大事なのは、正常なバリア機能を邪魔しないこと。化粧品を浸透させるのではなく、バリアとなる皮脂を補強するような化粧品の使い方を意識することです。
どんな肌にも自己再生力がある
ここまででもおわかりかと思いますが、巷にあふれている広告はとても魅力的ですが、文字どおりほとんどが「宣伝」です。
たしかにさまざまな研究が進み、新しい成分がつぎつぎに登場し、あらたな効能の科学的エビデンス(検証結果)がとれているものもあるかもしれません。しかし、肌トラブルが生じたときにいつも立ち返って思い出していただきたいのは、肌本来の役割。
そう、バリア機能です。
このバリア機能をしっかり維持することができれば、肌はおのずと美しくなる力を備えています。肌トラブルが生じたとしても、わたしたちの体内では絶えず細胞が生まれ変わっていますから、少し待っていれば新しい肌に生まれ変わるのです。
手術で皮膚をどんなに上手く切り貼りし、美しく縫合する技術を施せたとしても、傷が最終的にキレイに治っていく過程は、人体の自己再生力なくしてはあり得えません。そして、どんな肌にも、その力は備わっているのです。
ちなみに、表皮のターンオーバーは約6週間サイクルでおこなわれるといわれています。ですから、ちょっと乱暴ないい方をすれば、6週間肌の機能を邪魔しないように待てばいいのです。
もちろん、食べものや生活習慣、ストレスなども肌の状態に影響しますが、肌に関する正しい知識を持っていれば、何をして何をしなくていいかが、わりとスッキリ見えてくると思います。
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落合 博子(おちあい・ひろこ)
国立病院機構東京医療センター形成外科医長、再生医療研究室室長、日本抗加齢医学会専門医
1991年東北大学医学部を卒業。医師免許取得後、形成外科、創傷外科の専門医としての勤務を経て、2003年より国立病院機構東京医療センターで形成外科医長を務める。
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(国立病院機構東京医療センター形成外科医長、再生医療研究室室長、日本抗加齢医学会専門医 落合 博子 写真=iStock.com)
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