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恩師・金田正一さんに捧げた 村田兆治氏の「弔辞」独占掲載

愛弟子が大役を果たした

祭壇には花とともに野球グッズも

 史上唯一の400勝投手にして、本誌・週刊ポストの「誌上総監督」だった金田正一氏が、86歳で亡くなった。その葬儀・告別式で弔辞を読み上げたのは、週刊ポスト記事で“指名”を受けていた愛弟子だった──。

【写真】祭壇には花とともに野球グッズも

 台風19号が東日本を直撃した10月12日に営まれた金田氏の通夜には、近親者に加え、週刊ポスト記者を含む友人・関係者20人ほどが参列。翌日の葬儀・告別式には、張本勲氏、堀内恒夫氏、谷沢健一氏、桑田真澄氏ら約200人が姿を見せた。ソフトバンク球団会長を務める王貞治氏は、同日にCSの西武戦があったため、早朝にお別れに訪れた。

 そうしたなかで弔辞を読んだのが、ロッテ時代の教え子の村田兆治氏だった。この人選は、週刊ポスト特集〈葬式ではあの人に弔辞を読んでほしい〉(2018年5月4・11日号)で、金田氏が“指名”していたものだ。

◆お前、いいピッチャーになるぞ

 記事のなかで金田氏は、V9巨人の“同僚”であるON(王貞治、長嶋茂雄)よりも、〈監督時代にすべてをぶつけた村田兆治だよ。ワシのもとで兆治のマサカリ投法が完成し、日本一にもなった〉と語っていた。

 取材時、金田氏は“兆治が弔辞。面白い!”と笑いながら話していたが、喪主を務めた長男・賢一氏は、「故人の遺志」として村田氏に依頼したという。

 葬儀・告別式の直前には、「ポストのおかげでマウンドに上がるより緊張しているよ」と苦笑いしていた村田氏だが、原稿は用意せず、祭壇の遺影を見つめながら、別れの言葉を切り出した。

「私が座右の銘にしている“人生先発完投”。それを実践できているのは、金田さんに育ててもらったからです。人は誰でも人生という大切なマウンドに立っています。簡単に降板するわけにはいかない。それができるのも、プロ2年目の指宿(いぶすき)キャンプのブルペンで、雲の上の上の金田正一さんから“お前、いいピッチャーになるぞ”という言葉をいただいたから。背中を押されました。金田さんの眼力で私の人生が変わった」

 そして、「その金田さんが1年ほど前の記事で“(弔辞を読む時は)風邪引いてこいよ”と書かれていた」と続けた。前述の本誌記事で金田氏は、歌手・春日八郎氏(1991年没)の葬儀で弔辞を読んだ経験を振り返り、

〈たまたま風邪を引いていて、途中で鼻をすすったら、有名な作曲家の先生たちが“あの金田が泣いてるぞ”と揃って感動してくれた〉
〈兆治がワシの葬式に合わせて、風邪を引いてくれればいいんじゃが〉

と結んでいた。村田氏の言葉は、それを受けてのものだ。

「でも、今日は泣かない。泣かずに、“マサカリ投法”を完成できたことへの感謝を伝えます。私も文句をたくさん言いましたが、体の柔軟性、自己管理、睡眠など、節制することを金田さんが自分でやってみせて説明してくれた。そうして先発完投できるように成長させていただきました」

 師弟として苦楽を共にしたエピソードへ続く。

「勝てない時期にこんなこともありました。川崎球場で、4回3分の2という、あと1人で勝利投手の権利となるところで、マウンドにやってきた金田さんが交代しろという。私が、“(続投して)負けたらカネはいらない”と抵抗したら、金田さんは、“勝手にしろ”と投げさせてくれた。それで抑えて勝ち投手になると、金田さんは私を抱きしめながら、“あの後で投げた1球1球、それが一球入魂ということだ。覚えておけ”と。改めて、大切なことを教えてもらいました」

 野球界のために尽力した金田氏の功績へと話は移る。

「イベントを立ち上げ、小さな子供を抱き上げ、野球を通して育てていく。記録だけでなく、いろんなことを残してくれました。それを次の世代に伝えることが恩返しだと思っています。

 金田さんが400勝しています。(実弟の)留広さんや(おいの)金石(昭人)さんも含めて金田一族で600勝。これを1000勝にしてもらいたい。一族に遺志を継げる野球少年がいるなら、私が金田さんから受けた教えを、愛情を持って伝えたいと思っています」

 そして、こう結んだ。

「金田さん、私はすぐにはそちらに参りません。でもそのうち行くことになると思います。その時は“兆治来たか”と迎えてください」

◆口は悪いが、嘘はつかない

 葬儀の後、改めて村田氏に胸中を聞いた。生前の“指名”については、「急なことで風邪も引けなかったね」と苦笑しながら、「光栄なことですよ」と続ける。

「金田さんは、口は悪いが嘘をつかない。怒鳴るけど、フォローを忘れない。だから信用できる人だった。その金田さんから理解されていたと思うと嬉しかった。でも、こんなに早く別れがやってくるとはね……」

 離島での少年野球教室がライフワークの村田氏は、「野球を通じた人材育成をやってきたのが金田さん。それを引き継いでいくつもりです」と語った。“カネやん”の志は、脈々と受け継がれていく。

●写真提供/カネダ企画

※週刊ポスト2019年11月1日号

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