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防災行政は国家公共財 ~ 避難所での対応は国がより具体的な基準を設けるべき~

台風19号は日本列島に大きな爪痕を残した。21日現在で死者80人、不明者11人、71河川が決壊し、住宅被害が5万6000件以上、避難者数は4000人を上回り、さらに今回の台風によって水没した車の数は約10万台にも上ると言われている。

今回の台風がもたらした水害の特徴としては、ハザードマップの浸水想定区域の一致する箇所で発生したケースが多いことや各地のダムや渡良瀬遊水地など遊水地の存在が人口密集地域の大洪水を防いだ可能性があるとの指摘がある。これだけの大災害をもたらした一方で、東京都の約三割が浸水し死者が八千人にも昇ると指摘された状態を防ぐことが出来たのは国として防災に努めた成果であるとも言えるよう。しかしながら、地球温暖化の影響もあり、今回以上の勢力の台風が日本に上陸し人口密集地域に大洪水をもたらす可能性は相当あると考えるべきだ。

さて、今回の台風の通過に関して私が住んでいる自治体の対応から気づいたことがいくつかあり、いずれの問題も各自治体の裁量にゆだねるのではなく基本的に国が具体的な基準を定めイニシアチブを発揮すべきだと認識した。

まず、自治体が指定した避難所の中で解放されていないものが相当数あった。特に疑問を感じたのは、かつて洪水が発生したことがある川の隣にある小学校が避難所として開放された一方で、そこから500mくらい離れた丘の上にある中学校が避難所として開放されていなかったことである。少なくとも自治体が避難所として指定している場所はすべて開放すべきだ。私の住んでいる自治体では、自治体が防災無線で解放されている避難所を放送していたが、防災無線が聞こえない可能性もあることからこのような対応は非常に良くない。避難所だと思って行ってみたら閉まっていて、雨量が多くなり帰宅さえできなくなるようなケースを想定していなかったのだろう。

また、避難所へのペットの同行の許可に関しても、職員等の間で情報が共有されていなかったのも問題であった。私は避難所へのペット同行を禁止するのはナンセンスであり、基本的にはペットを同行した住民とそうでない住民の部屋を分ければよいと考えるが、ペットをどのように固定しておくべきか、し尿処理をどうするかなど課題は多い。

第三に、ホームレスが受け入れを拒否された例が問題になったが、表向きの理由としては住所がないからとのことである。そもそも緊急時に住民しか受け入れないのはナンセンスであり、受け入れの基準は全国一律で国が定めるべきではないか。さらに、緊急時に避難所でいちいち住所や連絡先の記入を求められるのは非効率的である。

最後に、日本語が分からない外国人に対してどのように避難を誘導するのか(テレビのニュース、自治体ホームページの避難情報、防災無線が日本語のみである等)外国人には分かりにくかったという声をよく聞く。これらを各自治体の力で外国語対応するのは厳しい場合が多いだろう。やはり、日本語が分からない外国人に対して災害情報や交通情報に関して、国が一元的に取り扱う情報サイトを拡充すべきだろう。観光庁が監修している外国人旅行者向け災害時情報提供アプリでSafety tipsというものがあるが、今回の台風では使い物にならなかったという意見がある。

防災行政は国家公共財(公共サービス)であるべきで、自治体間で避難体制などに関して格差があるのは望ましくない。それゆえ、国が中心となって災害行政の一元化を目指すべきだと私は考える。災害行政の一元化に関しては、新に「防災省」を設置すべきとの意見がある一方で、屋上屋を作れるだけであり既存の組織で十分対応できるとの意見も霞が関を中心に根強い。しかしながら、夏から秋を中心に年々台風や集中豪雨による大規模災害が増加しており、さらにマグニチュード6クラスの地震も毎年のように発生している。上述のように今後三大都市圏で大洪水が発生する可能性はかなりあると考えるべきであり、現在の内閣府の防災担当スタッフおよび中央防災会議と既存の省庁の連携だけでこれらに対応できるのかは甚だ疑問である。

もっとも、人命が危機にさらされるのは自然災害だけではなく、戦争やテロ、さらにサイバー空間上のテロも問題になる。そういったことを考えれば「防災省」ではなくアメリカのように「国土安全保障省」を設置せよということになるが、総務省・国交省、防衛省さらにエネルギーや環境行政を含めると経産省や環境省と所轄が重なることになる。その場合、厚労省分割案と同様に、新しい省を作るのならばどの省からどの部門を取ってきてどの部門を管轄する省を作るのかを議論しなければならない。

一方で、新しい省を作るのは時間がかかるにもかかわらず効果が不透明であることから、外交・防衛に関係する安全保障の重要事項を審議する機関である国家安全保障会議のような治安や災害行政に関係する安全保障を審議する常設機関を現行の中央防災会議の代わりに内閣に設置すべきとの意見もあろう。

現状を考えれば、将来的な防災省や国土安全保障省の創設を視野に入れつつ、内閣府の防災担当を組織として格上げし、各省庁からの出向者が中心でないプロ集団を育成すべきである。同時に、中央防災会議に代わるより常設性が高く権限が強い組織を作ることが必要なのではないか。

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