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"年収700万が当たり前"大阪の非常識な理容室

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■オープン初日は“ゼロ人”だったが……

「本町店」の外観 - 提供=Barber the GM

——本町店、肥後橋店に続き、2019年8月には梅田店をオープンしました。順調に事業を拡大していますが、業績は最初から好調だったのでしょうか。

最初の半年間はずっと赤字でした。1号店のオープン前は、何もしなくてもお客さまに来ていただけるだろうと思っていたんですが、ふたを開けてみたら、オープン初日の新規のお客さまはゼロ。慌ててホームページを作り、リスティング広告をかけて、Facebookも始めて……それでもお客さまはなかなか増えなかったです。

イケるかなという感覚がでてきたのは、オープンしてから4カ月くらい後のこと。その間は、毎月の売り上げ表を見るのもイヤでした(笑)

当時は経営陣も手探りだし、店は暇だし。スタッフのモチベーションも下がり、店の雰囲気がダラけたものになっていました。先の展望も見えないし、何もかもがめちゃくちゃな状態だったので、正直、いつ店を閉めようかと思っていたんです。

でも、そんなときに入ってきた1人のスタッフが、店の雰囲気をガラッと変えてくれました。彼は店のコンセプトに誰よりも共感し、「この店もっといけますよ! お客さまは絶対に来てくれます」と言ってくれて。オープニングスタッフが全員辞めていくなか、人が足りない時は1人でも営業を続け、来てくれたお客さまに真摯(しんし)に対応し、リピーターを増やしていってくれました。

■他業界にいたからこそ経験が生きている

そんな姿を見て、彼がいてくれる間は店を続けようと決めたんです。その後に入ってくれたスタッフたちも同じように誠実に熱心に仕事をしてくれ、そこから店が上向きはじめました。

「全ては人だな」と思いましたね。なので、会社の利益は後回しにしても、彼らに最大限還元しようと思っています。

——どの業界・職種にも共通する真理ですね。来店のきっかけづくりや集客方法について教えてください。

ご来店いただくきっかけは、ウェブでの集客が50%、通りがかりが40%、ちらしやご紹介が10%です。集客方法は、Google検索・Facebook・Instagram・看板。ホットペッパーなどの美容系広告は利用していません。

ウェブでの集客は、無料のGoogle検索と有料広告に分かれます。

「バーバー 本町」「散髪 本町」などで検索するとほぼ1位に出てくるので、そこからお店のことを知ったという方が多いですね。上位表示させることができた理由は、これまでの仕事で培ったSEO(検索エンジン最適化)の知識や経験を生かし、基本的な対策をしているからです。

とはいえ、特別なことはしていないので、競合のお店の多くがそういった知識や経験をあまり持っていないのかもしれません。

有料広告はリスティング広告やSNS広告を社内で運用しています。一般的な理美容室の広告宣伝費は売上比率で10%程度と言われていますが、当社は約3~4%。店舗数が増えても、金額はほとんど変わらずに集客できているので、今後もこの方針を続けていくつもりです。

■客とスタッフ双方の利益を追求した結果

会計時の様子。万が一決済できない場合は、振り込み先を書いて渡している - 提供=Barber the GM

——GMは「会計はキャッシュレス決済のみ」や「予約制度なし」という、理美容業界では珍しい取り組みをしていますね。なぜ決済方法を限定したのですか。

最大の理由は、業務委託であるスタッフの仕事を減らしたいと思ったからです。

現金を取り扱うと、レジ業務や締め作業など、彼らの仕事が増えます。彼らは髪を切るプロなので、僕としては一番大事な「お客さまの髪を切る」という仕事をして、最低限の掃除をしたら早く帰ってほしいと思っているんです。その思いを姿勢として表したのが、キャッシュレスです。

——導入するにあたって不安はありませんでしたか。

全然なかったですね。「みんなに来てほしい」ではなくて「現金しか払えない人は来なくていいよ」という感覚でした。SuicaやICOCA、Edyやクレジットカードのうち、最近はほとんどの人はどれかひとつは持っているので。

キャッシュレスにすることで10%のお客さまを失ったとしても、得られるものの方が大きいと思っています。例えば、社内の経理がすごく楽になることもキャッシュレスによって得られるメリットです。

■予約制をやめたのは「自分が面倒だった」

デメリットは、売り上げに対し3%程度の手数料がかかることと、「現金で支払えないなら帰ります」というお客さまが少なからずいることです。開店当初は、ひと月に10人程度はこうした方がいましたが、この1年半でキャッシュレスが浸透してきたのか、今はそんなにはいないですね。

——キャッシュレス対応で困ったことはありましたか。

ネットの環境が悪いとつながらないことや、月に5件程度ですがカードが通らないことがあります。

そのときは振り込みカードをお渡しして「ごめんなさい。手数料をひいて振り込んでください」とお願いしています。僕としては振り込んでもらえなくても仕方ないと思っているんですが、皆さんきちんと振り込んでくれますよ。

——予約制度をなくしたことも画期的ですね。

僕がもともと、客として予約を入れるのが面倒くさかったことが発端なんですけど、予約制をやめたいいところは、スタッフの稼働率が上がることです。

例えば15時30分に予約があると、15時15分や20分に予約をしていないお客さまに来ていただいても対応できないですよね。そうすると、その間のスタッフの時間が無駄になってしまいます。でも予約なしにすることによって、スタッフの「遊びの時間」を減らすことができるんです。

■混雑状況をリアルタイムで配信

ただ、予約ができないということは、お客さまを待たせてしまうということでもあります。その問題を解消するために、YouTubeでリアルタイムの店内映像を配信しています。

プライバシーに配慮して画像の解像度は低くしていますが、ひと目で待ち人数が分かります。施術までの時間をある程度把握できるので、お客さまのご都合に合わせて来店いただくことが可能です。

YouTubeで確認できるリアルタイム画像。混雑状況がひと目で分かる - 提供=Barber the GM

リアルタイム画像を見るたびにお客さまがたくさん待っていたら「はやってるな」、たまたま人が少なかったら「ラッキー」と思ってもらえるようで、お店の宣伝にもなっているのはうれしい誤算ですね。

——これから取り入れたい新しいアイデアはありますか。

今一番やりたいことは、施術後に撮影した写真やアンケートを、お客さまがお店を出た10分後くらいにSNSで送れるようにすることです。

施術の評価や次回のご希望など、お客さまとクローズなやりとりができるシステムを作りたいんです。お店ではなかなか言えない本音を教えてもらって、そのままフィードバックできれば、お客さまにとっても施術した理容師にとってもプラスになると思うからです。

欲を言えば、自宅でも理容室と同じスタイリングができるように、理容師がお客さまをセットしているときの動画も送りたいですね。

システム開発はまだこれからですが、実現できれば今後のGMの成長を決定づけるサービスのひとつになると考えています。

■サラリーマンの生涯年収よりも稼げるように

——今後の展開や目標について教えてください。

今後10年のうちに100店舗を持つことです。2019年の目標は3店舗でしたが、8月に梅田店をオープンしたのでクリアできました。2020年の目標は、5店舗にすること。4店舗目以降の出店場所は、東京か地方都市か、シンガポールや台湾などの海外か……まだ決めかねているので、これから決めていくところです。

あとは、今すぐではなく20~30店舗を展開してからになりますが、専門学校を作りたいと思っています。

理容師になる人の多くは、18歳で高校を出たあと専門学校に行きますよね。僕はGMで働くための専門学校を作りたいんです。卒業後にそのまま当社で働けば、20歳で確実に600万円は稼げます。仮に20歳から70歳まで50年間稼ぎ続けたら、3億円。ということは、普通のサラリーマンになるよりも多くの生涯年収を稼ぐことができるんです。

理容師になる人は減っています。平成30年度の合格者は美容師が1万5956人に対して、理容師は923人。美容師の17分の1以下しかいません。

若い人たちが「理容師ってかっこいい」「理容師になりたい」と思うくらいに理容師が魅力的な仕事になれば、理容師をもっと増やすことができますよね。だから、当社のスタッフには、「常に向上心を持ちながら成長し続ける、かっこいい理容師」でいてほしいと思っています。そのためには、新人の教育や個人の技術・サービス向上が必要なため、2019年8月に当社専用の研修施設「GMアカデミー」を作りました。


「GMアカデミー」の施設内の様子 - 提供=Barber the GM

理容師を、しっかり稼げてやりがいのある憧れの職業にすること。それが僕たちの最終目標です。年収も、700万円を当たり前にしたら、次は1000万円を目指します。そのためにも今できることを考え実行し、成長し続けていかなければ。まだまだ道はこれからです。

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貝淵 あゆみ(かいぶち・あゆみ)

フリーライター

関西大学社会学部卒業。フォトエージェンシーやIT企業での勤務を経て、2019年3月にライターとして独立。IT企業在職中は、複数の求人系サービスの立ち上げに携わり、コンテンツ部門や営業部門の責任者を務める。ビジネス・転職・人・工芸・美容・食などを中心に執筆活動中。

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(フリーライター 貝淵 あゆみ)

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