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"年収700万が当たり前"大阪の非常識な理容室

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平均年収が296万円の理美容業界で、「年収700万を当たり前にする」という目標に挑戦している理容室がある。どうやって高い報酬を支払っているのか。大阪市内で理容室を展開する「ギークマン」の田中社長に聞いた――。


大阪市の理容室「Barber the GM」 - 提供=Barber the GM

■1カ月の平均報酬額は53万2528円

「こんなにもらっていいんですか?」「働かせてくれてありがとう」。スタッフがそう言って喜んでくれるのが、何よりもうれしい――。そう話すのは、大阪市中央区本町で理容室「Barber the GM(以下、GM)」を運営するギークマン代表取締役CEO・田中慎也氏だ。

厚生労働省の調査によると、理容師の平均年収は約296万円。同社は「700万円を当たり前の年収にする」という目標を掲げている。

近年、美容業界では、サロンが美容師を正社員として雇用する代わりに業務委託契約を結び、必要な場所や施術設備を貸し出して対価をもらう「面貸し」がはやっている。同社はこれを参考に理容師と業務委託契約を結んでいるのだ。

1号店オープンから1年半後の2019年8月、GMで働く理容師の1カ月の平均報酬額は53万2528円、最高報酬額は70万3454円だった。このペースでいくと平均年収の2.6倍、年収780万円のスタッフが誕生するという。

いったいなぜこのような高い報酬を支払うことができるのか? 田中氏に成功の秘密を聞いた。

■予約も会話も要らない散髪屋がいいのに……

田中氏は大学を卒業後、不動産会社に営業として5年間勤務。飲食店経営や複数の企業の経営を経て、2018年2月にGMをオープンした。現在は2社の代表を務めるほか、他1社の取締役も兼務する。

GMの外看板 - 提供=Barber the GM

——業界未経験にも関わらず、なぜ理容室を始めたのですか。

これまでたくさんの散髪屋や美容室に行きましたが、自分が本当に行きたいと思う散髪屋がなかったからです。

予約が必要だったり、店員さんと話をしないといけなかったり、思う髪型にしてもらえなかったり。「散髪したいときに、今すぐ切ってほしい。話はしなくていいから、髪だけ切って早く帰りたい」という望みをかなえてくれるお店がありませんでした。

僕の求める散髪屋の本質は、「自分が思う通り、もしくはそれ以上の髪型にしてくれる」こと。その上で、“早くて安くて居心地がよくて、丁寧に散髪してくれる”というプラスアルファで求める部分も満たせるお店を作りたいと思いました。

とはいえ、業界未経験で分からないことばかりだったので、長年美容師として活躍し、自分で美容室も経営している業界のプロである友人に相談しました。

2人で話しているうちに、これからは理容室が伸びるだろうと意見が一致しました。

■サイドを刈り上げるなら理容師が有利

最近、男性の多くは美容室に行っていますし、美容室も男性客を取り込もうとしています。しかし、なかなかうまくいっていません。実際、友人の美容室でも男性客はあまり増えず、女性客ばかりが増えている状況でした。その理由は、美容師と理容師の技術の違いです。

男性の髪型はあまりはやりがないとはいえ、ここ数年はサイドを刈り上げる髪型が人気です。刈り上げるためにはバリカンを使いますが、バリカンは使い方が難しい。理容師は学校でバリカンの使い方を習いますが、美容師は習わないんです。

そういった理由から、男性のカットに対しては理容師の方が技術的にも有利だし、男性の求める髪型を提供できるのではないかと思ったんです。

理容室をする前提で試算をしてみたら利益が出せる感覚もあったので、店を始めることにしました。

来店客を散髪する様子 - 提供=Barber the GM

——年収700万円というと、平均年収の倍以上です。なぜそのような高い目標を立てたのですか。

人が辞めないお店を作りたかったからです。もともとこの業界は、他の業界に比べて給料が安い傾向があります。安い給料で働き、ある程度育つと独立するために自分のお客さまを連れて辞め、お店とモメる……そんな話を聞いたことはありませんか?

それって結局、スタッフが給料面や雇用条件面で満足していないから起こるんですよね。だったら、独立しても1000万円稼げるかどうか分からない中で、700万円を安定して稼げるお店を作ればスタッフは辞めないのではないかと思ったんです。

■売り上げの60%がスタッフの報酬に

——どうすればそれほど高い報酬を支払えるのでしょうか。

今この業界では、「面貸し」がはやっています。オーナーが理美容師と業務委託契約を結び、施術する席(場所)や設備を貸す代わりに、売り上げの何割かを払ってもらうという仕組みです。これを参考に、当社も理容師と業務委託契約を結び、自分で稼いでもらうスタイルにすることに決めました。

次に、一般的な利益配分がどうなっているのか調べてみたところ、割合はさまざまですが、1番スタッフの取り分が高かったのが「美容師70%、お店30%」というもの。しかし、この場合は美容師が備品の準備から集客まで自己負担ですべてを行うという条件だったため、美容師の負担が多いと感じました。

僕は、スタッフには本来の仕事である「散髪する」ことに専念してもらいたかったので、場所や設備・備品の準備、集客などの煩わしいことはすべて会社で行おうと思ったんです。

そのポリシーをもとに、スタッフに最大限利益を還元するためには当社の取り分をどれくらいにすれば利益を出せるのか……家賃や光熱費・材料代などを計算してみると、売り上げの40%が残れば大丈夫だということが分かりました。

そこで、一般的な理美容室の面貸しの還元率は売り上げの30~50%ですが、当社では60%をスタッフに還元することにしたのです。スタッフにやりがいを持ち、安定した生活を送ってもらえるよう当社の負担をより多くしています。

さらに、万が一売り上げがなくても安心して生活していけるように、月額30万円を保障しています。

——業務委託を嫌がる理容師もいるのでは。

いないですね。「前の店は社会保険があったので少し不安です」という人はたまにいますが。

国民健康保険や国民年金は自分で支払わないといけませんが、それらを差し引いても今まで以上に手元に残っているようです。実際スタッフからは「生活が変わりました」とよく言われます。

当社のスタッフは理容師という「職人」なので、いい髪型を作りたいとか、お客さまに喜んでもらってまた来てもらいたい、という気持ちが根底にある人たちばかりです。

GMはお店の雰囲気を含め、お客さまにすべての面で満足していただき喜んでもらうことを徹底しているので、スタッフは金銭面だけではなく、仕事のやりがいも感じてくれているようです。

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