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「第20回国際ハンセン病学会」―基調講演―

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三年に一度開催される「国際ハンセン病学会」での基調講演です。
(原文・英語)

世界ハンセン病回復者会議でスピーチ

2019年9月11日
於:フィリピン・マニラ

フランシスコ・デュケ・3世・フィリピン保健大臣、ロック・クリスチャン・ジョンソン国際ハンセン病協会会長、ご参加の皆さま。第20回国際ハンセン病学会で再び皆さまにお会いでき大変嬉しく思います。

この病学会は、医師や医療従事者のみならず、NGOやハンセン病回復者という多様なステークホルダーが参加する大変ユニークな学会です。世界には数多くの学会がある中で、その病気を経験した当事者が積極的に参加できる学会は、おそらく国際ハンセン病学会だけでしょう。国際ハンセン病学会の皆さまのたゆまぬご活動に心より敬意を表します。

今から40年前、私は父、笹川良一に伴って、初めてハンセン病の療養所を訪れ、ハンセン病患者たちに出会いました。それまで、私は健康な生活をしていましたので、彼らのように病気の苦しみと闘っている人がいることを知り、大きな衝撃を受けました。

彼らは家族から捨てられてしまった人たちでした。
彼らは社会から隔離されてしまった人たちでした。
彼らは自由も奪われてしまった人たちでした。

すべてハンセン病が原因でした。

父は、重い障害のあるハンセン病患者の手を握り、言葉をかけ、抱きしめ、そして号泣しました。それは私が生まれてはじめて見た父の涙でもありました。彼らに真摯に向かい合う父の姿を見て、胸に熱い想いがこみ上げてきました。その時、私は人生を捧げて父の活動を引き継いでいかなければならないと決意したのです。

以来、世界各地で私のハンセン病とそれにまつわるスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすための闘いの活動がはじまりました。私の闘いにおける武器は、情熱、継続、そして忍耐です。私の「闘いの現場」には、問題点と解決策があります。私は、アフリカのジャングル、不毛の砂漠、アマゾンの奥地など世界中の僻地を訪ね、数え切れないほど多くのハンセン病患者、回復者に会ってきました。今、私は80歳ですが、この40年間で世界120の国と地域を訪問しました。

「一人でも多くの人にMDT(Multidrug Therapy:多剤併用療法)を届けたい」。私は、多くの現場を訪れ、患者に会う中でこのような想いにいたりました。この想いから、日本財団は、1994年にベトナム・ハノイにてWHOと第1回国際ハンセン病会議を共催しました。その会議の場で、私は日本財団として5000万ドルを拠出して、MDTを全世界で5年間無償配布することを正式に発表しました。その結果、5年間で332万人の患者が治療されました。2000年以降は、ノバルティス製薬が協力してくださり、今もMDTの無償配布が続けられています。この場をお借りして、ノバルティス製薬に心より感謝申し上げます。

私は、これで明るい未来が訪れると自信を持っていました。しかし、当初思い描いていたのとは全く違った状況でした。薬は無料なはずなのに、患者は治療をしていませんでした。さらに、発見されていない患者も数多くいました。

私は、病気さえ治れば全てが解決すると単純に思っていました。しかし、私は間違っていました。ハンセン病は治るようになっても、社会に感染してしまった偏見や差別といった病気を治せる薬はなかったのです。

ハンセン病患者、回復者は家族から引き離されていました。
彼らは学校に通えなくなってしまいました。
彼らは仕事を失ってしまいました。

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