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NHKも認めた〝ラグビー日本・にわかファン人気〟の素晴らしさ - 新田日明 (スポーツライター)

〝ジャパンロス〟になっている人は大勢いるだろう。ラグビーW杯日本大会で日本代表は南アフリカとの準々決勝(20日・味の素スタジアム)に臨み、3―26で大敗。2点ビハインドで前半を終えたが、後半は21失点を喫して防戦一方となり涙を飲んだ。

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南アフリカはW杯優勝2回の実績を誇り、世界ランキング4位。ラグビー界の格付けでも「ティア1」に入る強豪スプリングボクスを相手に日本は金星を挙げた4年前の前回大会の再現を狙ったものの、その壁はやはり厚かった。

それでも日本は今大会の躍進で世界ランキング6位にまで浮上。1次リーグA組で「ティア1」のアイルランドとスコットランドを下して「ティア2」のチームとしては史上1位の通過を果たした。目標だった史上初の決勝トーナメント進出を果たし、ベスト8に入った歴史的快挙は後世にまで語り継がれるはずだ。

ラグビーW杯日本大会の戦いは決勝が行われる来月2日まで続くが、ジェイミージャパンが負けてしまったことで日本国内にはどことなく空虚感が漂っている。休み明けの21日朝、W杯での日本代表の試合が今後見られないことに寂しさを覚えながら通勤ラッシュの電車に揺られたビジネスパーソンもきっとたくさんいるはずだ。

今大会でラグビーの試合を初めて目にし、日本代表の面々が勝利のために自己犠牲もいとわず、献身的に動きながら仲間を生かす姿に大きな感動と勇気を与えられた――。そういう類の声はとにかく方々から毎日のように耳にする。普段はスポーツにすら興味のないような人たちも、こと「ラグビーW杯」の話題になると目の色を変えながら「凄かったね」「素晴らしかった」などと熱く語り合う。日本ラグビーフットボール協会の関係者からも「正直、ここまで盛り上がってもらえるとは思わなかった」と口々に嬉しい悲鳴が飛び出しているほどだ。

今大会の大成功と近年にないラグビー人気の盛り上がりを支えているのは、まず間違いなく〝にわかファン〟たちである。そして、その〝にわか層〟を煙たがることなく手厚く歓迎し、受け入れてくれるムードがラグビー界にはあったからこそ今大会成功と日本での人気爆発に結び付いたのだろう。それはここまで今大会の取材を何試合か実際に重ねている中で率直に感じた思いだ。

そして20日のW杯準々決勝・日本対南アフリカ戦を生中継したNHKの放送の中では、こんなやり取りもあった。日本代表の敗戦後、スタジオブース内の豊原謙二郎アナウンサーが「私たちはあえてプラスの意味をもってお伝えしたいのですが」と注釈をつけた上で「〝にわかファン〟と呼ばれる人たちが、本当にこれだけ生まれた。これはまた本当に大きなことですよね」と発言。

NHKラグビーW杯ナビゲーターを務める元日本代表の五郎丸歩氏も「そうですね。ファンもそうですけども、ボランティアの方だとかですね、地域の方とか、パブリックビューイング開いてくれた方とかですね…。本当にラグビーに縁がなかった方たちが全国でたくさんラグビーに携わっていただいて、この大会を盛り上げてくれた」と同調し、ジャパンOBとして「関わってくれた人たちに感謝したいです」とも続けていた。

このやり取りはネット上でも大きな話題を呼び、放送終了後にツイッターのトレンドでも「にわかファン」のワードが1位にランキングされた。ユーザーたちの間でも、おおむね「その通り」と好意的にとらえられていたようだ。個人的にも、豊原アナの言葉には共感できる。  

実を言えば今大会期間中は日本のメディアにも〝にわか〟の人たちが少なくない。W杯という世界的規模の大会で注目が集まることから取材現場には普段、ラグビーの現場に足を運んでいない記者やライターも当然多く集まる。マスコミ事情を知らない人たちからは「何で?」と思う声も出るかもしれないが、これは仕方がないことだ。ラグビーがプロ野球やサッカーなどのように国民的な人気スポーツとして完全に定着しているとは決して言い切れない以上、各メディアも人員に余裕のない社は担当記者をなかなか置けないからである。

アマチュア、プロを問わず、いくつかのスポーツ界には残念ながら排他的なところもある。たとえば初めて現場に来た記者やライターに対して取材対象者、さらにはそこで〝主〟になっているようなメディア関係者までもが「お前、誰?」のようなムードを作り、寄せ付けようとしない――というようなケースもよくある話だ。

このようなムードになっているスポーツ界は得てして、ファンも閉鎖的になっていて〝にわか層〟の人たちを毛嫌いする傾向が強い。なかなか人気が出なかったり、一般層から支持を得られずオタクのファンで固まったりと大抵、排他的になっている。これでは、いつまで経っても「村社会」と同じで新参者を受け付けないから人気も頭打ちになってしまう。

ラグビーをよく知らない記者に対してもイロハを教えてくれる

しかしながら今大会で日本のラグビー界は諸手を挙げながらファン、そしてメディアの〝にわか層〟を大歓迎し、率先して新規開拓に務めた。選手やチームスタッフ、大会関係者は非常に協力的で、それこそラグビーをよく知らない記者に対してもイロハを教えてくれるぐらいの謙虚な姿勢で接している取材対象者も多くいると聞く。

今大会で米国代表を率いたギャリー・ゴールド・ヘッドコーチ(HC)に以前、こちらの陳腐な質問にも面倒臭そうにせず、とても紳士的で丁寧な振る舞いを見せながら取材に応対してもらい、感動したことがあった。その思いをすぐ本人にぶつけてみると、こんな答えが返ってきたのを覚えている。

「別に驚くことではない。私だけじゃなく多くのラガーマンは皆、同じ振る舞いを見せると思う。私が常に憤っていたとしたらラグビーに携わる資格はない。ラグビーは相手との戦いだが、憎しみ合う戦争じゃない。お互いがリスペクトし合うからこそ成り立つスポーツだ。時にエキサイトしてしまうことも確かにあるが、試合が終わればノーサイド。シェイクハンドだ。チームメートもすべて同じ思いを共有している。品位、情熱、結束、規律、尊敬――。

これらをラグビーに携わる誰もが持ち合わせていると信じている。その精神を享受してほしいからこそ、私はラグビーの素晴らしさをたくさんの人に伝えたい。きっと日本のラガーマン、ラグビー関係者たちも、これは共通の考えだろうね」

ゴールド氏はかつて神戸製鋼でHCを務めた経験もあるだけに、日本ラグビーを語る言葉には説得力がある。W杯で躍進を遂げた日本代表、そして爆発した国内でのラグビー人気。その裏には〝にわかファン〟にも門戸を広げ、多くの人がラグビーを好きになる入口を整えていた日本のラガーマン、そして多くの関係者たちの謙虚な姿勢があったことを忘れてはいけない。

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