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子宮頸がん 情報格差は健康格差

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■ 具体的活動内容

Q具体的にどのような活動を行っているのですか?

「私が取り組んでいることは草の根活動です。この1年間で一般を対象とした講演活動を約10回開催しました。子宮頸がんワクチンは小6から高1の3月まで公費で受けられるのですが、産婦人科医でさえ知らない方が多くいます。目の前のお産やオペなど、日々のことが忙しすぎて、そこまで手が回らないのが実情です。また、日本の20代の婦人科検診率は約20%しかありません。この検診受診率を上げることも地道に行なっています。20代の場合は異形成(下写真)が多いのですが、見つかった本人がショックを受けて周りにその話をしたことで、同じ職場から検診を受けに来ます。そうすると、数人の異形成が見つかることがあります。ですので検診にきた若い子には、『お友達にも勧めてね』と丁寧に伝えています。人は、3回同じ話を聞くと腑に落ちるんです。私はその1回になりたいと思っています。」

▲写真 子宮頸癌はこの図のように異形成という前癌状態を経て上皮内癌となる。上皮内癌は出来上がったばかりの癌だが、数年放っておくと浸潤が始まり広がっていく。 出典)徳島大学大学院私学薬学研究部


Q活動を始めたきっかけは?

「実際に20代や30代の若い女性の命を奪う病気だという状況を目の当たりにしたからです。28歳で妊娠して、早期だったが子宮を摘出した女性もいます。子宮頸がんはⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期と進行の段階がありますがⅡ期で発見したとしても放射線治療しかできません。Ⅰ期の半分程度しか手術ができません。手術できる期間がとても短いがんなのです。防げる病気なのに、知らない人が多すぎる。とにかく知ってもらわなければ、と思ったのがきっかけでした。」

Q HPVワクチンの安全性と有用性について説明した時の人々の反応は?

「HPVワクチンについて説明する講演会で、『HPVワクチンを打とうと思いますか?』と聞きます。最初は『よくわからない』と答える人が多いのですが、講演の後には『自分が認識していたのと全然違った。考えてみます。』と答える人が増えます。講演会には、女性市議3名も来てくれましたが、副反応についてHPVワクチンとの関連性が認められていないことを知りませんでした。日本だけが世界の中でいかに特殊な状況か。このままでは日本だけが子宮頸がんで苦しむ国になってしまう。と危機感を感じてくれました。科学的な事実を知ることがとても大切だと考えています。」

▲写真 「藤沢女性のクリニックもんま 」院長 門間美佳医師 ©️Japan In-depth

門間医師のクリニックに自発的にHPVワクチンを打ちに来る人がじわじわと増えているという。どういうことなのだろうか?

■ HPVワクチン接種の現場

Q実際にHPVワクチンを打ちに来る人はどのような人ですか?

「医療関係者の子供、海外帰国組、自分自身が前がん病変で通院中の方の子供、研究職の子供、それに中国人が多いです。中国では9価ワクチン(注1)があまり手に入らないので、飛行機代をかけてまで打ちに来ます。私が伝えたいことは、知識の格差がそのまま健康格差に結びついているという危機感です。正しい情報を得ている人は、打つリスクより打たないリスクを知っているのです。」

Q今後子宮頸がんを減らすためには何が必要でしょうか?

「まずは検診とHPVワクチンの両輪が必要です。検診の正診率は7~8割です。最近増えている子宮頸部の奥まった部分の”腺がん”は検診では見つかりづらく、がんを見逃すと2、3年後にがんになることもありますから、HPVワクチンも必要です。もう一つ必要なことはメディアの力です。世界各国と比較した子宮頸がん検診率、HPVワクチン摂取率の数字は知らない方がほとんどです。日本はどのような状況なのかきちんと伝えるべきです。知識の格差が健康格差に結びつく時代ではあってはいけないと思います。

メディア、特に大手マスコミである新聞、テレビは、副反応については報道しても、HPVワクチンの有用性や名古屋スタディ(注2)についてはほとんど報道しない。この不作為の結果、国民の多くがHPVワクチンについて知る機会を失い、HPVワクチンを接種するかどうか判断するに至らないという現実がある。 

それでも、国がHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている現状の下では、「HPVワクチンを接種しない」という選択をする人はいよう。そういう人たちに対して門間医師は、次の3点を実践するようアドバイスしているという。

1 10代では性交渉をしない、初交年齢を上げる。

2 20代では子宮頸がん検診を毎年受ける。

3 30代以上は細胞診に追加して、HPV検査を受ける。

■ メディアの責任

門間医師は、一人でも多くの人に情報を届けようとFacebookやツイッターでも情報を提供している。多くの産婦人科医や助産師、看護師に、門間医師が作ったスライドを提供し、勉強会に役立ててもらっている。

最近ではネットメディアを中心に、子宮頸がんHPVワクチンの有用性にについての記事が増えているのを感じていると門間医師は言う。しかし、大手マスコミの発信は驚くほど少ない。

多くの女性の健康といのちに関わる重要な問題であり、特に影響力の強い地上派テレビがこの問題について取り上げることを強く望みたい。

(注1)9価ワクチン

現在国内で承認されているのは、2価ワクチンまたは4価ワクチンの2種。適切な接種により子宮頸がんの 60〜70%の原因となる HPV16 型・18 型の感染は予防できるが、その2つ以外の型の HPV の感染による子宮頸がんの発症は予防できない。2 価、4 価の HPV ワクチンだけでは予防できなかった型を含む、9 つの型の HPV(6・11・16・18・31・33・45・52・58 型)をターゲ ットとして開発されたのが9 価ワクチンである。WHO(世界保健機関)によりその安全性と有効 性が認められ、米国など一部の国ですでに認可されている。この9価ワクチンは子宮頸がんの原因となるほとんどの HPV 型を網羅するため、普及すれば子宮頸がんの 90%あるいはそれ以上が予防可能になると期待されている。しかし国内では 9 価ワクチンは、まだ承認されていない 。(参考:公益社団法人日本産科婦人科学会)

(注2)名古屋スタディ

名古屋市立大学鈴木貞夫教授による論文「No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study」70,000例以上の女子を対象として行われた大規模な調査で、HPVワクチンと日本の若年女性で報告されているワクチン接種後症状との間に関連性は無いというエビデンスが導き出された。

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