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拘束という手段 根本を変える必要 理想は大切でも強制はブラック

見逃してしまったのですが、10月16日のクローズアップ現代で、医療者からの反響が大きかった前回の番組のアンサー番組が放送されました。(徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”

原則として身体拘束には以下の3要件が指定されており、緊急やむをえない場合と記されています。

① 切迫性 ② 非代替生 ③ 一時的

そう一時的だったらそこまで問題にはならないはずです。でも正直常態化している現状があります。なぜ病院で拘束が常態化するのか。私は慢性期もおこなっている医療者側として報告します。

そもそもなぜ病院で拘束を行われているのか。それは患者さんが転倒含めて自分の身体を自分の理性で守れないという原則が存在します。言ってわかってもらえる人には拘束はしません。

病気が改善すれば理性が改善するもの、いわゆる急性期の一次的な拘束は正直許して欲しいと思いますし、この番組に出演された内田病院の田中医師も急性期の拘束は否定していません。その上で慢性的に常態的に拘束が行われているのは急性期に準じた インシデント・アクシデント予防の建前 が強いです。

元の病気に対して正しい医療を行えば助かる命なのに、入院中に転倒等が起きると死に落とし込んでしまう可能性が出てきます。医療者は元の病気で命を落とすことはある程度許容できますが、事故での患者の悪化は基本耐えれません。だから過剰に予防します。

また拘束することで全身状態が悪化しても、病気が治ることを優先する傾向が医療者にはあります。これは急性期の医師たちに多い反応です。はっきり言うと長期の拘束が、その人の人生にとって決していいわけでないことがわかりながら、医療者にとって安全な「医療」を優先してしまうのです。

 この流れは司法にも問題があります。100%監視しなければ防げない事故も医療者の責任にして、刑事罰、民事での賠償が要求されてしまう可能性があるのですから。それこそ暴れないために拘束してしまって転院後すぐ亡くなってしまった訴訟が報道されています。詳細はわかりませんが、家族に対する説明不足、転院後悪化の恐れなどの反応がこの現実を導いています。

それゆえ特に中途半端に医療安全を勉強した上層部たちが、現場に安全を強要する事で拘束が常態化されてしまうのです。責任逃れといってもいいかもしれません。

ただ医療者の安全も守らなければなりません。このように理性を失った患者さんはしばしば医療者、介護者に暴力をふるいます。そこにはセクハラ、パワハラ等も存在しています。ただ今の日本ではこの患者さんの暴力行為を医療者が我慢しろと上層部が強制しています。だから現場の医療者も自分の身を守るために拘束の罪悪感が減ってしまいます。

そして一番の問題点は、人、時間をかければ拘束が必要ではなくなる可能性のためのお金が足りません。そこには森田先生がいうように日本の病床が多い、そう本来家でみるべき患者、施設でみるべき患者を入院させている日本の病床の問題があるのかもしれません。

ただそこには、どこまで医療という治療をするのか、そしてどこまで病院に入院させるのかの問題が出てきます。ただ今の共働き、核家族化した日本の社会状況において、すぐに家で面倒をみろ、施設で看取れといっても難しい部分が存在することは明らかです。本当に社会と複雑に絡み合っているのです。

NHKに感謝します。その上でもっともっと今の現状を知らしめることが必要です。そして大切なことは継続できる医療、介護の体制を作ること、ボランティアでは終わらせないことです。血液クレンジングのような闇の自由診療領域に入って利益を出さなくてもいいように、しっかりといい医療にはお金を与えてください。本当今は救急含めていい医療をやろうとすれば補助金がなければ赤字になる時代です。いつまでもその状態を放置してはいけません。

理想は大切です。でも強制はブラックです。

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