ラグビーW杯の喫煙所は最高だ
今年もこの季節がやってきた。「飯島勲のスモーカーズ・コーナー」である。全部で5回にわたって皆様に様々なお話をしていきたい。
写真=iStock.com/boonchai wedmakawand
今回のワールドカップのラグビーを直接スタジアムへ観に行った人ならご存知だと思うが、各スタジアムには喫煙所が設置されている。
ところが、来年のオリンピックの各競技場には喫煙所が設置されないというから驚きだ。東京都は「吸わなければいいだけ」という立場なのだろうが、そうはいかない。確実に、たばこを吸う人はたくさんいるし、近隣住民がポイ捨てたばこに悩まされるだけだろう。
禁煙ファシストは、理想主義者で、現実を直視できない人たちだ。多数派を握って法律で禁止さえすれば、うまくいくと信じているのだろう。
今からでも遅くない。一定数の喫煙者は今後も存在し続けるという前提で、喫煙所を東京都内に設置してはどうだろうか。
列島が歓喜した日本代表の大活躍
日本列島全体がラグビーに熱狂している。まさかそんな事態になるとは思ってもいなかった。これまでの人生でスポーツから逃げ続けてきた私、歩くことすら嫌いな私が、ラグビー観戦でこんなに感動するとは思ってもみなかった。
思い返せば、9月4日からウラジオストクで実施された「東方経済フォーラム全体会合」で、安倍晋三総理はロシアのプーチン大統領を前に、こうスピーチした。
「お集まりの皆様。日本では新しい天皇陛下が御即位になり、時代の呼び名が改まりました。新しい時代の幕開けを告げる大きなイベントが、今月20日に始まるラグビーのワールドカップです。なんとその第一戦こそは、日本対ロシアです。私は、もちろん日本の勝利を信じています。すみません、ウラジーミル。でも、ロシア選手の皆さんにも頑張ってもらいたいと思います。日本以外の相手であれば、全て勝っていただいて結構であります(笑)」
私もこの場にいたのだが、この話の瞬間、会場はドッと沸いたものだった。
ワールドカップ初戦の9月20日。私はご招待にあずかり、スタンドで観戦することができた。一番高い席で15万円もするようなゲームを間近で見ることができて、大変興奮した。
猛牛のごとく突進していく選手たち。人間と人間とがぶつかり合い、激しい攻防戦が繰り広げられる。
サッカーをかつて観たことがあったが、全然点が入らないし審判の見ていないところでズルをして転んだり、引っ張ったりして、あまり観ていて気持ちのいいものではなかった。
野球も好きな人が観れば面白いのだろうが、球技についてなんにも知らない私にとっては、ルールがわかりにくくて苦手だ。ホームランはわかるのだが、それが1試合に数本しか出ない。
その点、私にとってのラグビーは、相撲を観ているような楽しみがあった。ルールは、野球やサッカーより複雑じゃないかという人もいたが、細かいルールはあっても、とにかくボールを白い線まで運べばいいという点が単純明快に感じた。
どの球技も好きになれば、きっとそれぞれに面白いのだろうが、球技がまったくわからない私のような人は同じ感想を持つのではないか。
それにしてもスタジアムの熱気はすごかった。満員の観客の8割は、日本の赤と白のユニフォームを着て観戦をしていたし、試合中に起きたウエーブも地鳴りのように響いた。
ラグビーとは戦争だ!/世界が驚いた日本代表の大活躍。飯島氏は「前回のイングランド・ラグビーワールドカップの決勝が初めてのラグビー観戦だった。決勝でルールを教えてもらっていたことを『、飯島さんは贅沢ですね』などと皮肉を言われたものだった」という。 - 写真=時事通信フォト
ラグビーのことが気になって少し調べてみたが、いろいろと興味深いことがわかった。1823年のイギリス、まだサッカーとラグビーという競技は存在せず、フットボール(蹴球)として各学校が独自のルールを設定して楽しんでいた。その中で、ラグビー市にあるパブリックスクールでは手で持って走ることが許されたのがラグビーの起源である。ラグビー校で、はじめて手を使ってボールを運んだのがウィリアム・ウェブ・エリスという名の少年とされ、ワールドカップの優勝チームに与えられる純銀の賜杯は「ウェブ・エリス・カップ」と名付けられている。
と、ここまではNHK「チコちゃんに叱られる!」などの番組でも紹介されたものだが、では、そもそもラグビーの起源であるフットボールの起源はどうなっているのであろうか。調べていくと、大きく2つの説があるようだ。
一つは、中国の神話上の黄帝が軍事訓練の一つとしてつくり出したというものだ。10世紀の北宋時代に2つのゴールを使う競技が行われていたというから驚きだ。
もう一つは、8~11世紀、戦争に勝ったイングランド人がデーン人の将軍の首を蹴り合っていたとされている。それが「モブフットボール」という祭りとなって広まった。これは、川を境に南北で2チームに分かれ、離れた2つの石臼をゴールとする。何百人もの男たちがもみ合いながら、サッカーボールより一回り大きい革製ボールを自陣ゴールに運ぶものだ。ルールはほとんどなく、噛み付くのも殴るのもOKで、いがみ合う同士が敵味方になって戦うものだから、人々が暴徒化して街を壊し、中世には禁止令が出たこともあったという。