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韓国文政権、曺国辞任で窮地

法務部長官を辞任した曺国氏(2019年10月14日) 出典:韓国法務部ホームページ

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・曺国を辞任に追い詰めた「10・3光化門集会」と支持率低下。

・4月総選挙に危機感。曺国辞任で世論を引き戻したい文大統領。

・生き残りかけ金正恩と手を握る可能性も。一方、それが命取りにも。

家族ぐるみの投資など数々の疑惑が発覚し検察から追及されていた曺国(チョ・グク)法務部長官(法相)は、10月14日午後辞表を提出し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は午後5時38分、辞表を受理した。

文在寅大統領が国民の反対を押し切って、疑惑まみれの曺国氏を法務部長官に任命した時(9月9日)、「疑惑があるからと言って任命を行わなければ悪い前例を残す」などと常識はずれのコメントを出していたが、長官指名後66日、就任後わずか35日で国民の前に屈服した。

曺氏の辞任発表から1時間後に招集した首席・補佐官会議で文大統領は「今回韓国社会は大きな沈痛を経験した」とし、「国民の間に多くの葛藤を引き起こしたことについて非常に申し訳なく思う」と語り、曺国長官任命強行による国論分裂の事態について謝罪した。

しかし彼は、保守勢力を追い込む時とは打って変った曺国擁護のための検察へのさまざまな捜査妨害については一言も謝罪しなかった。文大統領には「敵と味方を分ける2分法」はあっても「正義と不正義」を判断する「常識」はなかったということだ。

経済危機、外交危機などで、ただでさえ国民の支持を失いつつある文在寅政権だが、曺国法務長官の辞任でその統治力は更に弱まった。

1.曺国を辞任に追い詰めた「10・3光化門集会」

曺国をかばい続ける文在寅氏の「異常な」行動は、国民の怒りを募らせた。特に9月28日のいわゆる「曺国擁護瑞草(ソチョ)洞キャンドル集会」を200万人集会(実際は5~10万人)と誇張し、曺国任命の正当化に利用した文政権の扇動政治は、保守系だけでなく中道系の人々の怒りを誘発させた。

その怒りは10月3日の光化門デモで示された。光化門からソウル駅までの2.2Kmとその脇道は人々で埋め尽くされ、歴史上最大の「曺国拘束・文在寅退陣300万人集会」(1平方m当たり2~3人で計算すると50~80万人)となり、文政権に衝撃を与えた。

この事態に対して文大統領は10月7日の首席・補佐官会議で、「最近表出した国民の多様な声を重く受け止めた」としつつも「政治的事案に対して国民の意見が分かれるのはあり得ることで、国論分裂とは思わない」との見解を発表したが、現状認識もまともにできない文大統領の無能さに多くの国民は呆れ「退陣させるしかない」との覚悟を新たにした。

この10月3日の「光化門集会」に対して、当初、「保守系キリスト教が動員した暴力集会」と高をくくっていた与党「共に民主党」も広場を埋めた数十万人の人々から「曺国拘束、文在寅は退陣」という声が高まると、「これでは堤防が崩れる」という危機感と恐怖に包まれた。曺長官がこの時、「検察改革の障害になりたくない」として辞意を青瓦台に伝えたという話もある。また彼は国政監査(10月10日)が始まると、知人らに「私が次期法務長官として出るべきか」と問うたという話もある(中央日報日本語版2019・10・15.)。国会の聴聞会とは違い、国政監査でウソを陳述すれば偽証罪に問われるからだ。

「曺国拘束・文在寅退陣」の光化門デモは、10月9日の「ハングルの日」にも行われ、再び数十万人が集まった。米国ブルームバーグは15日(現地時間)、「韓国の文在寅大統領、朴槿恵前大統領墜落と同じ危機に瀕する」とのタイトル記事を掲載し、「3年前、前大統領追い出しのデモに加わった韓国の文在寅大統領が、今似たような危機を迎えている」と報道した。

2.最後通牒を突きつけた世論調査結果

文大統領に「曺国長官放棄」を最終的に決心させたのは、デモ直後の世論調査結果であった。文大統領の支持率が他の世論調査機関よりも高めに出るリアルメーターが、10月7-8日、10-11日に実施した世論調査で、文在寅支持が41.4%(リアルメーターでの最低値)となった。そればかりか「共に民主党」(35.3%)と「自由韓国党」(34.4%)の支持率が僅差の誤差範囲内(0.9%ポイント)になり、調査日によっては逆転する日も出てきた。この数字に対しては曺国の事態で与党を離脱した中道層が保守野党支持に急速に流れているとの分析がなされた。

韓国政治に精通する消息筋によると、青瓦台が内部で実施した世論調査でも曺国反対70%、賛成30%という数字が出てきたという。そしてより衝撃的だったのは、全地域だけでなく、文政権支持核心地域の全羅道で支持率が50%以下になる驚愕の数字が出たことだ。

与党内では「このままでは来年の総選挙を迎えられない」という危機感が強まった。こうしたことから李洛淵(イ・ナギョン)首相、李ヘチャン与党党首が文大統領に直訴する破目となったらしい。辞職直前に行った曺国による検察改革の発表は、曺国をなだめるための「ショー」だったと言われている。「共に民主党」のある議員は「曺国長官の辞任は結局、世論調査の結果が最も大きな影響を及ぼしたのではないか」と語った(中央日報日本語版2019.10.15 )。

危機感を深める文政権はいま、世論動向に必要以上に神経質となっている。そうしたことから世論に大きな影響を与えている保守系主要ユーチューブ番組にも「放送通信委員会」を通じて広告掲載をできなくする圧力まで加えているという(放送通信委員会委員長は従北左派の韓相赫氏)。

3.文大統領を待ち受ける茨の道

文在寅大統領はいま、曺国を退陣させることで世論を引き戻し、保守勢力の壊滅と従北左派の長期執権を実現する「検察・警察捜査権調整のための刑事訴訟法改正案」と「高位公職者不正捜査処法」を早期に成立させようと必死だ。

そのために、「選挙制度改革案(準連動型比例制)」を先に進めて弱小野党を懐柔した後に「検察・警察捜査権調整のための刑事訴訟法改正案(検察から警察への移譲)」と「高位公職者不正捜査処法」を進めようとしていた当初の順序まで逆転させた。

この動きについては最大野党の自由韓国党だけでなく、少数野党4党も約束が違うとして反発している。「正しい未来党」のキム・ジョンファ・スポークスマンは、「合意の精神に反している」とし、民主平和党のパク・ジュヒョン・スポークスマンは「信頼に反することだ」とした。正義党も「今になって順番を変えてはいけない」と述べた。

また文大統領は、曺国を退陣させることで来年4月の総選挙を有利に進めようとしている。この選挙で敗北すれば政権がレイムダック化するだけでなく次期大統領を野党に奪われかねないからだ。

しかし文政権の筋書き通りにはいかないだろう。曺国疑惑の捜査はこれからが本番だ。なにが出てくるか分からない。そして何よりも今回の「曺国拘束・文在寅反対闘争」を進めた主体が保守系キリスト教団体や保守市民団体とだということだ。反文政権の裾野は広く安定度も以前より遥かに高い。これからも文政権打倒の戦いをやめることはない。

曺国辞職で文政権が掲げる「左派執権20年構想」は陰りを見せた。自由韓国党が政権を奪還すれば、文大統領の立場は、朴槿恵前大統領よりもはるかに厳しくなることは間違いない。文大統領はそうした事態をなんとしても回避するために、金正恩と露骨に手を握る可能性もある。

しかしそうなれば「与敵罪」が適用されることになりかねない。「敵国と力を合わせて大韓民国に背を向けた者は死刑に処する」という、死刑しか罰則がない重罪だ。すでに市民からこの罪で告発されている文大統領だ。金正恩と手を握れば、刑務所暮らしどころか、命を失う可能性さえある。

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