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「共同親権運動をされている方は、一緒に“家裁予算10倍運動”をすれば効果的だ」憲法学者・木村草太教授が問題提起

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■しばはし氏「共同親権になったから共同養育が浸透するかといえば、そうではない」


パックン:僕がなぜここまで熱くなるかと言うと、男親だからだ。そして仕事が忙しいし、子どもの面倒は妻が見てきた。僕が離婚することはないが、万が一離婚した場合、裁判所が僕の親権を認めるとは思えない。仲が悪くなったら会えなくなる可能性があると思うし、共同親権の可能性もない以上、妻が再婚して「この人が新しいパパですよ」って言えば…。

宮澤エマ:みんなが法律のことを考えて生きているわけではないから、お互いに話し合い、会える関係性であれば、そこは意識しないのではないか。これまではアメリカ的に共同親権がいいと思っていたが、どう思われますか?と尋ねられたとき、「ケース・バイ・ケース」としか答えられなかった。やはり離婚にもたくさんの形があるし、単独親権の方がいいケースと共同親権の方がいいケースがあると思う。だからこそ法律はどちらにも対応できるようになっていた方がいいと思う。


堀:僕はパックンさんのお子さんにお会いしたことがあるので、すごく愛情を注いでいるということを証言できる。でも奥さんが「それは世間的な顔であって、みなさん知らないでしょ?」と主張すれば、もうパックンさん側は反論できず、親権は母親、面会もこれくらいですね、と決められ、声を上げられないということを心配しているんだと思う。

木村:お互いがいい関係を築けていれば、離婚していても相談をすると思う。そういう父母にとって、法律上、共同親権にしておくメリットはさほど大きくない。他方、円満ではないところで共同親権にしてしまうと、デッドロックの問題が出てきて、子どものためにならないということだ。


しばはし:今は単独親権なので、世の中的には離婚後は一人で育てるのが当たり前のことだと思われがちだ。親世代の中には、離婚したらもう会わせなくてもいいと言う人もいる。そこに共同親権が導入されることで、離婚しても親は変わらず2人だという意識が世の中に浸透するのではないかという点は有意義だ。また、共同親権にした方が葛藤は少なくなると思われるのは、親権を手放したくないので離婚に踏み切れない人もいる。また、できるだけ早く離婚したいので、離婚してもちゃんと会わせると主張する同居親も多いが、それが信じられないという別居親がいる。それが裁判になれば、相手方を責めるようになり、「あんな人に子どもを会わせたくない」という気持ちになってしまう。もともと共同親権ということであれば、離婚後も親権があるという安心感から、離婚に進むきっかけになるかもしれない。

ただ、離婚後も両親が子育てに関わることを「共同養育」というが、共同親権になったから共同養育が浸透するかといえば、そこには警鐘を鳴らしたい。夫婦としては「さようなら」でも、親子としては何らかの形で関わっていかないといけないという覚悟がないまま、離婚しているケースが散見されるし、あくまでも子どもを真ん中にして、お父さん側、お母さん側それぞれが歩み寄る努力がなければならない。離婚後も旅行ができるような家庭もあれば、親同士は没交渉で子どもだけが行き来するような家庭もある。小さいうちは親のやり取りが必要だが、基本的には自由に行き来し、発言できる関係性や環境を整えられるよう、お互いが協力することが離婚後の子育てには大事だ。

堀:前回も時間を延長して議論した末に、柴山前文部科学大臣から最後の最後に「共同養育」という言葉が出てきた。やはり親権云々の前に、子育ての良好な環境づくりということをゴールに議論を進めないといけないのではないか。

伊藤:面会交流の機会や交流については、民法で親権の帰属や監護権、養育費について書いたところに書き込まないと、家裁の離婚の調停条項の中にも書かれないことになる。また、調停では"最低限このラインなら合意できる"というところから積み上げていくので、現場の感覚としては月1回、数時間程度という形をまず作り出していた。ただ、それではあまりにも少ないのではないか、もう少し子育てに関与したいという意見があるので、そこは柔軟性を持って動き始めていると思う。ただ、かなり激しい対立もあるのが実情だ。

■伊藤氏「調査官1人ではとても無理だし、時間もかかるが、志望者は減りつつある」


共同親権を導入することを懸念する立場からは、「DVパートナーと関係を継続しなければならない不安」といった意見がある。東北大学の水野紀子教授氏は「日本では家族に介入する社会福祉は貧弱。そういう状況で共同親権を導入すると、被害の永続化を意味する危険性が高い」と指摘している。

他方、欧米諸国では、婚姻中でも別居命令など不当な親権行使には公権力が積極的に介入しているという。ドイツでは親権制限判決数が2万9405件(2015年)、フランスでは9万2639件(2016年)となっている。日本では、支援と介入が乏しく、自ら逃げて別居を実現し、離婚を具体化している面がある。つまり自力救済を前提とした家族法になっているため、親権喪失審判数は25件、親権停止審判数は83件(2016年)となっている。


堀:前回、家庭裁判所の体制が不十分ではないのではないかと問題提起をしたが、そこは共同親権賛成・反対の両陣営ともに合意していたと思う。本当だったらどういう本音があるのかを子どもファーストでちゃんと聞き取って決めないといけないはずが、実際には調査官の数も不足していると思う。やはり共同親権、単独親権に関わらず、家裁や調停員のあり方の改善は進めていかなればならない。

しばはし:そう思う。離婚する人たちは調停に行けば自分の気持ちの部分の話し合いもできると期待している。しかし実際は自分たちのことをよくわかっていないのではないかという方が仲介に入り、面会の頻度や、お金のことだけを取り決めていく。そうすると感情の部分が置いてきぼりになってしまって納得がいかないどころか、「会わせたくない」「会わせろ」というような話にもなってしまう。

伊藤:例えばお父さんとお母さんに揃って運動会に来てほしいと思う年齢もあるが、やはり10歳くらいになると、別れているお父さんが来るのは嫌だと感じる子どももいる。そういうことについてお互いの気持ちを伝えることのできるよう面会交流であって欲しい。また、法律上は15歳以上なら意思の表明ができるとされているので、裁判官が調停の場や審判の場で直接確認することはあると思う。ただ子どもにとっても相当な負担なので、実際は調査官が個別に調査面接で確認している。子どもの権利条約の考え方や面会交流の規定も入ってきているので、意思確認をもっと丁寧に行えということで、10歳前後から本人の意思を確認する形になってきていると思う。ただ、一緒に暮らしているお母さんが同席しているところで"どうなの?"と聞くような場合、すごく難しい。調査官1人ではとても無理だし、時間もかかる。調査官は全国に1500人くらいいると思うが、実働部隊は1300人くらいだと思う。少年事件など、非行の総数は激減しているが、それでも450人くらいが担当していて、家事の方に割けているのは800人くらいだ。それで全国をカバーしている。それも全国異動がある仕事だし、調査官の志望者は減りつつある。

そして、調停でも審判でも、身体的DVに比べて精神的DVの認定はすごく難しい。当事者同士はあった・なかったで感情的にエスカレートしていくし、話し合うという関係も壊れてしまう。そこで私は、親の紛争・対立の下にいて引き裂かれている子どもの調査を尽くし、どんな意見を持っているか。どういうことを願っているかを丁寧に考え、それを親にフィードバックする。共同親権を導入するのであれば、少なくともそういうことについて十分に手当てできるような形にすべきだ。それができないのであれば、残念ではあるが期限を設け親権を制限する制度が必要だ。


木村:DV被害の立証は難しい。モラハラの場合は、さらに輪をかけて難しい。現在の制度は、厳密な立証ができなくても、自分の方がより適切な監護・養育ができると説明できれば、単独親権となり、加害者との距離を取ることができる。単独親権は、DV被害からの防波堤の役割を果たしている。

他方、現在の家庭裁判所の人員や予算は、単独親権制度を前提に組み立てられている。今の裁判所の調査能力で、どちらか一方が拒否している場合に共同親権を命じる制度を導入してしまうと、裁判所がDVを見抜けず、被害が永続してしまうケースが出てくる懸念は理解できる。また、DVがなくても、話し合いができないくらいに仲の悪い父母に共同親権を命じると、政府が強調しているように、スムーズな合意ができず、子の利益を害する事例がたくさん出てくるだろう。不適切な親の親権を裁判所が事後的に制限しようとするなら、裁判所が、ドイツやフランス並に、年間数万件の事案を捌くことになることを覚悟しなければならない。現在の司法や国には、それだけの予算を立てる覚悟や財政力はなさそうに見える。

共同親権の選択肢があれば、親権を巡る争いがなくなり、夫婦の葛藤を下げるという主張も根拠がない。共同親権であれ、どちらの親が日常同居し監護するかは決めなくてはならない。親権争いに変わって、子どもの生活の本拠の争いが、これまで通り継続するだけだろう。さらに、裁判所から強制的に共同親権を命じられるかもしれないということになれば、共同親権にしたくない父母は、「自分の同居・監護で問題はない」と主張するだけではなく、「相手は共同親権を持つのにふさわしくない酷い親だ」という主張までしなくてはならなくなる。単独親権制度の下での離婚よりも、葛藤が高まる危険があるだろう。

こういう問題を考えると、検討に値するのは、お父さんとお母さんが合意した場合に限り共同親権を選択できる「選択的共同親権」の制度に限られるだろう。また、単に合意があればよいというだけだと、DV加害者が「共同親権に合意しろ」と脅迫した事例や、離婚手続を早くすすめたくていい加減な気持ちで子の利益にならない共同親権の合意をしてしまう場合も出てくる。そうすると、合意は「真摯かつ積極的」なものでなければならない。


パックンさんが、アメリカの例を紹介してくれた。アメリカでは、無理やり共同養育をしろと命じても、2人で協力する関係がなければ、養育も重要事項の決定もうまくいかないということがわかってきたようだ。だから、その関係づくりに大きなコストを割いている。だから共同親権運動をされている方は、"家裁予算10倍運動"も併せてやるべきだろう。
最後に、これから離婚や共同親権の報道が増えると思う。メディアの方には、注意して欲しいことがある。NHKの「生活ほっとモーニング」が、離婚の一方当事者だけを取材・報道し、もう一方の当事者から名誉毀損で訴えられた事件がある。この事件の判決は、次のように述べ、賠償を命じた。

離婚問題について当事者の声を報じるときは、お父さん、お母さん、双方からの取材を尽くして、できるだけ真実の把握に努めなければならないとされている。報道に関わる方も見る側も、そこに注意しないといけない。

また、両親が離婚や親権で争っているという事実は、多くの子どもにとって、人に知られたくない事実だろう。両親が同意していても、当事者の顔出しや実名での離婚報道は、子どものプライバシーの保護のために、できる限り控えるべきだ。

報道関係者のみなさんには、真実を探求することと、子どものプライバシーに配慮してほしい。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


▶映像:議論の模様

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