記事

「共同親権運動をされている方は、一緒に“家裁予算10倍運動”をすれば効果的だ」憲法学者・木村草太教授が問題提起

1/2

法務省が先月末、離婚後も両親共に親権を持てる共同親権を導入すべきかを検討する研究会を年内に設置すると発表した。

 これに先立つ9月25日、AbemaTV『AbemaPrime』では、「離婚後に自分の子どもに会えなくなる」「子育てにも関与したい」と共同親権の導入を求める当事者や弁護士、そしてDV等の懸念から単独親権の維持を主張する関係者を招き討論を実施した。放送後、ネット上には「円満離婚なら共同親権でも良いけど、DV・虐待のケースで共同親権は子どもにとって地獄」「共同親権は子どもが2人の親と十分な関わりを持って育てられる権利だから必要」と、子どもの視点でこの問題をどう考えるのか、という意見も散見された。


現行の制度を改めて押さえておくと、親権には、同居し、世話をしたり、養育したりする「身上監護権」(民法820条)と、子の教育方法、進路決定、職業選択、契約、財産管理などの重要事項を決定する「財産等管理権」(820~824条)が含まれる。現行民法では、婚姻中は共同親権だが、離婚後は単独親権となっている(818条3項本文)。共同親権で期待されている点について、上野晃弁護士は「親権争いで過熱した夫婦間の紛争を鎮静化させる」「現状では子どもと会わせるかは親権者の意向に大きく左右されるため、面会交流できない可能性があり、他の国に比べて面会交流が圧倒的に少ない。他の国と同じように十分に交流できる可能性もある」との見解を示している。


そこで10月9日放送の『AbemaPrime』では、首都大学東京の木村草太教授(憲法学)、元家庭裁判所調査官の伊藤由紀夫氏、そして一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子氏を交え、議論した。

■木村教授「共同親権にしたからといって改善できる問題ではない」


木村:法律上の親子関係や、親権の概念を正確に理解しないまま行われている議論も多いと感じている。

まず、法律上の親子関係について、簡単に解説したい。日本の法律では、母親が出産すると自動的に「法律上の母子関係」が成立する。他方、父親は、認知の手続をとると「法律上の父子関係」が成立する。ただし、母親が結婚している場合、その子は夫の子と推定され、自動的に夫との「父子関係」が成立する。法律上の親子関係があると、親権を持っていようといまいと、扶養義務や相続権を持つ。親権がないからといって、「法律上親子ではない」ということはなく、扶養のためのお金を払わなくていいということにもならない。むしろ、親権の有無に関わらず、子を扶養する責任は継続する。

次に、親権について説明したい。現在、親権には、同居して世話をしたり、養育したりする権利である「身上監護権」と、財産の管理や教育・進路の決定、職業選択、契約などの重要事項を決定する「財産等管理権」が含まれている。

第一の身上監護権については、誤解が多い。民法766条は、監護や面会交流については、単独親権になったとしても、親権者が自由に決められる事柄ではないと定めている。父母は、どちらが親権を持つかに関わらず、「子の利益」を最優先して監護・面会交流の方法を協議で決めなくてはならないとしている。「親権を持たなくなった方は、法律上、親と扱われなくなり、子どもに会うこともできなくなる」という説明は誤りだ。

具体的には、民法766条1項・2項は、次のように定めている。この規定は、協議離婚(裁判所を通さない夫婦の合意による離婚)についてのものだが、民法771条で裁判離婚(裁判所の判断による離婚)にも準用されている。


つまり、「離婚をする時には、子の監護に必要な事項は協議によって定める。子の利益を最も優先して考慮しなくてはいけない」ということだ。また、父母が合意できないときは、裁判所が、子どもにとって最善の面会交流や監護のやり方を決める。

例えば、親権がお母さんにある場合も、「お父さんとは、どこどこで月1回3時間会いましょう」とか、場合によっては「子どもの家にお父さんとお母さんが交代で泊まりこみ、半分半分で面倒をみよう」ということを合意によって決める。その時は、父母の都合ではなく「子の利益」を最優先させるべきとされている。合意できなかった場合も、「子どもにとって一番いいのはこういう監護のあり方だから、こうしなさい」ということを家庭裁判所が決めることになっている。今年2月の答弁(衆議院予算委員会2月25日)で、安倍総理も、"親の面会、そういう権利については対応している"と説明している。
では、別居親が子どもに会えない場合とは、どういう場合か。一つには、裁判所が、子どもが忙しい、遠方に住んでいる、暴力の恐れがある、子ども自身が嫌がっているなど、「別居親による監護や面会が子の利益を害する」と判断し、それに十分な理由がある場合だろう。もう一つには、裁判所の判断が不十分だったという場合もあり得る。前者は、安心・安全な面会場の整備や交通費の支援、父母子の気持ちどうやって解きほぐしていくかというカウンセリングの支援など。後者は家庭裁判所の人員などを強化しなければ解決できない。つまり、共同親権にしたからといって改善できる問題ではない。


第二の財産管理などの子の重要事項決定権については、どうか。この点、山下前法務大臣は「父母の関係が良好でない場合にその親権の行使を共同にしてしまうと、父母の間で適時に適切な合意を形成することができないことで子の利益を害するおそれがあるとの指摘もなされている」と答弁している。何かを決定する時、お父さんとお母さんが話し合いをできる関係ではないと、どこの学校の行くのかが決められない、あるいは子どものための銀行口座も両方が合意できずに開設できない。といった可能性が出てくる。裁判所が調整するにしても、子どもが契約をするたびに、裁判所に行くのでは、手間も時間もかかりすぎるだろう。だから、この部分は、離婚後は、共同にはしていない、という説明をしている。また、父母の関係が、スムーズに話し合いができるほど良好なら、共同親権でなくても、親権を持つ親がもう一方の親に日常的に相談しているだろう。そもそも、親権の有無に関わらず、離婚後の父母が子どもについて話し合いをすることは、全く禁止されていない。

このように、この身上監護権と財産管理などの重要事項決定権は、別々に考えると分かりやすい。


パックン:僕の発言は共同親権推進派のように聞こえるかもしれないが、共同親権というキーワードは人々の意識を変える意味でも大きいと思う。同居もしない、決定権、管理権も持たない親が親なのか。もし、お母さんが"ごめんね。裁判所で元旦那が来ないと行けないことになっているから我慢してね"というような言い方をしたら、子どもも"なるほど。そういうことか"と思ってしまうかもしれない。しかし、お父さんも権利を持っていて、一緒に週末を過ごすことができれば、両方が親であるという意識は変わらないと思う。アメリカでは仲の悪い夫婦であっても共同親権だ。お互いの同意が必須という条件で、部分的に導入することが大事だと思う。アメリカでは、生まれてから死ぬまで親は親だから。

DV被害者を守るためには単独親権の方がいいのは間違いないし、共同親権の導入後もそのような家庭は単独親権が選択できるようにすべきだと思う。でも、DVとは関係のない家庭を犠牲にするのは乱暴ではないかと思う。


伊藤:もちろんそれはあると思う。私は心情的にはパックンさんに近い。というのも、大半の離婚は当事者の協議で済んでいて、家裁に来るのは難しいケースだからだ。その中では、親権者をどちらにするかで最初に対立が高まってしまい、面会交流をどうやって作り出すか、という議論にならなくなってしまうことが実務的にある。だから子どものことを考えれば、最初から共同親権の形でスタートできた方がいいかなと思うこともなくはない。ただし、そのためには親権の制限や、DVの認定に関する機能強化が不可欠だ。

あわせて読みたい

「共同親権」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    日本へ謝罪求め続ける韓国に疑問

    諌山裕

  2. 2

    JESSE被告「コカインなめた」

    阿曽山大噴火

  3. 3

    森ゆうこ氏の「圧力」に応じない

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  4. 4

    222万部減 新聞はもう要らないか

    PRESIDENT Online

  5. 5

    佐野史郎 病室では寝たきり状態

    女性自身

  6. 6

    日韓対立 両国は主張の棚上げを

    舛添要一

  7. 7

    桜を見る会予算を国民向けに使え

    柚木道義

  8. 8

    大嘗祭反対集会? 朝日記事に疑問

    和田政宗

  9. 9

    「山本太郎都知事」はあり得るか

    PRESIDENT Online

  10. 10

    朝日のがん治療本PR見直しを称賛

    中村ゆきつぐ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。