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冷静で中立的な報道こそがネット世論の過激化を止める

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●台風19号の水害に関するメディアの報道は昔に比べてかなり進化していると感じる

水害などの災害があった時には、「冷静で科学的な原因分析と対処」と「人びとの魔女狩り欲求的な犯人探しのエネルギー」との間の折り合いをどうつけるか・・・というのは古今東西難しい問題です。

しかし、今回の台風19号に関する主流メディアの報道は、かなり「あるべき報道」をしつつあるように感じています。「冷静で中立で総体的な報道」をすることが、インターネット上の無駄な罵り合いを抑止していくためにいかに重要か・・・という良い例だと思うので、この例を台風報道だけでなくあらゆる分野でもスタンダードにしていければいいと思えるほどです。

例えば先日の台風19号が関東地方を直撃していた時、神奈川県の城山ダムの緊急放水が問題になっていました。

緊急放水のタイミングをあちこちを睨みながらギリギリまで判断し、水門のほんの少しの上げ下げも冷静に考えながら対処することで、結果的に下流域の水害発生を抑えることができたそうで、それを実現した関係者の細心の注意を払った働きには敬意を表したいと思っています。

一方で当時からインターネット上では、

緊急放水しないで良くなるように、水害前にダムの水位を下げておくべきだったのにできていないのは怠慢だ!

という反発と、それに対する

お前緊急放水の仕組みわかってねーのかよ!ダムが決壊しないように必死の努力をした結果が緊急放水なんだよ!

という交わらない罵り合いが加熱しており、実際のところはどうなんだろうか??水害を見越してもっと水位を下げておける余地があったのかなかったのか?はリアルタイムには結局わからないままでした。

台風が去ってからの報道で理解したところでは。

・農業用水や工業用水の利用に不都合がでない範囲までの、洪水対策用の事前放水はしていた
・利水用の分まで踏み込んだ事前放水は行われておらず、今後巨大な台風が来る予報が確実な時には、そこまで踏み込んだ事前放水をやる対策が重要になるのでは

・・・ということだったことがわかりました。

今回の台風関係の報道は、全国の河川の支流まで含めた全体像と、それらの水位が降水量に対してどう変化したのか・・・という総体的なデータが可視化され、そのわかりやすいグラフィックを元に議論する形が、地上波テレビなどの特集番組で数多く見られており、結果としてどういう対策が有効だったのか、どういう対策が足りていなかったのか・・・について冷静な議論ができるようになりつつあるのは、とても大きな進歩だと思います。

メディア関係者の方はぜひその路線をどんどんあらゆるテーマでも追求していただきたい。

そうやって「冷静で中立的で総体的な」報道を、主流メディアはちゃんとやることが、”魔女狩りの熱情”から社会を守る重要な免疫システムになるからです。

●魔女狩りの熱情を、いかに克服するかが現代におけるメディアの最大の使命

20世紀後半から伝統だったメディア報道の最大の問題は、この「魔女狩りの熱情」に「主流メディア」が一緒になって乗っかって騒いでしまうことでした。

そういうふうに焚きつけると、そもそも治水対策に有効なのはダムなのか既存河川の底をこまめに浚渫することなのか堤防なのか調整池なのか問題地区の底上げなのか・・・が全然わからないまま(しかもこの答えは全国ひとつひとつの川の地形や流域住民の状況から見て毎回すべて違ってもおかしくない)、とにかく「わかりやすい敵」を叩く熱情だけが暴走し、冷静な治水行政が崩壊してしまうことになります。

現状の治水システムにも良いところもあれば悪いところもあり、温暖化が進む時代の変化とともにアップデートしていかなくてはいけないこともたくさんある。

問題は、「今の治水システムのここが問題だという冷静な議論」と、「今の政治に対する漠然とした不満」が魔合体してしまって、「どこが良くてどこがダメなのか」という冷静な議論がどこかに吹き飛んでしまうことです。

そういう警戒心があるから、強い言葉で「ダムは事前放流しておくべきだったのに!」と非難する人に対して、SNS上であまり噛み合ってない個人攻撃が溢れかえり、結局「事前放流をもっと利水部分までやる余地はなかったのか」についての冷静な議論がどこかに飛んでしまうことになる。

今回の19号に関するメディアの報道は、支流まで含めた河川全体の水位量の経時変化をグラフィックで見せるなどの技術変化の恩恵もあって、「反権力派の魔女狩りに一緒になって参加する」のではなくて、「治水行政がどうあるべきだったのか」についての「冷静で中立的で総体的な議論」ができていることは、非常に良いことだと私は思っています。

その「態度」を主流メディアが続け、「反権力でありさえすればなんでもいい」的なモメンタムに対してちゃんと自浄作用を発揮していくことは、その逆側で過激な「右傾化」をしがちなネット世論の沈静化に対しても「唯一の解決策」といえるほどだと私は思っています。

また、さらに踏み込んだことを言うと、例えば台風19号の水害に対する対策費を政府が7.1億円予備費から支出するというニュースに対して(もちろんこれは当座すぐに必要となる経費の手当であって、いずれ本格的な対策費用は別に予算が組まれます)、たったそれだけか!やはりアベを倒さなくては日本に未来はない!・・・みたいなことを言う反権力ツイッター芸人さんたちのツイートが万単位でリツイートされたりするこの時代には、むしろさらに踏み込んで「誤解の芽を摘んでおくフェアさ」もメディアには求められているかもしれません。

こういう「毎回起きるデマの盛り上がり」に対しては、主要メディアがむしろ事前に、「これはとりあえずの対策費であり・・・」といった但し書きを毎回つけるぐらいの配慮が、このSNS暴発時代には必要ではないでしょうか。

この「アベを叩けさえすればなんでもいい」的なツイッター芸人さんたちの盛り上がりが強すぎることで、「あいつらと一緒にされたくない」的に消極的アベ支持になってしまった・・・というリベラルな友人が私にはたくさんいます。そういう「罪」を侵させない配慮をするぐらいのことがこのインターネット時代には主要メディアには求められていると私は考えています。

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