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自分の年齢を知らないということ

発展途上国の統計を見ていると、思わぬところに日本人の感覚ではなかなか理解出来ない現象があって驚く事がある。その一つの例が人口学で言う「エイジヒーピング」(age heaping)だ。

どういう現象かは、図1を見ていただければ分かりやすい。図1は、2000年のインドネシアにおける人口ピラミッドである。

図1:インドネシアの人口ピラミッド(2000年)
出典:西(2006, pp. 4)より引用

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一見して分かるように、数歳の感覚を空けて、人数が近接する年齢と比べて突然多くなる年齢が幾つか存在する。目盛は見えにくいが、突然人数が多い年齢の殆どは、下一桁が「5」か「0」である。このような年齢(age)の集積(heaping)をエイジヒーピングという。勿論、本当にキリの良い年齢が多いわけではないのだが、このような結果になるのは、統計調査を受けた人の無視出来ない割合の人が「自身の年齢を把握していない」が故に「大体キリの良い数字を答える」からである。

この記事の読者で自身の年齢を把握していない人はまずいないと思われるが、それ故になかなか「自分の年齢を知らない」という感覚を理解する事が難しいだろう。しかし、「自分の年齢を知っていること」というのは、「正確な出生届」という証明するものがあるからであり、自分の出生時の記憶があり、かつ、それがいつだったかを覚えている人はおらず、その知識は人から教えられたものなのである。実際、もしそのような記録が無い状態で、自分の親に「あなたは19×0年くらいに生まれたのよ」と教えられて育ったならば、なかなか自分の正確な年齢を把握する事は難しい。

では、このような国はずっとそうなのかと言えば、そんな事は無く、経済成長に伴ってこの傾向は弱まっていく。例えば、図2と図3は1960~1990年の タイの年齢別の人口構成の変化を性別毎に見たものであるが、エイジヒーピングが弱まっている事は一目瞭然だろう。(このグラフの軸を入れ替えて男女両方を 並べれば、人口ピラミッドになる。)


図2・図3:タイの年齢別人口構成推移(図2:男性 図3:女性)
出典:高橋(2001, pp. 54-55)より引用

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エイジヒーピングが少しずつ緩和していく理由はいくつも考えられるが、代表的な説明として「教育の普及」によって「出生年月日を正確に記録しようとする動 き」が高まるからというものがある。当然その背景には、教育を受けられるだけ収入が伸び、児童が労働をしなくてもよくなる事があるわけだ。

このグラフを出して、だからどうこうと言うつもりは無い。(ある程度、感想の傾向に予想は付くが。)経済成長によって、長期的にこのような問題は是正され ていくからだ。一応言っておくと、年齢を知らないのが問題なのではなく、教育を受けられず年齢がどうでも良い社会が問題なのである。

参考文献
高橋眞一(2001)「第二次大戦後のタイの人口変動と人口統計」『神戸大學經濟學研究年報』Vol. 47, pp. 49-74
西文彦(2006)「カンボジアの人口ピラミッド」『エストレーラ』Vol. 150, pp. 20-23

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