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予防接種よりも「ワクチン拒否」のほうが危ない

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1000人中1.5人は亡くなる麻疹

――恐ろしいですね。麻疹のリスクは大人でも高いでしょうか?

【宮原】もちろんです。東南アジアへの出張前に、会社が推奨しているA型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、日本脳炎ワクチンの接種は確認したのに、麻疹ワクチンの接種を確認していなかったため、麻疹脳炎にかかった30代男性がいました(※4)。これは海外での事例ですが、国内で感染するリスクも当然あります。接種歴は記憶だけだとあてにならないことが多いのです。

だからこそ、わからない場合は抗体検査をするか、調べなくても問題はないので念のために追加接種をしていただきたいと思っています。

なお、子供のときに風疹の予防接種を受けていない世代で、MR(麻疹風疹混合ワクチン)5期者の対象として無料クーポンが届いている方は、必ず抗体検査へ行ってください。

※4 https://www.niid.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-iasrd/7279-447d02.html

【森戸】麻疹を発症すると、高熱、咳、赤い発疹、肺炎、心筋炎、脳炎などが起きて苦しむだけでなく、最善の治療をしても1000人中1.5人は亡くなります。さらに後遺症なく治ったとしても、数年間に渡って免疫力が低下したり、数年たってから死に至ることのある恐ろしい亜急性硬化全脳炎(SSPE)が起こったりすることも……。

風疹も、血小板減少性紫斑病や脳炎を起こすことがあり、妊娠中の女性が感染すると胎児が高確率で「先天性風疹症候群」になるリスクがあります(※5)。

※5 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html

「自然に感染して免疫をつける」の盲点

【宮原】書籍の中に詳しく書いたので、ぜひ読んでみてほしいのですが、麻疹や風疹に限らず、どの感染症も恐ろしいのは発症したときに苦しむだけでなく、それぞれに難聴や知的障害、麻痺などの重大な後遺症がもたらされたり、死亡したりするリスクがあるから。

「自然に感染して強い免疫をつけたい」などという声も聞きますが、後遺症がもたらされたり、亡くなったりすれば、元も子もありません。

――感染症で苦しんだり亡くなったり、他人に感染させて苦しませたり亡くならせたりするだけでなく、こんなにも多くのデメリットがあるんですね。

【森戸】しかも、定期接種になっているワクチンは、定められた時期に接種すれば無料で受けられますが、あとで思い直して接種するとなると、たくさんのお金がかかります。例えば、水ぼうそうを予防する水痘ワクチンは2回で約1万5000円、4種混合ワクチンは1回あたり約9500円、MRワクチンは1回あたり約9000円がかかるわけです(自費の場合は医療機関によって値段が違います)。すべてを合計すると、かなりの金額になるでしょう。もちろん、手間と時間もかかります。

【宮原】子供自身が感染症によって苦しんだり後遺症が残ったり亡くなったりしたとき、周りの人を感染させて同様に苦しませたり後遺症を残したり亡くならせたりしたとき、子供の学業や職業選択に差し支えたとき、後に時間をかけて自費で予防接種をしなくてはならなくなったとき、「予防接種を受けないほうがいい」とあおった人たちは決して責任をとろうとはしてくれません。

予防接種は「周囲の人の命」も守る

――ご著書では、ワクチンに対する不安を払拭しようとされていると感じました。

森戸やすみ、宮原篤『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり!(専門家ママ・パパの本)』(内外出版社)

【森戸】不正確な「ワクチンは危険」という情報によって不安になっている保護者の方は、けっこう多いと思います。ですから、どうしたら正確な知識を伝えることができるか、どうしたら安心してもらえるかを考えました。本書では、ワクチンはどういう仕組みで感染症を予防するか、ワクチンには何が入っているか、どうやって安全性を保っているか、予防効果というメリットと副反応というデメリットを比べるとどうかなど、できる限り正確に、そして「易しく」「優しく」説明しています。

【宮原】「副反応が怖い」などと不安に思っている方、そういう方が周りにいる方にも、ぜひ本書を読んでみていただきたいと思っています。よく耳にする「ワクチンで自閉症になる」「インフルエンザワクチンに効果はない」などといった、すでに完全に否定されている話についても、ただ却下するのではなく根拠を提示してご説明しています。

お子さんの健康や将来にかかわることですから、一度正確な情報を確認して、しっかり考えてみていただきたいのです。そのうえで考え直された場合は、ぜひキャッチアップをしてください。日本小児科学会推奨のキャッチアップスケジュールが参考になります(※6)。

※6 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/catch_up_schedule.pdf

【森戸】予防接種は、自分自身や自分の子供を守るだめだけでなく、周囲の人たちの命を守るためにも大切なものです。だからこそ、みなさんにどういうものなのか知っていただけたら幸いです。保護者の方だけでなく、ぜひ医療や教育、子育て支援関係者の方にも読んでいただけたら……。そうして、多くの方にワクチンの重要性や安全性が伝わるよう、今後も一緒に呼びかけていけたらと思っています。

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森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都千歳船橋の「さくらが丘小児科クリニック」勤務。医療者と非医療者の架け橋となる記事を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』など著書多数。
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宮原 篤(みやはら・あつし)
小児科専門医
1972年、東京生まれ。臨床遺伝専門医、Certificate in Travel Health(TM)(CTHR)。大学卒業後、成育医療研究センター成育遺伝部での研究や大学病院などの研修を経て、総合病院小児科に勤務後、東京都千歳船橋に「かるがもクリニック」を開設。地域の小児医療に貢献したいと考えている。
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(小児科専門医 森戸 やすみ、小児科専門医 宮原 篤 構成=内外出版社編集部)

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