- 2019年10月17日 17:50
3.8点問題と公正取引委員会の調査でも「食べログ」を批判するのが間違っている理由
1/2
公正取引委員会が調査を開始
Yahoo!ニュースのトピックスにも掲載されましたが、公正取引委員会が「食べログ」や「ぐるなび」などの飲食店情報サイトについて、参加店舗に不当な条件を押し付けたりしていないか調査を開始しました。
関連記事
・公取委、飲食店情報サイトを調査=「不当な押し付け」などの有無確認
少し前に、飲食店関係者が「食べログ」について「年会費を払えば店の評価を上げると言われ、断ったら評価が下がった」「お金を払えば悪い口コミを消せると言われた」という内容をTwitterに投稿し、話題になっていた時でした。
関連記事
・食べログ、「年会費を払うと評価が上がる」疑惑 運営元は否定
「食べログ」の点数に調査した記事もあります。3.6点が非常に多く、3.8点以上になることが難しいことが判明し、点数に偏りがあると指摘されたのです。
関連記事
・食べログ3.8問題を検証
・食べログランキングは信用できるのか?星(評価点)3.6に統計的な偏りがあることが判明
こういったことを受けて、「食べログ」を運営する株式会社カカクコムがプレスリリースを配信。飲食店向け有料サービスを含む食べログとの何らかの取引によって、点数やランキングが変動するということは一切ないとアナウンスしました。
関連記事
・「食べログ」に関する一部報道について
周りの反応
ネット上の反応を見てみると、Yahoo!ニュースやNewsPicksにおけるコメント、Twitterの投稿では、「食べログ」に対して批判的なものが多いです。
もちろん、有料の「食べログ店舗会員」であるかどうかによって、つまり、金銭の多寡によって、「食べログ」が飲食店の点数を上下させていたとすれば、レビューサイトとして致命的な問題があることは確かでしょう。
ただ、現段階ではまだ何も判明しておらず、「食べログ」も完全に否定しています。そういった状況を鑑みると、「食べログ」に対する批判は冷静さを欠いており、いき過ぎているように感じたので、Yahoo!ニュースの記事にオーサーコメントを投稿しました。
しかし、オーサーコメントには文字数の制限があるため、しっかりと説明することができなかったので、改めて詳しく説明していきたいと思います。
点数算出のロジック
今回の件では点数の上下が問題となっていますが、そもそも点数はどのようにして算出されているのでしょうか。
「食べログ」の点数は加重平均であり、単純平均ではありません。投稿が多い食通のレビュアーの影響度を大きくしたり、投稿の少ないにわかユーザーの影響度を小さくしたりしているのです。
関連リンク
・口コミ・ランキングに対する取り組み(食べログ運営ポリシー)
・点数・ランキングについて
これには2つの大きな利点があります。
まず、飲食店をより適切に評価できることです。
たくさん投稿しているユーザーは、それだけたくさんの飲食店に訪れていると考えられます。あまり投稿してないユーザーに比べて、飲食店について精通しているとみなすことができるでしょう。したがって、あまり投稿していないユーザーよりも、たくさん投稿しているユーザーの影響を大きくした方が、より正確に飲食店を評価できると考えられます。
次に、不正対策に効果があることです。
数店舗しか投稿していないユーザーでも飲食店の点数に影響を与えられるのであれば、やらせ投稿やステルスマーケティングの温床となり、不正レビューが容易に行えてしまうでしょう。
なぜならば、1人で何人もの架空ユーザーを登録してたくさんレビューをすれば、点数を上下させることができるからです。こういった不正レビューを排除するためにも、あまり投稿していないユーザーの影響を小さくすることは正しいと考えられます。
また、レビュー数が少ない飲食店の評価が高くならないようになっていますが、これも不正レビューを防ぐために有効でしょう。なぜならば、数レビューであれば、影響力のあるユーザーを囲い込んで投稿してもらうことはできますが、数十レビューともなると、それが難しくなるからです。
「食べログ」は公式に述べていませんが、同じユーザーが投稿するのでも、ジャンルによって影響の度合いが異なるといわれています。
たとえば、フレンチに多く投稿し、日本料理にはあまり投稿していないユーザーがいたとすると、日本料理よりもフレンチへの投稿の方が、影響度が大きくなっているというものです。確かに、ユーザーによって詳しいジャンルは異なるものなので、これも納得できることでしょう。
飲食店をより正しく評価できるようにと、色々な要素を盛り込んでいるため、点数の算出ロジックが複雑になっています。
「食べログ」にとって点数を算出するアルゴリズムはサービスの根幹を成す重要な要素であるだけに、完全に公開することができないのは理解できることでしょう。それに、アルゴリズムの全貌が分かってしまえば、これを不正に攻略するコンサルタント会社が跋扈することは想像に難くありません。
加重平均やレビュー数の閾値、さらにはアルゴリズムの神秘性によって、ひとつのレビューが与える点数の影響度が分かりにくくなっていることが、「食べログ」が恣意的に点数を上下させていると思われている原因であるように思います。
飲食店をより適正に評価したり、不正を防いだりすることができるので、こういった要素はむしろ評価されてしかるべきところでしょう。
有料会員の仕組み
今回の件を考える時に「食べログ店舗会員」や「集客サービス」の理解が重要だと思います。
関連リンク
・食べログ店舗会員向け集客サービスについて
無料である「食べログ店舗準会員」および有料である「食べログ店舗会員」の詳細は以下の通りです。
食べログ店舗準会員
無料
メニューや写真などの各項目を管理画面で自由に設定・登録・修正可能
食べログ店舗会員
・ライトプランS
月額固定費10,000円 + 従量料金(月締め)
表現力アップ、来店促進
・ベーシックプランS
月額固定費25,000円 + 従量料金(月締め)
アクセスアップ、表現力アップ、来店促進
・プレミアム5プランS
月額固定費50,000円 + 従量料金(月締め)
アクセスアップ、表現力アップ、来店促進、ゴールデンタイム強化、サポートサービス
・プレミアム10プランS
月額固定費100,000円 + 従量料金(月締め)
アクセスアップ、表現力アップ、来店促進、ゴールデンタイム強化、サポートサービス
「集客サービス」とは、有料の「食べログ店舗会員」で提供されているサービスを指しています。この中には当然のことながら、点数を上げるためのサービスはありません。
サイトには「食べログの口コミおよび点数(評価)に、集客サービスおよびサービス内ネット予約機能のご利用状況は一切影響しません。食べログの点数(評価)及びランキングは、ユーザーの評価を基礎に算出、表示をしております」という注意書きも加えられています。
掲載されている飲食店はお金を払わなければ、店舗情報を修正できなかったり、風評被害につながるようなレビューを削除できなかったりする噂もありますが、これらは間違いです。
無料の「食べログ店舗準会員」でも店舗の基本情報を修正したり、写真を掲載したり、キャッピコピーや説明を記載したりできます。
「口コミガイドライン」で「お店へ悪影響を及ぼすかつ内容の確認が困難な事象についての投稿はご遠慮ください」と明記されているように、問題のあるレビューについては誰でも報告できるのです。
関連リンク
・口コミガイドライン
したがって、「食べログ」にお金を支払って「食べログ店舗会員」にならなければ、何もできないという投稿は完全に誤りであるといえます。