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【読書感想】寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか 女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド

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 セクハラや#MeToo、男女の問題も、「抑圧する男性」「抑圧される女性」なんて、きれいに分かれた単純な構造で考えることはできない。

 繰り返しになるが、私はMちゃんにどんな言葉をかけるべきだったのだろうか。
 考えられるのは「何か特定の態度を他人に強要しないほうがいいんじゃないかな」ということである。

 Mちゃんは男の人を手のひらで転がすのがうまいので、きっと、上司からちょっとエロいLINEが届くくらい、彼女ならうまく利用できるだろう。私は彼女のその能力を、古くさいだとか、自立できていないだとか、男に媚びてるなどと言いたくない。MちゃんはMちゃんの能力を、存分に使って世を渡っていけばいい。

 だけど、同じ能力を使うことを他人に強制しないほうがいい、かもしれない。

 同じ女性とはいえ、男の人をいなすのがうまい人もいれば、下手な人もいる(ちなみに私はものすごく下手なんだけど、男の人から不快なLINEが来た場合はそれがどんな立場の人間であれかなりはっきりと拒絶するので、セクハラ被害にあったことは実はあまりない)。

 Mちゃんのような人は特技を活かしてうまくやっていけばいいのだけど、それが苦手な人に、「それくらいできなくてどうすんのさ」などと言ってはだめなのだ。

 同じように、不当な扱いを受けたと感じた人は加害者が処分されるよう動くべきだけど、Mちゃんのようなタイプの女の子を「あなたは女性の敵」などと言って糾弾してはだめだと思う。

 これを読みながら、僕は「そのとおりだなあ」と頷いていました。

 「女を武器にする」のが得意な人にとっては、女性全体の権利向上のために、自分の得意技を封印させられるのは不本意な場合もあるはず。
 お互いに「相手の得意技を尊重する」のがベストだよね。

 しかしながら、これを現実のシチュエーションに落とし込んでみると、Mちゃんのような人と、「セクハラは絶対に許せないし、女のほうも『女を武器に』するな!」という人が共存するのは難しい、とも著者は述べているのです。

 ああ、たしかにその通りだよなあ。

 そこで、なんとか落としどころをみつけていくのが現実というものだし、そのための努力を放棄したくない、というのが著者のスタンスなんですね。

 そういえば、同僚の女性が「街でナンパとかスカウトとかされると鬱陶しくてイヤだけれど、全然そういうことをされなくなると、それはそれでちょっと寂しい」と話していました。どっちなんだよ!って言いたくなったのですが(言いませんでしたが)、たぶん、どっちの感情もある、のだろうな。

 なんでも白黒つけて、自分の「正義」を押し通そうとする人がもてはやされやすいネット社会のなかで、著者の「人間はグレーゾーンのなかで、折り合いをつけながら生きている」というスタンスは、「売れづらい」と思うのです。
 だからこそ、貴重な存在でもあるのでしょう。

 フォークナーやモリスンの物語が教えてくれるのは、「誰かひとり、決定的に悪い奴がいて、その人物さえ改心させれば、私たちは平和に暮らせる」という考え方は誤りだということである。

 誰の心の中にも「悪」はある。
 それが環境によって、表出してしまっている人と、表出させないで上手く自己処理できている人がいるだけなのだ。

 どちらとも言えないことを、どちらとも決めつけないまま言葉にするのは、けっこう難しい。
 そういう難しいことが、すごく丁寧に行われている本だと思います。

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