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社会保障改革の肝は「自治体改革」にあり - 河合雅司(ジャーナリスト)

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政府が、有識者らによる「全世代型社会保障検討会議」(議長・安倍晋三首相)を立ち上げた。2012年の「社会保障・税一体改革」以来の大型改革の位置付けで、年内に中間報告を、来年夏までに最終報告をまとめるという。

社会保障給付費が2040年度には最大約190兆円(2018年度は約121兆円)に膨らむ見通しとなっているためだ。「消費税率を10%に引き上げたぐらいでは全然足りない」との認識である。

消費税増税から間髪入れずして社会保障制度改革に着手せざるを得ない事情は理解するが、それにしても今頃「全世代型」というネーミングとしたことにはズレを感じる。「全世代型」と聞くと、すべての世代のサービスが手厚く見直されるのかといった期待が膨らむというものだ。しかしながら、そういうことではないだろう。

むしろ、少子高齢化が進む中にあって「全世代に負担を求めるための改革」というのが政府の本音である。ならば、「全世代型」などとせず、ストレートに「人口減少対応型」としたほうが国民にも問題の本質が理解されたのではないだろうか。

「全世代型」と銘打ったのは、極めて政治的な理由である。「全世代型社会保障改革」という言葉を多くの国民が知ったのは、2017年10月の衆院解散・総選挙に向けた安倍首相の記者会見だろう。消費税増税分の使途の一部を変更し、幼児教育・保育、高等教育の無償化に充てることを唐突に発表した。

これまでの社会保障は高齢者に比重が置かれており、子育て世帯に目を配ること自体を否定するつもりはない。だが、ここで打ち出された無償化の具体的な内容というのはいかにも付け焼刃であった。保育の無償化は住民税非課税世帯など所得が少ない保護者についてはすでに実施されてきている。今回の措置で、新たに恩恵が及ぶことになったのは主として所得の多い層なのだ。安倍政権が人口減少に対してどこまで危機意識を持ち、覚悟をもってあたろうとしているのか疑わしい。

さらに違和感を覚えるのが、今回の改革がいわゆる「2025年問題」への対応を主目的としている点だ。「2025年問題」とは団塊世代が75歳以上となり始める2022年以降の社会保障費が急伸することを指すが、「この期に及んでも『2025年問題』と言っているのか」というのが率直な感想である。

「2025年問題」が社会保障における当面最大のヤマ場であることは随分早くからわかっていたことだ。安倍政権が誕生して7年弱もの歳月も経っているが、これまで何をしていたのか。あまりに対応が遅い。

裕福な子育て世帯への支援が中心の幼児教育の無償化などをやっている余裕があるのなら、今回の消費税率引き上げによる税収増分のすべてを「2025年問題」に費やせばよかったのではないか。

安倍政権がこの約7年間で本腰を入れて改革にあたって来たならば、「2025年問題」は既に解決に向けた道筋がついていたことだろう。今回の改革では、高齢者の人口がピークを迎える「2040年問題」に全力で取り組めるハズだった。

「2040年問題」は「2025年問題」と比べて日本社会に与えるダメージははるかに大きい。今回のタイミングで「2025年問題」と「2040年問題」とを同時に考えなければならなくなってしまったことで議論が散漫になる懸念もある。それどころか「2040年問題」の先延ばしになる可能性もある。「2040年問題」への対策にもそんなに多くの時間が残っているわけではなく、もしそうなったならば危うい。

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