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〈現地観戦記〉ラグビー日本代表がスコットランド戦であげた、もうひとつの「勝利」 - フモフモ編集長

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 ラグビーワールドカップ、日本VSスコットランド戦に行ってきました。日本代表があげた4つのトライはどれも美しく、スコットランドのしぶとさは背筋が寒くなるようでした。伝統国の強さを感じ、4年前に敗れた苦い思い出を噛み締め、それを乗り越えた。これまでも「ビッグマッチ」と呼ばれるような試合のいくつかに立ち会ってきましたが、80分間声の限りに叫び続けるようなことは初めてでした。勝利の瞬間の地鳴りのような声、それは史上最高の大歓声でした。

©JMPA

最大級の台風が上陸した翌日にもかかわらず祝祭感にあふれた会場

 会場内は本当に祝祭のようで、昨日まで最大級の台風が来ていたにもかかわらず「楽しさ」でいっぱいでした。赤と白のジャージに身を包んだたくさんの人と、外国からそれぞれの国のジャージや伝統衣装で訪れるたくさんの人たち。はるばるここに集まってきた人たちだけあって、「今日は絶対に楽しむぞ!」と気迫満点です。

 スコットランドの応援団はそこかしこでバグパイプの演奏を始め、サムライの格好をした日本のファンと一緒に踊っています。一曲吹き終わるごとに拍手喝采。それに機嫌をよくしてまた吹き始めるもので、いつまでも演奏会は終わりません。頭には「蘇格土蘭」のハチマキ。漢字の当て字の「蘇格土蘭(スコットランド)」を入れたグッズのよう。ハチマキは「心にささった」らしく、たくさんの人が頭にしめています。

「台風の影響で飲料の準備ができないかも」ということで、この試合ではドリンクの持ち込みが解禁されていたのですが、フタをあければいつもどおりにビールはスタンバイされています。そしてパブ文化圏からやってきた応援団たちはしこたま飲んでいます。とにかく飲む。ひたすら飲む。いつ見ても満杯のビールを手に持っているので、「もしかして一口も飲んでないのか?」と思うくらいに飲みつづけています。

 日本側のシャイな一面も消え失せるほどの祝祭感で、あちこちでハグやハイタッチが始まります。ボランティアの人たちが積極的にハイタッチをするようにしているので、外国からのファンも「ほほぉ、日本はハイタッチする系か」と受け取り、ごく自然にそういった交流につながっている模様。

個人的にもこの大会期間中に「南アフリカの人?とのハイタッチ」「スコットランドの人?とのハグ」「ニュージーランドの人?との握手」なども経験しました。会社では同僚とも目を合わせないくらいのコミュ障さえも、渋谷スクランブル交差点みたいにさせてしまうあの雰囲気!

 スタンドでは国もチームもなくまぜこぜで座らされており、それもまた祝祭感を加速させます。野球やサッカーのようにそれぞれの応援団が分かれているのも悪くはないのですが、両方がまぜこぜでいることで、どのプレーにも喜びの歓声が上がり、どちらにボールが転がっても「いけぇ!」「GOOOOO!」などと力強い声があがります。

どこにでもどちらのファンもいることで、どっちに転んだとしても「ため息」に支配されるような瞬間は生まれにくく、とても盛り上がります。

 日本VSスコットランド戦でも前半は日本が攻めて日本側がガーッと盛り上がり、後半はスコットランドが攻めてスコットランド側が盛り上がる。それもあって80分間ずっと叫んでいるようなことにもなったのかなと思います。誰かが常に近くで喜びの声をあげているので、ごく自然に声が出てしまうような雰囲気です。

こんなときだからこそ全力で「楽しむ」ことを忘れない

 一言でまとめるなら「楽しかった!!」に尽きます。

 猛烈に、劇的に、ものすごく「楽しかった!!」です。

 何の気遅れもためらいもなく、そう言える今の自分。これは決して当たり前のことではありません。折しも10月12日には関東・東海地方に台風19号が上陸し、死傷者を含む多くの被害を出していました。そして試合当日の13日は、台風19号は東北地方を通過し、さらに被害を拡大させていました。このラグビーワールドカップでも12日の2試合、13日の1試合が中止(延期ではなく)になっています。

 特に13日に中止となった試合は「何故、またしても」とうなだれるようなものでした。釜石鵜住居復興スタジアムで行なわれるはずだったナミビアVSカナダ戦。東日本大震災によって多数の死者行方不明者が出た岩手県沿岸部。その復興の象徴として、未来への希望として、かつてこの地で日本のスポーツ界を席巻した「新日鉄釜石」の誇りを胸にラグビーワールドカップの開催都市に立候補した釜石市。

 もともとは学校であった場所、それはすなわちあの震災のなかで避難場所となり、多くの命が救われた場所であるわけですが、そこに築かれた新たなスタジアムで予定されていた貴重な2試合のひとつでした。

数は少ないながらも、その2試合が復興の象徴となるはずだと、町をあげて取り組み、ようやく開催の時を迎えたところでした。それが今度は台風によって妨げられる。倒れて、立ち上がって、また倒される。「何故、またしても」と思わずにはいられなかったことでしょう。

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