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ある小さな違和感

 大きな災害が起こると現在の放送メディアのあり方についていろいろと考える。

 放送は許認可事業で、誰もが参入できるわけではない。だから災害時には許可された放送エリアにあわせて様々な役割を担うことが求められている。国が考えている役割は、NHKは全国を対象とし、災害時においてはその公共放送という性格から、何においても災害時に必要な情報を提供することが求められる。民放については、現在では全国の放送局を結んで全国ネットで放送される番組が数多いが、正確には東京を例にとれば、日テレ、テレ朝、TBS、フジテレビ、テレ東などは関東広域が対象で、東京MXは東京都域、TVKは神奈川県域となる。

 民放はその放送エリアで収益を目的とする放送事業を自由に営むことを許可する代わりに、災害時にはそのエリアに必要な情報の提供に務める責務がある、ということになっている。これはラジオも同様で、ラジオの場合はさらに狭域の市域や町域を担うコミュニティーFMが加わる。

 こうした役割の分担によって、すべての地域に対して十分な情報提供を行える体制を作ろうとしてきたのが日本の放送行政だったと言えるだろう。そこには広告モデル(広告による収益モデル)による無料放送市場の成長への信頼があった。

 名古屋で始まった民間放送は、東京、大阪などの大都市に広がり、各都市の新聞社や財界、先行する放送局等の出資によって全国で放送局の開局が相次いだ。独立した企業である各放送局はやがて互いに手を結びネットワーク化した。

 ここから先の話には、関東広域局と関西広域局の所謂「腸捻転」とか、興味深い話が多いので誘惑に駆られるが、エントリのテーマではないので割愛する。

 本題に戻る。このエントリで言いたいことは、要するに、ネットワークして全国放送の役割が高まったけれども、社会にとっての情報インフラの役割を根本から考えるならば「民間放送とはそもそも地域放送である」ということだ。

 台風19号では、様々な放送メディアがリアルタイムで情報を伝えていた。NHKは通常番組を中断して被害を受けた各地域をきめ細かく取材し伝えた。神奈川県域局であるTVKは神奈川県の情報を中心に必要な情報を随時配信し、ケーブルテレビ局であるJ:COMテレビは、サービスエリアの狭域情報を文字情報と読み上げソフトを使って伝えていた。

 広告モデルに対するオプティミズムは、バブル崩壊後はもうないだろう。やれることはそれぞれの市場規模に収益は比例する。小さな市場を生業とする放送局は財政も厳しい。その中で、各局ができることをやっていたと思う。NHKは全国を担う責任を超えて、災害当時地域の方々のためにも情報を伝えようとしていたし、県域、市域、区域などの小さなエリアを生業とする小さな放送局も、今、できることを工夫しながら伝えようとしていた。

 しかし、違和感もあった。

 キー局と言われる放送局の災害報道についてだ。多くのキー局は、全国ネットで番組を放送していた。L字に配置された枠では文字情報で災害情報を伝えていた。番組が終わると、台風18号についての報道特別番組が始まった。全国の視聴者に向けての報道だった。

 それはNHKがすでにやっていることではないか、と思った。CMが流れると、L字に配置された情報枠は取り払われ情報が流れなくなる。長いCM枠が終わり番組に戻ると、またL字枠が復活し、スタジオのアナウンサーが深刻な表情で現地にいる報道スタッフの報告を聞いている。この報道特別番組は誰に向けてやっているのだろうか。正直言えば、これは報道特別番組という名前が付けられたエンタテインメントなのではないかと思った。こういう報道をすることに労力を使うなら、NHKに誘導すればいいのでは、とさえ感じた。NHKはずっと前の時間から、すべての番組を中止してやっているのだから。もう「民放だってこれくらいのことはできる」とNHKに対抗心を燃やす次代も終わってるとも思うし、その思いが社会の役に立つのは、多様な報道が求められるもっと後のことだろうとも思うし。

 キー局は災害放送をもっと頑張れと言っているわけではない。逆だ。現在の放送環境の中で果たすべき役割を考えて行うべきではないかということだ。様々な状況の人々がいる中で、せめて緊急時だけは関東広域局としての役割はなにかを考えてほしいと思う。極論を言えば、その中で、今、何もない、多くのテレビ視聴者が今はNHKを見るべきだ、我々の役割はそのあとの報道だ、と思えば、リアルタイムの災害報道はNHKに任せて、自身は通常番組を放送し続けるという判断もあると思う。不安な中で気晴らしとしていつもの番組を求めている被災者の方もいるだろう。その意義を見いだせれば、そういう選択もできるはずだ。

 少しでもその意識があれば、リアルタイムで起こっている災害についての報道特別番組を放送しているにも関わらずCMが流れる時にL字の情報枠を消すというようなことはできなかったはずだ。それに、広告主も東道特別番組の間でCMが流れる時に、リアルタイムに変わる災害情報が止まることを望んではいないだろうとも思うし。

 すぐに忘れてしまうような小さな違和感ではあったけれど、緊急時における放送の役割を再考し、広告主や視聴者を含めた共有が必要なのではないかと思った。

  *     *

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