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バーチャル美空ひばり 歌声はいいのに身体が……――青木るえか「テレビ健康診断」 『AIでよみがえる美空ひばり』(NHK総合) - 青木 るえか


©文藝春秋

『AIでよみがえる美空ひばり』。人工知能で生前のひばりの歌声や動きを解析し、新曲を歌わせるという試み。最高級のボカロのようなものか。最初にこれを新聞のテレビ欄で見た時に「どうして美空ひばりなんだ。でもこういうのはひばり以外考えられない」と思い、番組見たら台湾でテレサ・テン、米国はバディ・ホリー。他にもマリア・カラスとかで実現していた。美空ひばりと共通する「偉大な歌手」で「強烈にアクもある」人選。実在の人物をボカロのネタにするというのはある種のタブー感があり、それを振り払えるようなパワーがある人じゃないとアカンのだろう。

 で、いかにしてバーチャル美空ひばりをつくって新曲を歌わせるか。どのような解析をしてどうアウトプットするかを詳しく見せてくれて、その細かい部分が面白かった。曲中に語りパートがあるので、ひばりの息子さん秘蔵「美空ひばり、息子に童話を読み聞かせカセットテープ」の提供を受けて、歌ではなく語り部分も解析する等等等。

 で、「ひえー、これじゃボカロ丸出しだよ~」というところから「すげえ、ひばりが歌ってる! これが揺らぎの解析の成果か!」まで見せられて(番組の作りが)うまいなーと思わされる。でも、作詞の秋元康が「『川の流れのように』を作詞したニューヨークのカフェの片隅」や「イーストリバーの川っぷち」で歌詞を考えながら物思いに耽る絵はいらなかったのでは。「秋元康、古田新太と大橋巨泉の両方にとても似てきた」とへんな方向に感慨深くなってしまった。

 完成した「新曲『あれから』を歌うバーチャルひばり」はNHKの101スタジオで、関係者、ファンを集め披露される。オーケストラの生演奏をバックに歌うスクリーンの中のひばり。曲は、いま美空ひばりが生きていたとして久しぶりに秋元康に発注して出来上がった曲っぽさに溢れていて(というか実際その通りなのだが)、肝心の歌の再現度は「ほぼ違和感がない」。「ボカロだ」と思うから違和感をムリヤリ探してしまうので、ふつうに生きている美空ひばりの出した新曲なら何も思わなかっただろう。ここまでできるんだ。

 しかし。再現されたバーチャルひばり画像は「作り物感丸出し」であった。昔あった「マックス・ヘッドルーム」みたい。歌声についてあれほど「これじゃダメだ!」ってやり直ししていたのに、パッと目につくこの画像の違和感に気づかないはずはない。身体の再現はあれが精一杯なのか。「偽ひばりが口パクしてるみたい」だったので、ある意味珍しいものが見れたとは思う。でもあれで完成はダメだ。ひばりプロジェクトが今後も続くのかどうか、そこが気になるが番組では何も言ってなかったなあ。

『AIでよみがえる美空ひばり』
NHK総合  9/29放送
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20190929

(青木 るえか/週刊文春 2019年10月17日号)

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