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- 2012年06月13日 08:42
自然エネルギーの普及には“コミュニティ・パワー”が不可欠~認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・古屋将太氏インタビュー~
2/3自然エネ導入で電気料金が上昇するのは仕方ない?
――政府としては「これぐらいまで太陽光を普及させよう」という目標はあるのでしょうか?
古屋氏:それがないんですよね、実は。ふわっとしている。菅政権においても「脱原発依存」という目標を掲げて、「ゼロから見直す」と言っていました。それを最終的に決めるのが「エネルギー・環境会議」という閣僚の会議で、そこで最終的に判断する予定です。
そこに案を提出する「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」が、エネルギー基本政策の方向性や方針を議論しています。これまで20回以上会議をやっているのですが、この委員会の動向を多少見てもらうと現状が何となくわかります。つまり、これまでの産業エネルギーの延長線上で議論する人たちと、これから21世紀型のエネルギー政策や電力市場を作っていこうという人たちとのぶつかり合いになっているんです。
その中では2030年時点での省エネ、原発、化石燃料、自然エネルギーの割合を何%にするか、といった定量的な議論が中心を占めています。もちろん定量的な裏付けは必要ですけれども、そもそも国のエネルギー政策の基本方針とは、「将来どういうエネルギーの社会を選ぶか」という未来選択なのです。なので、一般の人たちが選択肢の意味をよりよく理解するための定性的な議論が欠かせないはずなのですが、なぜか「定性的な議論は無責任」といった論調が強く出てきてしまいます。
結局のところ、政府がこの国の自然エネルギーをどこまで増やすのか、それはなんのためなのかという議論が十分ではないという状況です。どうなるかわからない、今は目標なしで進めている状態ですね。
参考:総合資源エネルギー調査会基本問題委員会
――自然エネルギーの導入によって、「電気料金が上がるんじゃないか」という懸念はぬぐえないと思います。デンマークなど、日本よりも自然エネルギーが普及している国では、同じような問題はなかったのでしょうか。
古屋氏:国によって制度や前提が違うので一概には言えませんが、少なくともデンマークやドイツでは、政治のメッセージがきちんと国民に届いて、国民がきちんと考えたという経緯があります。「自然エネルギーを入れる、電気代が上がる、産業が流出する、経済にダメージ」というストーリーはわかりやすい。しかし、エネルギーの議論にはもう一つ前提があります。このまま原子力を続けるにせよ、止めるにせよ、現状では日本は化石燃料の比率が高いわけです。
2007年ぐらいに石油の埋蔵のピークは過ぎているとする「ピークオイル」という説があります。つまり石油などの化石燃料を使い続ければ、この先どんどん値段が上がるということになります。実際、ここ数年でガソリン価格は上がっていますし、いずれにせよ長期的に考えれば化石燃料による電力価格は上がっていくでしょう。政治的に見るのであれば、化石燃料を国際的に取り合うという話になります。エネルギーセキュリティの考え方でいうと、他の地域に依存していれば、その地域に供給を左右されてしまうリスクがある。それはとても大きなリスクです。
一方自然エネルギーは、現状ではそれなりに価格が高いかもしれませんが、大きな流れの中では下がっていくトレンドにあります。しかも国産ですから、国内のプロジェクトに投資すれば国内のGDPを生むわけです。エネルギーセキュリティの面でも、自前のところに供給の拠点を持っておけばリスクは下がります。
ただし、これらは短期的な計算では難しい。中長期的に複眼的に見て行かなければならない。「自然エネルギーを入れると電気料金が上がる」という話はシンプルなので流通しやすいですが、本当はもっと丁寧な議論を政治家などがしなければいけません。そして、メディアも自然エネルギーを増やすことの意味を丁寧に伝えなければならない。
ドイツやデンマークでは、それができているのです。映画監督の鎌仲ひとみさんがドキュメンタリーを撮った際にドイツの議員に、「どうやって脱原発をしたのか」を聞いたところ「やるべきことをやった。また、メディアがそれを一生懸命伝えた」と応えたとのことです。現実に負担はあるんですが(ドイツでは一般家庭で月500円程度)、国民が本当に自分たちの問題として考えて、また、自然エネルギーを新たな投資機会としてとらえ、「直近の負担と中長期的なメリットを考えた上でやっていく」という選択肢を選んだということでしょう。




