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焦点:LIBORからの切り替え、遅々として進まず


[ロンドン 8日 ロイター] - 英銀ナットウェスト<RBS.L>は6月、顧客のバス運行会社ナショナル・エクスプレス<NEX.L>が指標金利をロンドン銀行間金利(LIBOR)からポンド翌日物平均金利(SONIA)に切り替えたと発表した。同行の顧客がLIBORからSONIAに移行するのは初めてだ。しかしその後の4カ月でナショナル・エクスプレスに追随したのは1社だけ。世界中で340兆ドルもの金融商品で使われるLIBORからの移行が銀行や借り手にとっていかに困難かが分かる。

不正操作の発覚が市場を揺るがしたLIBORは2021年末に消滅するが、代替指標への移行は遅れている。業界関係者によると、指標の切り替えにはコストが掛かる上、移行でミスを犯せばクレジット市場を混乱させ、訴訟の波に見舞われる恐れがある。

明らかに有力な代替指標がないことから、一部の国は独自指標の採用を進めている。米国は担保付翌日物調達金利(SOFR)を参照金利とするデリバティブ取引が活発化。欧州中央銀行(ECB)は今月、ユーロ圏の新指標金利ESTR(ユーロ短期金利)の公表を開始した。

英国でも既にヘッジファンドや年金基金がSONIAを指標とするデリバティブの約定や取引を行っている。しかし企業の間では、ポンド建てローンなどLIBORを参照するキャッシュ商品で指標切り替えの動きが遅いどころか、移行に気付いてさえいない。

一方、業界筋によると英国では少なくとも2つの銀行がこの四半期中に英国の欧州連合(EU)離脱に備えるチームからLIBRO消滅対応チームに人員を異動させており、移行問題はもっと差し迫っている。

ナットウェスト・マーケッツの担当部門の責任者フィル・ロイド氏は「この問題で市場の一部は非常に多くの知見を積み賢くなっている一方、一部はLIBORがなくなることすら知らない」と述べた。

<ターム物導入に警戒も>

SONIAは、銀行同士の夜間の貸し借りで支払われた金利の平均に基づく指標で、毎朝9時に公表される。

ロイド氏によると、SONIAは既に成立した金利に基づくため、ローンの借り手は負担する金利を予想するのが難しく、ナットウェストはこうした点に懸念を抱く企業顧客をなだめるのに苦心している。

これに対してLIBORは将来を見通すターム物金利を備えており、借り手は将来の金利負担についてはっきりした見通しを持てるため、キャッシュフローの管理が容易だ。

銀行関係者やコンサルタントによると、市場は2020年半ばまでに将来の金利見通しを反映するターム物SONIAを導入しようと取り組んでいる。

SONIAは実際の取引結果に基づいて算出されるため、銀行の申告する数字に基づいて算出されるLIBORに比べて不正操作などに対する抵抗力が強いとみられている。

ただ、SONIAも取引の実績ではなく金利の見通しに基づくターム物ができれば、セキュリティーが低下したり、複数の貸し手が異なる金利を提示することで不適切な販売が行われたと訴訟が起こされる恐れがあると銀行関係者などは懸念している。

<銀行に多大な費用負担>

代替指標への移行が遅々として進まないのは、借り手である企業がSONIAの利用に乗り気ではないことだけが理由ではない。銀行には切り替えに伴うシステムの変更や従業員の教育で多額の費用が発生する。

オリバー・ワイマンのデータによると、LIBORからの切り替えに伴う負担は世界のトップ14行で12億ドルを超え、金融業界全体ではこの数倍に達する見込み。

こうしたコストの大部分はLIBORを指標金利とする契約の条件変更に伴うもの。専門家によると、10─15行が参加するシンジケートローンでは契約変更について全社から同意を取り付ける必要がある。

またLIBORを指標とする契約には、LIBORが使えなくなったときに代替金利を使う「フォールバック条項」が付いている。しかしこの条項はそもそもLIBORが一時的に手に入らない場合に備えるもので、LIBORの消滅を想定したものではない。

カプコのコンサルタント、ムラリー・ロングトン氏は「LIBORは金融業界を通る配管のすみずみに埋め込まれているからこそ、指標の切り替えは大きなチャレンジだ」と指摘。「LIBORは長い間市場を生み出すのに使われてきた。それだけ取り出して別のものと入れ替えるというわけには行かず、仕組み全体が変わる」と述べた。

(Sinead Cruise記者、Lawrence White記者)

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