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マーケットから見たデジカメの世界《第2回》

小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

「金曜ランチボックス」は、この対談以外にも社会系コラムや製品レビュー、Q&Aコーナー、そしてこれまでブログで書いてきた小ネタなど沢山のコンテンツでお楽しみ頂けるようになっています。よろしければ、下記2箇所の配信先バナーからご購読をお願いします。

□対談:Small Talk

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

今月の対談のお相手は、インプレスジャパン刊「デジタルカメラマガジン」の編集長を務める、川上義哉氏にお願いしている。

川上氏はデジカメ好きが高じて編集長にまでなった、というタイプではなく、本、雑誌セールスの手腕を買われて、カメラ誌の編集長に抜擢された人物である。よく新製品の発表会でも一緒になるが、いつもそのカメラでどういう市場が作れるのかに注目している点で、異質でもある。

その視点から見たデジカメのマーケットとはどのような形なのか、そのあたりを伺っていく。
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マーケットから見たデジカメの世界《第2回》
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小寺 いやあ4年前、川上さんが『デジカメマガジン』に移籍するって話を聞いて、「今厳しいからテコ入れなんだろうな……」って思ったんですよ。デジカメがちょうど行き着いたところまで行き着いて、これ以上何があるの? っていうところで、みんなちょっとデジカメに飽き始めてきたような。たぶん、『デジカメマガジン』も売上下がってんだろうな、ってのがなんとなくわかるような、そんな時期でしたよね。

で、あれからカメラ業界が持ち直した、最初の波ってなんですかね?

川上 ……ああー、持ち直した、って言うと、やっぱりミラーレスかな。

小寺 そこまで行っちゃいますか。

川上 うん、一気に行っちゃうと思う。

小寺 コンパクトデジカメ全盛の時代はない?

川上 こっちの業界に入って思ったことは、一眼レフよりもっと先にコンパクトデジカメのほうが、あっという間に「ああ、面白さがなくなっちゃってる」という感じでしたね。画一化されてるというか、どこのメーカーでも同じようなカメラになっちゃう、みたいなことが、コンパクトカメラは当時もう既にあって。

リンク先を見るですから、コンパクトで伸びてる、って感じは、その時はしなかったですね。おっしゃるような停滞感みたいなことはあったんですけど。

ただね、2007年に「D3」というニコンの一眼カメラが出たんですね。あれは35mm判のフィルムサイズのセンサで、飛びぬけてISO感度が上げられたんですよね。当時6400までいけたんじゃないかな。それは実は、コンパクトも既にもうつまんなくなっちゃってるよ、という時期に、突出してたんですよね。

ニコンはそのあとに、それを技術的に下に降ろしてくるわけですよね。それがすごかったですよ。高感度だと夜に強い、夜に強いと撮れる世界が変わっちゃうので。そういう意味では写真の世界はすごく伸びた。

つまり何を言いたいかというと、コンパクトカメラで夜に撮れるから嬉しい、というのは、けっこうレベルが高いわけです、意識としては。だって皆さん行楽に行くために買うでしょ。夜はどうせ宴会ぐらいなんで、フラッシュ炊けばいいじゃないか、と。それに対して、夜景を撮りたいとかっていうのは、ちゃんと三脚立ててスローシャッターで……っていうレベルなんで。

ですから、トレンドとしては「D3」というのが大きくて、それから2年ぐらいかけて下がっていって、大丈夫かな……という時に、オリンパスの「PEN」が出てくる。これが3年前の2009年なんですよね。

小寺 ああー、「PEN」なのかー。(今から45年ほど前に、35mmフィルムを節約して2倍撮れる「ハーフサイズ」と呼ばれるカメラ群が大ヒットした。それを牽引したのが、オリンパスのPENシリーズである。実際に筆者が産まれてから3歳ぐらいまでの写真は、すべてPENで撮影されている。その後シリーズは成長し、ついにハーフカメラ初の一眼レフ、「PEN-F」に到達する。ここで語られるデジタル時代に復活した「PEN」とは、このPEN-Fがモチーフになっており、絶妙なおっさんホイホイであった。またちょうど発売年の2009年には、オリジナルPENの設計者である米谷美久氏が没し、奇しくもデジタルPENはそのメモリアル的な意味合いも強く感じさせた)

■「E-P1」の衝撃

川上 僕らはちょうどその時、浮上のきっかけをつかみかけてた時に、オリンパスさんと一緒にキャンペーンを打って、どーんと伸びていくわけです。僕の印象の中でもやっぱり「PEN」というカメラ、最初は「E-P1」ですよね、これはすごく印象深いカメラだったと思います。

小寺 なるほど。オリンパスはその前からすでに、フォーサーズは(レンズマウント規格だが、名前の由来はセンサーサイズが4/3インチだったことから)やっていた。センサーは小さいんだけど、でも普通にフル35mmサイズ並のミラーのあるカメラを出してた。

まあ比較的小さいカメラではあったと思うんですけど、それではやっぱり火がつかなかった。ミラーを取っ払うマイクロフォーサーズ規格が誕生するまでは。(マイクロフォーサーズは、センサーはフォーサーズと同じながら、レンズマウントの規格を変更してミラーレスで行けるように小型化したもの。オリンパスとパナソニックが採用している)

川上 もう少し言うと、フォーサーズなんてダメ……とか言ったら怒られちゃうけど(苦笑)、そういう雰囲気がすごくあったんですよ。なんのメリットもない、と。

もともとフォーサーズになった時点で、要するにセンサーサイズがフル35mmの半分なんですけど、なんでボディが半分の大きさにならないの? ってのがあって。元々センサーとミラーボックスがでかくて、これ以上は小さくならないよ、って言うからセンサーを小さくしたわけで、それならミラーも外してちっちゃくしちゃえばいいじゃん、っていう話はすごくあったんです。なのにずっとやらなかったんですよね。

僕はその時のサイドストーリーをいろいろ聞いてますけど、相当抵抗があったみたいですよね。ミラーを外してああいう形にする、っていうのは。

小寺 ああー。

川上 で、E-P1を出す時に、これをどうやって売ってくのか、とか、写真家に受け入れてもらえるのか、ということを悩みながら恐る恐る出したら、どーんとヒットしちゃった。今じゃミラーレスというカテゴリが、一眼というカテゴリ全体の中の40%以上ですから、こんな風になるとは思ってなかったんじゃないですかねえ。

小寺 あ、でも、マイクロフォーサーズという規格はE-P1が出る前からあったよね?
パナソニックがマイクロフォーサーズのカメラ「DMC-G1」を出し始めた時は、どーん、って感じはなかったわけですか。

川上 いやG1が出たときに、「なんでこの形にこだわるのか」ってのは質問したんです。

小寺 ああ、なるほどね。今までの一眼レフカメラと形がちっちゃくなっただけのデザイン。

川上 ──じゃないか、と。ただそれはそれで彼らからすると、マーケティング調査をした結果、やっぱりカメラというのはカメラの形が大事なんだ、シンボリックな形が受け入れられる要素なんだ、と言ってG1を出すんですね。それでもちっちゃかったんですけど。日本でもそこそこ売れたみたいですけど、CMがちょっとおかしなことをやって……

小寺 (笑)。

川上 おかしいとか言っちゃいけない(笑)。女性向けのCMをやってて、ちょっと早かった。ただ北米ではすごく売れたみたいです。北米ではやっぱりこうやって「覗いて撮る」というのがあるみたいで、だからあの形で良かったっていうことをあとで聞きました。

小寺 やっぱり、ビューファインダーがあるからいいんだ。

川上 ただもう最初から、マイクロフォーサーズという規格が世の中に出てきた時から、僕らの業界では「E-P1のようなカメラが出てしかるべきだ」と思っていたので。

ちょうどそのときのフォトキナ(※編注:カメラ関連の展示会。ドイツで開催される)かなんかで、オレンジ色の革張りでコンセプトモデルが出てきたんですけど、すごい熱狂したんですよね。僕らにとっては、コンパクトカメラが面白くなくなっていく中で、あそこに一気にコンパクトじゃ物足りない人が来たんじゃないかなと。

実は、あの後のBCN(POSデータに基づく実売調査会社)とかの調査を見ると、一眼レフはそんなに落ちてこないわけです。震災とかいろいろありまして一時期落ちましたけど、結果的には伸びてるんですよね。で、コンパクトはより落ちているから、明らかにこちらの一部の人は、ミラーレスのE-P1に行ったと。あのスタイルに行ったんだな、というふうに見てます。

小寺 要するにコンデジで使ってた方が、ミラーレス一眼にそのまま移行して、フルの一眼を使ってた人はそのまま変わらず、というような地殻変動が起きたということなんですね。

でもそんなにコンデジに対してのミラーレス一眼のメリットを、購入者はちゃんと理解してたのかな。だって値段的にも相当上がりますよね?

川上 高かった、高かった。

小寺 そこを押してまでいくメリットって説明していくと大変なんで、むしろそのイメージ的な魅力というのを、メディアなりメーカーなりが演出していった部分はあると思うんですけど。その時のポイントはなんだったわけですか。

川上 いろんな分析があるんですよね。E-P1がなぜヒットしたのか、って話だと思うんですけど。ひとつは、女性のファッショナブルな──女性とはいっても中性的っていうんですかね。宮﨑あおいさんをフィーチャーして、ずっとイメージを揃えてった。あの子って、男性にも女性にもそんなに嫌われないので、そのへんのキャスティングが面白かった、っていうのがひとつ。

それとオリンパスとしては、アーリーアダプタというか、「あの人はカメラを知ってるよね」と言われるような人がリーチしているような雑誌やメディアに、相当プロモーションをかけたんですよね。で、うちは『デジタルカメラマガジン』という名前からしても、そういうデジタルカメラの“らしい”進化したものは大歓迎なので、それをかなり推した部分もあって。

まあ、我々がどこまでそれを携われてたかわかりませんけど、相当話題にはなったんですよ。日本には10誌ぐらいカメラ誌があるんです。その中でベスト5に入ってくる雑誌が強く推して。読んでる人ってのはコンパクトカメラ買う人じゃないわけですけど、その人たちが職場ではカメラに詳しい人ってポジションになっていて、「あれってどうなの?」って聞かれたときに、「や、あれはダメだよ」と言わないような雰囲気を醸成するようにしたんだと思うんですよね。

小寺 うんうん。

川上 で、かなりのプロの方が、普段から提げてるシーンをたくさん見た。あれはどういう風に仕掛けたかわかりませんけど、やっぱり一目置かれるプロの方々のサブ機、普段持ちのカメラに使ってもらえるようなアクションを、メーカーとしてしたんだと思うんですね。そういう両面があったので、伸びたんじゃないかと。

小寺 うん。でも女性へのアプローチという点では、パナソニックの読みもあながち間違ってはなかった。

川上 逆にパナソニックだってヒットする可能性があったかもしれないけど、パナソニックの戦略としては思いっきりこう、中年以上の女性層をターゲットにしたわけですよね。たぶんあのイメージは、旦那さんがカメラ好きで、奥さんは一緒に旅行に行くのが好きで、撮るのは撮るんだけどあんまりカメラは真剣にやってないと。

でもだんだん中高年になってけば、趣味に何かしとくのにカメラっていいよね、っていう時に、「旦那のこんなでかいカメラは使えないけど、ちょうどいいカメラ」ってイメージがはっきりしたマーケットがあったので、そこに売ったという。

小寺 なるほど。売れる層を完全に読み切ってから出した。

川上 両面があったんですよ。イメージもちゃんと作って。「E-P1」は、宮﨑あおいちゃんじゃなかったらどうなってたんだろうな、とちょっと思ってるんですよね。もっとセクシーな子だったりしてもいいわけだし、もっとキャリアウーマンっぽくてもよかったと思うんですけど、あの人は働いてる雰囲気もないし、遊んでる雰囲気もないし。女優としては大河ドラマ『篤姫』主演ですごくヒットしちゃったり、成功してるわけじゃないですか。そういう人を押さえられてた、というのは、カメラのブランドをどう作っていくかが上手だったのかな、というふうに見てます。



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