- 2019年10月10日 22:56
日本でも「代表制民主主義を機能させる改革」 に取り組む必要性で一致
2/2国会審議の質を高めるという観点からの制度改革が必要
これを受け工藤は、世界における代表制民主主義の揺らぎは、言論NPOが世界のシンクタンクと連携して行っている世論調査からも明らかだ、とした一方、日本では「国会」への信頼がイタリアと同じで、フランスやドイツと比べて相対的に低いという調査結果を説明。「同様に国会への信頼が低いイタリアでは、知識層への反発やグローバル化への不安に迎合して支持を集める政党が政権を握るまでになっている。日本の参院選後の新しい政党の動きを見ると、イタリアの現状は日本の将来を暗示しているのではないか」と述べ、この原因をどう考えればいいのか、意見を求めました。
吉田氏は、工藤が指摘したイタリア政治と日本政治の類似性について触れ、90年代以降にイタリアと日本で同様に政党と有権者の安定的な繋がりが切れてしまい、無党派層が広がったこと、さらに政党の離合集散が激しいことが、政党や国会が信頼されないという悪循環を作っているのではとの見方を示すと同時に、日本自体の制度的な問題にも言及しました。
ここでは、国対政治や党議拘束の多さ、与党の事前審査、会期不継続の問題など、提出された法案の修正が行われにくい日本特有の様々な国会制度を列挙。「法案の実質的な審議が難しい制度のもと、国会の論戦は単なるセレモニー的になり、メディアもその点をショーアップして取り上げる。そこに国会不信の原因があるのではないか」と語りました。
そして、国会の議論に自分たちの声が反映されている、という信頼を国会が取り戻すには、一部議員が提案しているペーパーレス化のような小手先の改善でなく、こうした制度論にまで踏み込んだ改革が必要だ、と主張しました。
早川氏は、言論NPOが最近行った世論調査で、国民の半数近くが政治家を国民の代表とは思っていないという点に言及し、立法府に集まる政治家は、法律は作っているが、信頼はできない、それをどう捉えるかが問題であり、「国会の議論が劇場化し、演出はされているが内容がない、ということであれば立法機能ではなく議論の質をどう上げていくのか、が論点となる」と指摘。この点が制度改革のポイントになるという認識を示しました。
政治家は何を「代表」しているのか
ここで工藤は、早川氏が挙げた「代表」というキーワードに改めて着目。「選挙が終わったら全て白紙委任してほしい、という政治家もいる。政治家は何を代表しているのか。国民は政治家に何を託したいと思っているのか」と問いました。
早川氏は大学教員の立場から、「学生が政治家を信頼していない一因は、社会全体でなく個別の利益を代表して動いていると思っていることだ。しかし、政治家は自身の支持基盤の利益を実現することが自分の仕事だと思っており、それを否定されると代表制そのものが成り立たなくなってしまう」と、「代表」の意味を巡って有権者と政治家に意識のギャップが生じていることを指摘しました。
網谷氏は、講義の際に「政党は部分の代表でいい」と話していることを紹介し、政党同士が話し合ったり、勝ち負けで交代することで中期的には国民の意思が代表される、ことをその理由として説明するが、若い層から見れば、政治への提案という間接的な手段よりも、NPOや社会的起業を通して自ら直接的にサービスを供給することに関心があり、それが政治への関心に繋がらない一因になっている、と分析し、「社会の中で誰が何を分担するのか、という観点から、統治構造のグランドデザインが必要になっている」と語ります。
吉田氏は、日本の政治改革は、政治主導や官邸主導になってという点で決める政治がある程度、実現したが、政権交代に向けた競争ある関係はできておらず、政党不信の一因に、こうした選択肢が提供されない政治がある、と説明します。
また、吉田氏は世界の若年層を対象にした世論調査によると、日本の若者は社会課題の解決に対する義務意識は強いものの、それを行動に移す割合が低いことを紹介。「『社会をこのように変えたい』という思いを、政治との接点につなげていくという観点からの主権者教育が必要だが、日本の主権者教育は優等生的、表面的で、自己利益を実現する手段として政治を考えてはいけない、と教えている」と指摘しました。
内山氏は、政治改革の評価に関しては、首相のリーダーシップが強くなったという点では成功であるが、政権交代が可能な政治という点では目的は実現していないとし、「そもそもこうした目標で良かったかは問い直さなくてはならない」と語ります。
その上で、代表制民主主義への不信は小手先の改革で直すことは難しく、制度と社会的な仕組みとの相互補完性も見ながら、複雑な連立方程式を解くものとなるが、その議論をこの場で進めたいと、強い意欲を示しました。
最後に司会の工藤は、4氏の意見を踏まえ、選挙や国会、政党といった代表制民主主義の仕組みを、多くの市民が信頼していないということは、日本の統治構造の基本が揺れているということ、だと指摘し、「今が日本のこれからの民主主義を考える重要な局面であり、日本の民主主義をより強く機能させるための議論を進めていきたい」と語り、第一部の議論を締めくくりました。
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