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深刻化した停電・断水・生活災害/無電柱化の強力な推進を!



9月9日未明、台風15号は強い勢力を持ったまま首都圏を襲い、甚大な被害をもたらした。特に千葉県では、負傷者は重傷6人、軽傷61人、住宅被害は全壊41棟、半壊424棟、一部損壊9544棟(9月20日時点)で、ブルーシートでの応急処置等が行われた。なかでも深刻だったのは停電。経済産業省の推計では2000本の電柱が倒壊したという。それに伴っての断水も続いた。

昨年の北海道胆振東部地震ではブラックアウトが衝撃を与えたが、今回の長期に渡った停電問題を踏まえ、防災・減災の最重要事項として対策に踏み出さなければならない。災害時にはがけ崩れ、倒木、飛散した屋根等によって電柱がなぎ倒されて停電を起こす。対策は簡単ではないが、電線の地中化、無電柱化の推進は、大地震・大災害への対応として重要なことだ。対策を急ぐ必要がある。

無電柱化は「防災」「交通安全」「景観」の観点から重要だ。この重要性から、2016年に「無電柱化の推進に関する法律」が成立した。法律では、国や事業者等の責務を定め、無電柱化施策を総合的・計画的・迅速に推進することを目標としている。それに基づき、昨年4月には2018年から2020年の3年間で1400kmの無電柱化を目標とする「無電柱化推進計画」を国土交通大臣が決定した。加えて、昨年の台風21号で大阪府を中心に1700本以上の電柱が倒壊したことを踏まえ、3カ年の緊急対策として、既往最大風速が一定以上の特に対策が必要な区間1000kmの無電柱化に着手することとなっている。

現在の日本の電柱の総数は、1987年に3007万本、2012年に3552万本、そして2017年には3585万本だ。無電柱化を進めてきたにも関わらず、毎年7万本が新設されているのが現状だ。世界を見てみると、ロンドン、パリは100%、台北96%、ソウル49%、日本で進んでいる東京23区でも8%だ。無電柱化が進んでいるのに、電線数が多いと感ずるのは、国道や都道で地中化が進み、より身近な市区町村道が進んでいないからだ。

課題はいくつかある。地中化をすることが重要だとは誰しもわかることだが、それが進まないのはネックがあるからだ。



第1はコストの問題だ。無電柱化には1kmで約5億円かかる。電力会社等にも建設費の1/3を負担してもらっているが、まず財源がネックになる。国が推進しようとしても電力会社等の負担が大きく大変だという。私は国土交通大臣の頃から、コストを安くして負担を少なくするよう技術開発を進めるよう指示してきた。具体的には電線を浅く埋める「浅層埋設」、ケーブルを小さなボックスに収める「小型ボックス活用埋設」、ケーブルを直接、地中に埋める「直接埋設」だ。

第2の課題は地域住民や関係事業者との合意形成だ。工事による通行止めや地上機器の設置場所など、住民の理解無しでは進められない。また、電力会社等の関係事業者の協力も必要だ。災害を経験していない地元の人々は災害の実感を得られないかもしれないが、昨年の関西地方や今年の千葉県など、台風による停電が及ぼす影響が大きいことは理解されてきたのではと思う。私は首都直下地震、東海地震・東南海地震・南海地震に大変危機感を持っている。

停電からの復旧に時間がかかっている様子からも、電柱が倒れることによって都市機能が麻痺することが懸念される。ビル、高層住宅では停電、断水、エレベーターが動かないなど生活全体が破壊されるし、電柱が倒れれば、そもそも道路交通自体が決定的なダメージとなる。昨年や今年の台風被害を教訓に、多くの人に無電柱化への理解を深めてもらい、進めていくことが大事である。

第3の課題は無電柱化の工事に時間がかかることである。無電柱化の工事では、管路工事の前に、水道やガスの移設工事を行う必要があり時間がかかっている。国ではこれらの工事を一括発注することなどでスピードアップできないか検討している。このスピードアップ無しでは地域住民の生活に不便を強いることを克服できない。

無電柱化の目的の一つに「景観」がある。観光立国を掲げる日本において、観光も重要だが、災害大国である日本では「防災」のために無電柱化を進めるべきと強く思っている。「景観」だけでは財源の確保をはじめとして無電柱化の推進は難しいだろう。

今回の台風15号は、強風・豪雨とは異なる様々な防災・減災の課題を突きつけた。千葉県の災害を踏まえ、様々な課題に立ち向かう緊要さが大切だ。そして、あらためて無電柱化を強力に進めるべきだと思う。

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