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スペイン銀行救済は腰砕けの理由

ユーロ圏諸国はスペインの金融機関に最大1000億ユーロの資本注入を行うことを決定した。スペインは支援を要請。というのが先週末に出たニュースであった。

今まで何も決められないユーロ圏の政治家達という印象だったが、大胆に前に進んだ印象である。当然市場は当初これを大きくポジティブに捉えた。スペイン株はオープンの時点では6%近く上昇したがこの記事を書いている11時半時点では前日比+0.5%程度まで値を下げている。また、スペイン国債は0.20%程度売られるという動きになっている。

思った以上に効果は薄かったようだ。なぜだろうか?ツィッターでは長続きしないだろうといってみたものの思ったより早かった。

今回の1000億ユーロという金額は多くのエコノミストが最大で必要になる額としてあげていた額で市場を落ち着かせるには十分な額のように思えるにも関わらずだ。

何が問題なのだろうか?いくつか挙げてみたい。

①金融機関にお金を入れても実体経済には出て行かない。いくら金融機関にお金を入れて倒産や金融危機を防いでも実体経済にお金が出て行くとは限らない。日本の研究で言えば金融機関にお金を入れても入れなくても事業会社の資金繰りはあまり変わらないというものもある。また、FEDやECBの金融緩和の効果の薄さを考えれば納得がいく話である。結局、壊滅的な南欧の経済の状況は金融の状況を緩和することでは大して変わらない。そして、経済の停滞は国家の返済能力をさらに危うくするということだ。

もちろん、同時に考えねばならないのが救済を受けた金融機関のリスキーなアセットへの投資である。フリーマネーを得た金融機関は追い込まれれば追い込まれるほどに危険な投資を行うインセンティブがある。安易な公的資金の投入はむしろ事態を悪化させる可能性がある。

②もちろん、モラルハザードの問題は上述のスペインの金融機関だけの問題ではない。問題各国の財政再建・構造改革へのインセンティブを削ぐ可能性は高い。今回、スペインは国家が管理下に置かれることはなかった。そしてゆるい条件で救済を受けた。ギリシアなどの国が俺たちの条件も緩和されてしかるべきだと主張し始めることは想像に難くない。

③当然ながら、金融機関救済は金融への規制強化と表裏一体だ。経済成長にはマイナスであることは間違いない。

④貸し出しが7月1日以降に発足予定のESMを通して行われた場合にはユーロ圏からの貸し出しがスペイン国債よりも返済順位が高くなる。スペイン国債保有のリスクが高まり売られる要因になる。

⑤昨年10月の時点でスペインの銀行は焼く260億ユーロの資本注入が必要とされた。が、実際にふたを開けると1000億であった。イタリアはこのときに約140億ユーロが必要とされた。イタリアに焦点が当たった場合にはイタリアにも巨額の資本注入が必要になる可能性がある。また、欧州のほかの銀行にも飛び火するかもしれない。そうすると事態は収拾がつかなくなる。もちろん、スペインは住宅バブルが大きかったという事実はあるが、憶測が憶測を生んでもおかしくない。

と考えていくとなかなかこれでよかったよかったとはならないのは当たり前の話だったのかもしれない。今週末にはギリシアの総選挙がある。今、欧州の財政統合が事態を救う方法といわれているが・・・。本当にそうだろうか?巨大な病人の集まり。そんな連邦政府を作ったところで何の役に立つのだろうか?ユーロ危機はまだまだ終わらないだろう。

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