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特集:日中韓・3か国経済の現在位置

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特集:日中韓・3か国経済の現在位置

今週はイベントが盛りだくさん。10月1日には日本で消費増税、中国では建国70周年の軍事パレードがありました。他方、香港のデモは収拾がつかず、北朝鮮がミサイルを発射するなど、きな臭い動きもあいかわらずです。

たまたま今週は9月30日に中尾武彦ADB総裁の講演会を聞き、10月2日に韓国大使館主催の経済通商セミナーに参加する機会がありました1。この機会に、「東アジア経済の現在位置」についてまとめておきたいと思います。日中韓3か国の経済は、現在、それぞれに曲がり角を迎えているのではないかと感じています。

●日本経済①:「今どき増税」に海外は冷ややかな見方

今週から消費税の税率が8%から10%に上がった。そのことに対して、海外メディアの報道がビミョーなものになっている。

The Economist誌の記事は本号P8に抄訳を掲載した。消費税の不人気さを紹介し、駆け込み需要や景気失速の怖れについて解説し、最後は日銀の金融政策への影響を取り上げている。「ラグビーW杯で高い評価を得ている日本人の時間厳守の精神は、増税(2度、延期した)やインフレ目標(6度も延期した)には適用されない」と痛いところを突いている。

より強烈なのはWall Street Journalで、日本版のタイトルは「迫る消費増税、安倍政権の悲しい節目」とマイルドだが、原題名は”Japan’s Shinzo Abe Aims an Arrow at His Own Foot”と手厳しい。つまり「安倍首相は自分の足を狙って矢を放つ」と、このタイミングでの増税を批判している。

「増税が経済成長に再びブレーキをかけるリスクの方がはるかに大きい」「日本経済の主な課題は需要の弱さであり、政府の支出を賄う必要性ではない」「日本の債務返済コストは世界で最も低い部類に入る」などと指摘している。

世界中が競って金融を緩和し、あのドイツまでもが財政政策を使おうかと言っているさなかに、日本だけが増税に向かうことに異和感があるのだろう。ただし海外メディアが見落としているのは、今回の増税は税収増以上の対策費を用意しているので、短期的に見た場合はむしろ景気に対してポジティブだということだ。

消費増税による税収増は年間で5.7兆円。たばこ増税などによる分の0.6兆円を足すと合計6.3兆円となる。これに対し、軽減税率で1.1兆円、幼児教育・保育の無償化や社会保障の充実などで3.2兆円、そして消費税対策が2.3兆円でトータルは6.6兆円。つまり3000億円の「持ち出し」となる。ここまでやるのは、「1度くらい無傷で増税をやり過ごしたい」「その上で次の増税ができるようにしたい」という財政当局の思いがあるからだろう。

今回の増税局面では、住宅や自動車関連の駆け込み消費があまり起きていない。2014年春の5%から8%への増税時には、家計部門は「2015年10月には、さらに2%の増税がある」と意識していた。だからこそ、駆け込み消費は盛大な規模になった。それに比べれば、今回は2%の1回きりである。だったら消費者の動きが鈍いのも納得である。

とはいうものの、増税対策が万全であったかといえば疑問が残る。増税対策は、どうしても声が大きな業界が優先される。住宅や自動車への配慮が手厚くなるのは当然であろう。しかるにそれは、2%の増税が真に懐に響く家計とは無縁の話である。

例えば、今回導入される社会保障の拡充項目には、「年金生活者の支援給付金」という項目があり、低年金の高齢者に月5000円を支給するプログラム(予算規模:1859億円)が含まれている。しかるに、そのことは周知徹底されているのだろうか。キャッシュレスなどの増税対策が喧伝される一方、真の弱者対策は後手に回っている印象がある。

そもそも今回の消費増税は、景気への影響や軽減税率など細かな問題ばかりに焦点が当たり、「そもそも何のための増税なのか」が語られていない。ここで「ぶっちゃけ」ベースで本誌が日本政府のホンネを代弁するならば、法律で決めた増税を3回も続けて延期するのはさすがに気が引けたからであろう。もっと言えば、軽減税率やらキャッシュレスやら、いろいろ厄介な作業を同時並行で増やし過ぎたことも無視できない。

さらなる増税延期は、日本国債の格下げにつながる恐れもあった。最近はほとんど顧みられない国債格付けだが、現在のわが国の自国通貨建て債務はムーディーズでA1、S&PでA+という評価である。最上位のAaaやAAAからは4段階も下である。これは中国と同じ、韓国(Aa2、AA)よりも下、と聞くと驚く人が多いのではないだろうか。国債格付けは日本企業の社債のベースともなるので、これ以上の格下げは危ういところである。

もしも後知恵が許されるのなら、2度目の延期を中止して、2017年4月に増税しておくのが最善手であった。当時は中国経済が好調で、日本でも輸出主導型の景気回復が続いていた。しかるにその延期を決定したのは2016年春のことであり、その時点では確かに世界経済は不気味な雰囲気が漂っていた。

事実、この年は6月に英国が国民投票でBrexitを決め、11月に米国でドナルド・トランプ氏が大統領に当選した。世界が「民主主義リスク」を意識した元年であり、あのときの延期はやむを得ないところがあったのだと思う。

●日本経済②:「外需離れ」が進むローカル経済圏へ?

とはいえ、海外メディアは日本経済を本気で心配してくれているわけではない。「オタクも変なことするねえ」という他人事モードであって、仮に増税で日本経済が腰折れしたとしても、おそらく世界への影響は軽微だと考えているのであろう。

それも無理からぬところであって、日本経済が世界に占めるシェアは低下している。端的に言うと、下記のような感じになっている2

30年前の日本経済は、今の中国と同じくらいの存在感があったから、経済失策をやらかせば「他国にご迷惑をかける」立場であった。今ではむしろ、他国からの影響を警戒する側である。特に中国経済の減速や米中貿易摩擦の影響が気になるところと言えよう。

ところが今の日本経済には不思議なことが起きている。今週10月1日の日銀短観は、「3四半期連続の悪化」がヘッドラインとなったが、筆者が受けた率直な印象は「思っていたほど悪くない」である。確かに「大企業製造業」は+7から+5(先行き+2)と悪化しているが、「大企業非製造業」は+23から+21(先行き+15)へとまだまだ高水準である。製造業と非製造業が「デカップリング」した状況は、いつまで続くのだろうか。

日銀短観を子細に見ると、非製造業の中でも「情報サービス」(+35→+43)や「対事業所サービス」(+35→+45)が全体を引き上げている。これらは消費増税を控え、軽減税率やキャッシュレス対応のソフトウェア投資といった特需によるものかもしれない。さらにインバウンド関連で言うと、「宿泊・飲食サービス」(+17→+9)は韓国人観光客の減少を反映して減速している様子が窺える。だから「デカップリングは一時的な現象で、非製造業もこれから悪化する」という恐れは十分にある。

他方、日本経済に構造変化が起きている可能性もある。以前から本誌では、①「日本経済の基本はモノづくり」、②「生産のデータは輸出次第」という見方をしてきた。つまり日本経済は輸出主導型、ということになる。

②の法則は今も健在で、輸出の減速に伴って鉱工業生産が伸び悩んでいる。ところが①の法則は怪しくなっていて、鉱工業生産が伸びない中でもGDP統計はプラス成長になっている。すなわち「モノよりサービス、コト消費」になっているのではないか。ちなみに内閣府は、「雇用・所得環境の改善を背景として、個人消費は持ち直している」3という模範解答を示している。

この通りであれば、まことに結構な話である。つまり、日本経済は「外需離れ」しつつある。外需よりも内需が重要であり、景気の先行きは鉱工業生産や貿易統計よりも、(米国のように)雇用統計を見る方が良い、ということになる。

もっともそんな認識が一般的になると、ますます日本経済は「孤高のローカル経済圏」となってしまいそうだ。このところマイナス金利通貨が増えるとともに、国際通貨の中で円が「ステルス化」し、為替レートも対ドル100円台後半で安定している4。お陰で製造業の緊張感が薄れている気もするのだが、海外経済への感度が薄れることはこの国にとって一大事ではないだろうか。

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