記事

「本のない家」で育った私が、ブックデザイナーになったわけ。

1/2

『クイックジャパン(太田出版)』、『文藝(河出書房新社)』、『生理ちゃん(KADOKAWA)』など人気タイトルを数多く手がけてきたブックデザイナーの佐藤亜沙美さん。装丁や本づくりへの思いを語ってもらった。

そんな佐藤さんは意外にも「本のない家」で子ども時代を過ごしたと話す。それでも本づくりに携わる仕事に就いたのはなぜ?

本はルールをちょっと外すと刺激的になる

佐藤)学生のころに、デザインの勉強をはじめました。そのあと働き始めた出版社のデザイン室は、ひとりひとりがプレイヤーで、誰かに教わるという環境ではなかったんです。それで私は毎日本屋に通っていました。

本を眺めながら、私には何が足りないんだろう?と考えていました。書店で刺激的な装丁に出会うと、自分にとって新鮮に映るデザインには必ず新しい要素と古い要素が混在していると気づきました。

70年代くらいの装丁はとくに今よりも「売り」を意識していないものも多く、表現がとても豊か。それから古本屋さんに通いつめるようになりました。今でも古書から学ぶことは多いです


『横尾忠則の画家の日記』という本は、本文がそのままカバーになってはみ出ているような装丁。カバー用に書き下ろされたイラストとタイトルという構図の本が並ぶなかで、逆手にとったようなデザインは視覚的な刺激がとても強い。

私がデザインを担当した佐久間裕美子さんの『My Little NewYork Times』やフランスの活動家ステファン・ルセル『怒れ!憤れ!』は新聞が折りたたまれたようなカバーにしたのですが、横尾忠則さんの影響を強く受けています。

本は表紙があって、背があって、本文があってというように、色々なルールが詰まっているんですけれど、そのルールをちょっと外すことで刺激になるんですよね。

若い頃、お金がなかったんですけれど、銀行でお金を借りて、装丁が素敵な高い本をたくさん買いました。「この本の技術を手に入れた」みたいな感じでパワーが湧いてくる感覚があります。


紙の本である必然性がデザインに求められる

最近は出版不況で、装丁などの紙にお金がかけられないんじゃないか?と聞かれることがありますが、その逆もあります。必然性を持たせるためにも、本は絶対にネットじゃできない、紙の手触り、デザインや色で楽しませることが求められているように感じます。

出版業界では、新しい印刷技術にチャレンジする傾向があるように思います。ある製本所では、レーザーで切り抜く最新の技術を導入したそうです。これまでの技術だと焼き目がついちゃうのですが、焼き目がつかずにきれいに切り抜けるということで、私もこの技術を装丁に取り入れました。


新書とか漫画がどんどん電子書籍に移っていっているのは、ネットが普及して人々の肌になじんできたということの現れです。紙の本はスピードでもコスト面でも電子書籍に劣る。だからこそモノとしてのありようが大事になってきているんですよね。

本じゃないとできない面構え、手触りや趣のある装丁を大事にしていこうと思っています。

転校、イジメ、不登校。あの頃の自分に届くように


子どもの頃は、なかなかタフな環境で育ったと思います。

親があまり家にいませんでした。いつもテレビがついていたけれど、本のない家でした。

小学校では明るく元気に過ごしていましたが、中学1年生のとき転校したことをきっかけに、まったくの異世界になってしまいました。

ドラマかと思うようなイジメにも遭いました。自分がどこにいていいのか分からない。その街や学校が独特だったのかもしれないですけど、排他的な雰囲気があって、私には馴染めなかったんです。

イジメを乗り越えるには、ヤンキーになるか、めっちゃ勉強するかしかないと思った。ヤンキーになるような度胸もなく、その頃に本に出会ったんです。それから学校には行かなくなり、本ばかり読んでいました。

親という絶対的なもの、神のような存在が自分の中にいなかったので、その代わりが本だったという感じです。

あわせて読みたい

「デザイン」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    文氏が天皇陛下宛の親書を送達か

    天木直人

  2. 2

    陛下の立ち位置を批判する朝日

    木走正水(きばしりまさみず)

  3. 3

    竹中氏「日本人は童貞そっくり」

    PRESIDENT Online

  4. 4

    韓国LG 市場予想上回る営業赤字

    ロイター

  5. 5

    女系天皇を認めたくない愚かさ

    志村建世

  6. 6

    天皇制は選挙方式にすれば合理的

    紙屋高雪

  7. 7

    韓国の李首相と枝野代表らが会談

    立憲民主党

  8. 8

    文氏低迷でGSOMIA維持派が台頭か

    高英起

  9. 9

    雅子さまの「祝宴ドレス」に注目

    文春オンライン

  10. 10

    格差社会が平和の存続をもたらす

    諌山裕

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。