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子ども部屋からみた少子化

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90万人割れ、出生率減少を加速させる「子ども部屋おじさん」:日経ビジネス電子版
 
 日経ビジネスに、随分なタイトルの記事がアップロードされていた。内容はリンク先を読んでいただくとして、さしあたり「子ども部屋おじさん」という語彙が生まれるほどには子ども部屋というのは定着したのか、と改めて思った。  
 
 子ども部屋は最初から世のご家庭のスタンダードだったわけではない。

日本の民俗 5 (5) 家の民俗文化誌
作者: 古家信平,多田井幸視,徳丸亞木
出版社/メーカー: 吉川弘文館
発売日: 2008/08
メディア: 単行本
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 昭和以前の農村社会の間取りをみると、そこには子ども部屋というスペースが存在しない。家屋はイエのものではあって夫婦や子どものものではなく、そのうえ座敷や客間は地域と繋がりあっていた。そのような家屋しか無かった時代には「子ども部屋おじさん」という語彙は生まれようがなかっただろう。

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活
作者: フィリップ・アリエス,杉山光信,杉山恵美子
出版社/メーカー: みすず書房
発売日: 1980/12/11
メディア: 単行本
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 これは日本に限ったことではなく、子どもや夫婦がそれぞれにプライベートな部屋を持つ習慣はヨーロッパ社会でも比較的最近になって生まれたものだ。近世以前までは、夫婦や子どもはもちろん、使用人までもが同じ部屋で、同じベッドで同衾することが当たり前だった。農民のたぐいだけでなく王侯ですらそうだったというから、「子ども部屋」とは後代の発明品だ。

「いえ」と「まち」―住居集合の論理 (SD選書 (190))
作者: 鈴木成文
出版社/メーカー: 鹿島出版会
発売日: 1984/01/01
メディア: ハードカバー
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 日本に「子ども部屋」が本格的に浸透していった時期は、戦後になってからのことだ。『「いえ」と「まち」 住居集合の論理』で戦後の集合住宅の間取りを確かめると、戦後も間もない段階では、農家に近い間取りの集合住宅がつくられていたことがみてとれる。3LDKなどの現代的な間取りが定着したのは、高度経済成長期以降のことだ。大都市圏でつくられた真新しい住まいで暮らす若夫婦から生まれた世代からが、子ども部屋に馴染んだ世代、と言ってしまって構わないだろう。東京や大阪のニュータウンで1960年代に生まれ育った人なら、子ども部屋を与えられて育った可能性が高い。  
 
 試みに、アニメに出て来る部屋の間取りを確認してみよう。
 
 『サザエさん』のカツオやワカメは、二人で子ども部屋を持っている。サザエさんとマスオさんとタラちゃんは三人で一部屋。磯野家には一応子ども部屋はあるが、子ども一人に一部屋ではない。

ozappa.com

 上掲の不動産屋さんのウェブサイトに行くと、磯野家の間取りを確かめることができる。廊下に電話が据え置かれ、家の隅に便所があり、廊下が軒下で外界と接している磯野家の間取りは、現代のマイホームとはかけ離れている。一応、若夫婦の部屋が別になっていて子ども部屋もあるにはあるが、家庭の、ひいては個人のプライベートに最適化しているとは言えない。  
 
 『ちびまる子ちゃん』のさくら家も参考になる。

www.homes.co.jp

 不動産屋さんはこういうのが大好きなのか、さくら家の間取りを熱心に考察しているウェブサイトを見つけた。磯野家と同じで、廊下があって子ども部屋もあるけれども、まる子姉妹が別々に部屋を持つには至っていない。
 
 この不動産屋さんのウェブサイトにも記されているように、磯野家やさくら家には「廊下」が存在していて、この「廊下」によってそれぞれの部屋のプライバシーは一応保たれる格好になっている。こうした間取りは中廊下式住宅といって昭和時代に流行したもので、部屋と部屋が襖でじかに接しているそれ以前の住まいに比べればプライバシーに配慮されたものだった。過渡期の間取りといったところだろうか。  
 
 ちなみに『妖怪ウォッチ』の天野家はどうかというと、こちらは2LDKとのこと。

iemaga.jp

 三たび不動産屋さんのウェブサイトを参照すると、ここでは子ども部屋が完全にケイタ君一人のものとして独立している。しかし子ども一人に一部屋だとしたら、この2LDKの住まいではこれ以上子どもを育てることはできないし、実際、ケイタ君は一人っ子だ。子ども部屋を一人に一部屋あてがう計算でいくなら、二人の子どもをもうけるには3LDK以上が、三人の子どもをもうけるには4LDK以上が欲しくなる。
 

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