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堀潤アナが語る「ニッポンのメディアのジレンマ」

2012年5月26日、アナウンサーの堀潤さんが、学生有志で作る番組「ジレンマジレンマ~ニッポンのメディアのジレンマ~」に出演されました。
しばらくNHKをお休みしてアメリカへ留学へ行かれる堀潤アナウンサー。その心中とは・・・。                  (寄稿 四谷プレスクラブ 加々美文康)

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[ジレンマパネラー(以下、ジ)]
まず「ジレンマジレンマ」の説明から・・・。
この番組はNHKで放送された、ニッポンのジレンマという番組を受けて、若者が「このような問題は自分たち若者こそ語るべき」とツイッター上で盛り上がり、「ニッポンのジレンマのジレンマ」という番組を放送したことをきっかけに始まった、若者の手でつくる番組です。

本放送を批判的に継承する形で、今までに三回番組を作っており、荻上チキさん、與那覇潤さんを招いての放送もやってまいりました。

今回は、従来のメディアに対する批判を加えていき、どのようなメディアを作り上げるべきなのかという話をしたいと思います。



以下書き起こし(1/4)
[堀潤アナウンサー(以下、堀]
まず挨拶させてください。僕今日は、ここにいる皆さんの意見を聞いていてとてもいいなと思いました。
なぜならば、自分が就職活動をしていたときに抱いていたメディアのイメージと全く同じだなと思ったからです。
なぜ僕が今の会社に就職したかというと、「巨大マスコミが伝えない本当の○○」ということを伝えたかったからなんですね。
当時は就職氷河期でした。 僕は私立大学を浪人で入り、しかも外国文学部。
商社とか金融の会社に入れるとか、弁護士とかお医者さんになれるとかそういう選択肢がなくて、同級生もぜんぜん就職できなかった。
僕はメディアを変えたいと思っていたので、ライターになって、
当時大好きだった週刊新潮や習慣文春に記事を買ってもらって、「巨大マスコミが伝えない本当の○○」というのをやろうと思っていたんですね。
ただ一方で、「巨大マスコミが伝えない本当の○○」というのを巨大マスコミの中でやってみたらどうなるんだろうな、という思いもありました。
僕はドイツ文学科にいたので、ナチスドイツのプロパガンダ・戦争時におけるメディアのあり方について卒論で取り上げました。
当時僕が社会人になったときのメディア状況を見ても、「あれ、戦争の時代とあまり変わってないんじゃないかな」と思いました。
なぜかというと、僕らが知らないようなところで情報がやり取りされている警戒感だとか、不快感、疑心暗鬼があったからです。
当時はバブル崩壊後でしたから、社会がうまく機能していないように見えたんですね。
そんなとき、デジタル時代が到来するんだと言われていました。これからは、双方向のやり取りがテレビを介して出来るようになるんだという話を聞きました。
今まで一方的だったものが、ついに双方向になる。
テレビの選別した情報を一方的に受けるんじゃなくて、「それは違うんじゃないか」という意見をやりとりできるのではないかという期待がありました。
そういう期待もあって僕はテレビ局に入ったんですね。
しかし、デジタル放送というものはまだまだ未完成で、この10年間うまく活用されてこなかった。
皆さんの家のテレビにもデジタル放送用のボタンがありますが、あまり使われてはいないです。天気予報くらいですね。
デジタル放送といっても、双方向のやりとりという意味では、全く活用されてきませんでした。
現代では、ついにSNSというものが生まれて、本当の双方向の情報のやりとりが出来るようになってきました。
今テレビ局側も、ツイッターやフェイスブックと連動したりして、ようやく「双方向のやりとりができるようになってきたのだな」と実感できるようになってきたんです。

[ジ]
とある民放局では、原発問題に関して、新聞の社論を超えるような番組作りはするなとの命令があったそうです。
あらかじめ報道内容の詳細まで、上で決めてしまう傾向がある。そのことに葛藤して局を辞めてしまった者もいるらしいです。

[堀]
僕は原発関連の取材は、自分の本業とは別にやってきました。
その取材の中でこんな話を聞きました。
原子力発電というものは、政治主導で行われ、どちらかというと科学が後からついていけばいいという進め方をしてきたのだと。
戦後、科学界でも原発の安全性に疑問を呈すると「お前はアカか」といわれていた。思想的に色がついていると思われ、科学の本道から外れているというような見方をされていたんですね。
件の民放局の事例などを聞くと、その時代と変わらないのだなと感じます。もっとフラットに議論ができる空間を作らなければいけません。
皆さんが抱くマスメディアのイメージは、ドキュメンタリーなんかよりも、普段のニュースなどから想像するのではないでしょうか。フローな情報を提供するもの、すなわちニュースでマスメディアをイメージすると思います。
SNSの登場によって変化を迫られているとしたら、このフローの部分です。
ここにジレンマがあるのですが、フローなニュースでは、100%の確証を得るのが非常に難しいです。
現場に行って一軒一軒回って話を聞き、点と点をつなげ、やっとぼんやりとした状況が浮かび上がってくる。
時間の締め切りもあるので、あと三時間あれば確証が得られるのに、それが出来ない。そういうことがよくあるんです。
そしてそういう確証が得られなかったことはやはり報道できないんです。
なぜかというと、「松本サリン事件」等にみられたように、マスメディアには苦い経験があるからです。

[ジ]
震災時の原発事故の際、マスメディアはメルトダウンについてより早急に発表すべきだったのでしょうか?

[堀]
間違いなく情報は出さなければいけません。
しかし、リスクを抱える自治体に、そもそも避難の為のインフラがないというのも事実です。

以下6月10日追加全編

[ジ]
マスメディアは間違った情報を発信した時に、それを訂正しない傾向がある印象を受けます。フローの情報なのだから間違ってしまったなら情報を更新すればいいのにと思うのですが…。

[堀]
僕がツイッターでつぶやくとものすごくハレーションしました。(拡散しました。)
僕がしばしばツイッターがいいと思うのは、個人が発言の責任をとれるところにあります。出してしまった情報をそのあとどう扱うかは難しい問題です。

マスメディアに限らず、そういったことはどんな組織でもありますね。
組織というのは連帯責任です。ラインの中で作業している人は、やはり勝手なことは出来ません。ラインが止まり、生産能力が落ちるからです。

組織の中では、ある個人の行動の影響が大きい場合には、どうしてもそれは事前承認性にならざるを得ない。
私が間違った場合は、私が謝ります。というような仕組みは必要だと思います

[ジ]
スーパーの野菜では生産者の顔写真があるのに、メディアではないんですね。

堀さんが今準備中の新しいメディアはどのようなものにしようと考えているのですか?

[堀]
調べられているみたいですね笑
僕は今まで11年間働いてたまった休暇と有給を使ってお休みをいただいているんですね。

マスメディアから、僕個人へ利益を享受してきた部分もある。これからSNS時代になり、情報発信時代になり、フローの情報があふれだしました。

個人として発信したい人はたくさんいるので、ノウハウや機材を提供できるようにしたいですね。パブリックアクセスの話とつながってきます。
※:パブリックアクセス (wikipedia)
パブリックアクセスは、海外で聞くと、皆ピンとくる言葉です。
かなり昔に市民の権利として確立しました。表現の自由をマスメディアが保証するものです。
韓国では、市民が提案したいことなら、市民がその編集権を持って番組を作れます。それはたとえ反政府的なものでも、放送できます。
しかしそういったものは日本にはありません。この放送(ニコニコ生放送)も同じですよね。ここ(放送のスタジオを見て)にマスメディアの放送局が来ていても良い筈です。

ニコ生だからいうことを言う訳じゃないですが、昨夜僕も夜を徹してニコ生を見ていました。これは非常に面白いと思います。ただ、個人発信の時代と言っても、放送以外の発信の概念がないですよね。そういうものを探りたい。
ドラゴンボールのスカウターのような笑。いろんな場所で情報にタッチできるような。

[ジ]
ツイッターのTLでも情報を集めることはできますよね。
パブリックアクセスも重要ですし、やはりテレビというハードは生き残るのでしょうか。

[堀]
テレビ局が残るかどうかは別の話だと思いますが、テレビ的なものは残ると思います。
変えるべきは体質です。
体質的なものを変えていかないと、新しいシステムを用意してもまた同じようなことが起こります。

[ジ]
体質を変えるのは難しいですよね。
組織が大きくなり、またステークホルダーが増えすぎても縛りが生まれる。そのようなことに陥らないためにはどうすればいいのでしょう。

[堀]
それは、市民が発信力を高めた時に、その演習となる場が必要かということに繋がります。
当事者の重要性に気づいたんですね。
僕は以前、派遣やフリーターの方と共に、グッドウィルの事件を取材していました。

労働者の権利を守ってほしいという想いはありましたが、これだけ世の中が疲弊してくると、ただもう守ってくれと主張するだけではだめだと思いました。

メディアも変わっていく中で、様々な体系が出来てくるでしょう。インターネットメディアもこれから成熟する中で、マスメディアと同じようなジレンマを迎えるかもしれない。

それに陥らない為には、情報の受け手、視聴者の意識も大切になってきます。

まだSNSは始まったばかりで、個人の発信者としてのスキルは高くありません。それを強化しなければいけない。それが最終的にジレンマを解消する方向に繋がる。組織vs個人という二項対立で考えがちですが、組織の中にいるのは個人ですからね。組織だって市民の集合です。

[ジ]
当事者性を保ちながら、発信する。
従来にもそのような媒体はいくつかありました。しかし、マスコミのオルタナティブになるほどの存在とはなっていないと感じます。ニコニコ動画くらいでしょうか。
アクセスの容易性を担保したシステムが必要ですよね。

ただ、最終的に今あるマスメディアも利用すべきだと思います。
例えばNHKのなかで1時間ほど市民に丸投げして、取材費も提供する。


[堀]
我々マスメディア側も誰のための放送なのかということを常に意識しなければいけません。
マスは、情報がストックされている。そのたくさんある情報をどう使っていくか?SNSとどういった関係を結べるのか?

これからは、自分の周りにどれだけ情報を発信するためのメディアとかコミュニティを持つかということが重要になってくると思います。

[ジ]
僕はツイッターを実名でやっているのですが、
ネット上でも、情報発信は、実名アカウントであるべきと思います。責任を持つうえでも大切だと思いますね。

[堀]
実名だとリスキーな部分もあります。
例えばツイッターは匿名なら空気を読む必要もありません。複数アカウントを持って使い分けても良いですし。

匿名であっても実名であっても、その情報は誰かが整理すればいいし。そのハブ役を何がやるのかというのはこれから変わってくるかもしれないですね。
ニッポンのジレンマでも宇野さんが言っていましたが、100%きりっとしている人ばかりではないですよね。
情報に対して受動的であっても、双方で良質な情報のやり取りをする方法を考えていきたいです。崇高な理念を掲げ続けるのも疲れてしまう。面倒くさがりの人でも大丈夫、という仕組みを作りたいです。

[ジ]
視聴者からの意見です。
SNS時代のメディアの議論は、テレビが出た時の、既存メディアとしての新聞との比較に似ているのではないか。マスメディアの限界ということではなく、どう役割を分担するかということが大事なのでは。

[堀]
クリティカルな指摘ですね。メディアごとに、「誰の為」の発信なのかが明確化して、専門性が高まるといいかもしれないですね。ウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズは地域紙ですが全世界で読まれていますし。

[ジ]
もうひとつ。市民メディアは玉石混合、結局テレビに頼るのでは。と・・・。

[堀]
編集方法も色々ですからね。例えば、横並びの放送が多いという指摘があります。どこも同じ切り口で報道をしているのだと。膨大な情報の垂れ流しをするメディアはどこかに一つあってもいいかもしれません。地域の情報垂れ流しなども。

[ジ]
そろそろ時間なのですが、堀さん留学へ行かれるらしいですね。

[堀]
はい。来年の春まで行ってきます。まだちょっと分からないですけど。

[ジ]
8bitニュースは?

[堀]
仲間が増えました。滝本さんも秘密結社をつくれと言っていますが、ぜひとも若い人と一緒に協力してゆきたいですね。
[ジ]
今日はありがとうございました。(拍手)
[堀]
これは壮行会番組ですね笑

(文責 四谷プレスクラブ 加々美文康)

関連
NHKアナのTwitterアカウント閉鎖が波紋、「公式アカウント」の在り方は?(http://blogos.com/discussion/2012-03-28/nhk_HORIJUN/)
【赤木智弘の眼光紙背】NHKアナウンサー堀潤のTwitterアカウント閉鎖は、何が問題なのか(http://blogos.com/article/35353/)

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