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『韓国の小学校歴史教科書』を読了してぼんやり思うこと

 また、前の記事の続き。

 きょうは、『韓国の小学校歴史教科書』(明石書店)を読み終わった。

韓国の小学校歴史教科書 (世界の教科書シリーズ)
作者: 三橋広夫
出版社/メーカー: 明石書店
発売日: 2007/10/02
メディア: 単行本
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抵抗や民族のエネルギーの記述多いなー

 現代史は、『まんが朝鮮の歴史』と比べて顕著な特徴がある。

 それは、「日本帝国主義に対する朝鮮民族の抵抗の歴史」が書いてある分量が多いということだ。それも圧倒的に

 もっと言えば民族のエネルギーの強調。

 『まんが朝鮮の歴史』の方は、苦しめられる朝鮮の庶民の生活がこれでもかと描かれているのだが、教科書の方は「これは……?」と思うほどに植民地支配被害の具体的叙述が少ない。いや、もちろんあるよ。あるけど、抵抗の動きと比較してみるとホント少ないんだわ。これは副読本『社会科探求』の方も同じ、というかいっそう顕著。

 韓国併合から日本降伏までの期間の記述で、目につく見出し・項目を拾ってみる。

  • 銃とペンをとって戦った先祖たち
  • 義兵運動
  • 民族の力を養う努力はどのように展開されたか
  • 3.1運動
  • 日帝が我が民族をどのように弾圧したか調べてみよう(ここで具体的被害が描かれるが4分の1ページほどである)
  • 大韓民国臨時政府
  • 韓国光復軍
  • 代表的な武装独立運動
  • 国内での独立運動
  • 日帝の民族抹殺政策(ここで戦争期の被害が描かれる)

 『まんが朝鮮の歴史』は1992年ごろの教科書をもとにしている。これに対して、『韓国の小学校歴史教科書』は2005年である。この十数年の間に、韓国政府の国定教科書に対する方針転換が起きたのだろうと考えるのが自然だ。

 なんか、被害に苦しむ弱々しい存在じゃなくて、こう、抵抗し、自国文化に誇りを持ったエネルギッシュな民族、みたいな。そういう描き方。

 そして、子どもたちに考えさせる課題もなかなか日本では見られない(強調は引用者)。

  • もし、自分が日帝強占期に生きていたとしたら、日帝にどのような方法で抵抗したか話し合ってみよう。(p.123)
  • 自分が独立戦争に参加したと思い、その日に起きたできごとを一篇の日記に書いてみよう。(p.125)
  • つぎは、独立軍が命をかけて独立運動をしながら歌った独立軍かの一部分である。この歌にこめられた独立軍の心を思い、歌の続きを完成させてみよう。(同前)

 まあ、これだって2005年、今から14年も前の話だから、きっと今はまた別の方針があっても不思議ではない。

日本の小学生の教科書で「朝鮮」は?

 ところで、日本の小学校の教科書ではどうか。

 娘のを借りて読む(日本文教出版)。

小学社会 6年上 [平成27年度採用]
作者: 池野範男(広島大学大学院教授)、的場正美(名古屋大学名誉教授)、
出版社/メーカー: 日本文教出版大阪
発売日: 2014/04/01
メディア: 単行本
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 実は近代史での朝鮮・韓国の叙述は、関東大震災での朝鮮人虐殺を含め、あちこちにあるが、植民地支配について書かれたのは2ページほどである。

 一つは、「日露戦争後の朝鮮」(p.122)。

 日露戦争後、日本は韓国に対する支配を強め、1910年(明治43年)に韓国を併合して朝鮮とし、植民地にしました。朝鮮の人々のなかには、日本がおこなった土地調査により、土地を失う人もたくさんいました。そのため、仕事を求めて日本や満州に移り住む人がいました。また、朝鮮の学校では、日本語や日本の歴史の授業がおこなわれるなど、朝鮮独自の教育をおこなうことがむずかしくなりました。

 1919年(大正8年)3月、朝鮮の独立をめざす人々のあいだで、大きな抵抗運動がおこりました。日本は、この運動をおさえましたが、その後も独立運動は続けられました。

そして、美術評論家・柳宗悦が朝鮮にシンパシーを抱いていた文化人としてあげられ、日本の朝鮮支配を批判する柳の文章をコラムで紹介している。

 二つ目は、第二次大戦期についての記述で、「朝鮮や中国の人々と戦争」というコラム(p.138)。

 朝鮮では、朝鮮の人々の姓名を日本式に改めさせたり、神社をつくって参拝させたりする政策をおし進めました。さらに、朝鮮や台湾では、徴兵をおこなって日本の軍人として戦場に送りました。また、戦争が長引いて日本国内の労働力が不足すると、多くの朝鮮や中国の人々を、日本各地の鉱山や工場などで働かせました。

 まあ、分量としてはがんばっているのかもしれないが、やはりこの記述だけでは、朝鮮半島の人々がどれだけ苦しんだかとか、なぜ抵抗運動に立ち上がったかがよくわからないだろう。

断髪令と整形

 しかし、まあ、あれだ。

 韓国も日本も、これはあくまで教科書である。

 韓国についていえば、韓国人の考えそのものではないし、ましてや韓国人個人個人がどう思っているかということでもない。あまりそこはリンクさせすぎないことだ。「韓国人は民族主義的な歴史教育でガチガチだ」的な。

 例えば、この韓国の小学校教科書にだって、1895年の高宗の断髪令について次のようにコラムにはある。

父母から譲り受けた身体を大切にすることが孝行のはじまりだと考えている民衆は「私の首を切ることはできても髪を切ることはできない」として断髪令に激しく反発した。(p.100)

……とくれば、現代の韓国人の美容整形の「軽さ」にすぐに考えが及ぶであろう。ぼくも美容整形をしていようがしていまいがどうでもいいと思うタチなのだが、ある研究論文に次のような一節があった(強調は引用者)。

咸基善[「韓国における美容成形の推移」『化粧文化』36、1997 年、78-81 頁]によれば、韓国でも近代外科医学定着以前には、「身体髪膚」という儒教理念のために外科手術に対して拒否感を持っていたが、朝鮮戦争後外国人との交流が増加するにしたがって一部の階層から美容整形が始まった。筆者の聞き取り調査では、韓国では儒教規範に反するから美容整形はすべきでないとする意見はほとんどなかった。身体髪膚言説との関連については、川添[2003 年 前掲論文]を参照されたい。 なお韓国では当初から大学病院でも美容医療が実施されている。(川添裕子「流動的で相互作用的な身体と自己 日本の美容整形の事例から」/国立歴史民俗博物館研究報告 第 169 集 2011 年 11 月所収、p.52)

 だからまあ、歴史は歴史として学ぶし、教科書は教科書として読むけど、韓国人一人一人はまた別ですよっていうほどのこと。

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