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- 2012年06月11日 08:13
「囚人のジレンマ」でサッカーを観る
突然ですが、「囚人のジレンマ」というのをご存知でしょうか。
囚人のジレンマ - Wikipedia
あらましをWikipediaで説明しますね。
まず、2人の犯罪者、AとBが共犯で捕まります。 犯罪の決定的な証拠があがらないためこのままだと微罪で終わり、せいぜいAとBにそれぞれ懲役2年を負わせるに過ぎません。彼らが犯した罪は証拠さえ押さえられれば懲役10年は確実なので、警察はAとBの自白を引き出そうと取引を持ちかけます。すなわち;
前提として、ふたりは別室で取り調べられ互いに意思疎通できません。ただし、上記の条件が相手にも提示されていることは知らされています。
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(囚人のジレンマ。カッコ内は懲役年数。(囚人A、囚人B))
囚人AとBが相談できるのであれば、ふたりは協調して黙秘(両者懲役2年)を選択するでしょう。しかし、意思疎通ができない状況で、自分が受ける懲役をいかに少なくするかということだけを考えれば、互いに裏切り合う(=自白する)ことが最適な選択となります。その理由は;
「個々にとって最適な選択」が「全体にとっての最適な選択」ではない、というものですね。
◇ ◇ ◇
長くなりましたが、そもそもどうして「囚人のジレンマ」について話し出したかというと、発端はサッカーです。
現在、「UEFA EURO2012」がポーランドとウクライナを舞台に開催されています。私も全試合を観戦するつもりですが、今晩スペイン対イタリアの試合が予定されていて、この試合のことを考えていたら「囚人のジレンマ」が頭をよぎりました。
スペインとイタリアはグループCに属し、他はアイルランドとクロアチア。上位2チームが決勝トーナメントへ進出します。普通に予想すると、スペインとイタリアが勝ち抜けます。もちろん、アイルランドとクロアチアも簡単に退けられるような相手ではありませんし、イタリアは八百長問題でチーム事情が安定しないだとか、スペインはビジャやプジョルの不在だとかといった要素があり、予想がまったく当たらない可能性もあります。
スペイン・イタリア両国にとって、ベストな形としては3戦3勝(勝ち点9)ですが、確実にアイルランドとクロアチアから勝ち点を取るために初戦は消耗戦を回避し、けが人やカードを出さず、ドロー(勝ち点1)に持ち込めれば・・・という意志が働くかもしれません。ただし、仮にスペインが引き分けを狙っても、イタリアが全力で勝ちに来ればスペインは勝ち点0になる可能性があり、残りの2戦に余裕のない状況で挑まねばならなくなります。
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(カッコ内は勝ち点。(スペイン、イタリア))
この場合、「囚人のジレンマ」の理論的シミュレーションとは異なり、両チームが本気でぶつかった場合にも勝ち点が(1、1)だったり(3、0)や(0、3)もありうるのですが、引き分け狙いでドローになった場合とは比べ物にならない消耗度が想定されますし、カードの累積や負傷者がでることも考えなければなりません。そして、そのダメージは続くアイルランドとクロアチアとの戦いにも影響が出るものです。
スペインとイタリア双方にとって、確実にグループリーグを突破するためには最強豪との初戦を無難に勝ち点1づつ分け合った方が双方にとっての最適な選択ではありますが、果たしてどうなるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
サッカー観戦の楽しみ方はいろいろあると思いますが、本稿のような見方も一ついかがでしょうか?
スペインとイタリアがどういう試合の入り方をするか楽しみです。今大会は現在までのところあまり点が入らない傾向があるので、前半に点が動かないようだと、そのまま両チームが最善策(=勝ち点1を分け合う)を選択するかもしれません。
「囚人のジレンマ」は前提として、プレイヤーが相互に意思疎通できない条件がありますが、サッカーは試合が経過するに従い、両者の間で暗黙のうちに相互理解が深まることがあります。その場合、理論としての「囚人のジレンマ」は崩れるので、その経過を観察してみても面白いかもしれません。
囚人のジレンマ - Wikipedia
あらましをWikipediaで説明しますね。
まず、2人の犯罪者、AとBが共犯で捕まります。 犯罪の決定的な証拠があがらないためこのままだと微罪で終わり、せいぜいAとBにそれぞれ懲役2年を負わせるに過ぎません。彼らが犯した罪は証拠さえ押さえられれば懲役10年は確実なので、警察はAとBの自白を引き出そうと取引を持ちかけます。すなわち;
- A・Bふたりとも黙秘すれば懲役2年(現状維持)。
- 自分が自白し相手が黙秘したままの場合、自分は釈放(懲役0年)、相手は懲役10年。
- 反対に、相手が自白し自分が黙秘した場合は、自分は懲役10年、相手は釈放(懲役0年)。
- ふたりとも自白した場合はふたりとも懲役5年。
前提として、ふたりは別室で取り調べられ互いに意思疎通できません。ただし、上記の条件が相手にも提示されていることは知らされています。
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(囚人のジレンマ。カッコ内は懲役年数。(囚人A、囚人B))
囚人AとBが相談できるのであれば、ふたりは協調して黙秘(両者懲役2年)を選択するでしょう。しかし、意思疎通ができない状況で、自分が受ける懲役をいかに少なくするかということだけを考えれば、互いに裏切り合う(=自白する)ことが最適な選択となります。その理由は;
- 黙秘(協調)を選ぶと、受ける懲役は2年か10年。
- 自白(裏切り)を選ぶと、受ける懲役は0年か5年。
「個々にとって最適な選択」が「全体にとっての最適な選択」ではない、というものですね。
◇ ◇ ◇
長くなりましたが、そもそもどうして「囚人のジレンマ」について話し出したかというと、発端はサッカーです。
現在、「UEFA EURO2012」がポーランドとウクライナを舞台に開催されています。私も全試合を観戦するつもりですが、今晩スペイン対イタリアの試合が予定されていて、この試合のことを考えていたら「囚人のジレンマ」が頭をよぎりました。
スペインとイタリアはグループCに属し、他はアイルランドとクロアチア。上位2チームが決勝トーナメントへ進出します。普通に予想すると、スペインとイタリアが勝ち抜けます。もちろん、アイルランドとクロアチアも簡単に退けられるような相手ではありませんし、イタリアは八百長問題でチーム事情が安定しないだとか、スペインはビジャやプジョルの不在だとかといった要素があり、予想がまったく当たらない可能性もあります。
スペイン・イタリア両国にとって、ベストな形としては3戦3勝(勝ち点9)ですが、確実にアイルランドとクロアチアから勝ち点を取るために初戦は消耗戦を回避し、けが人やカードを出さず、ドロー(勝ち点1)に持ち込めれば・・・という意志が働くかもしれません。ただし、仮にスペインが引き分けを狙っても、イタリアが全力で勝ちに来ればスペインは勝ち点0になる可能性があり、残りの2戦に余裕のない状況で挑まねばならなくなります。
画像を見る
(カッコ内は勝ち点。(スペイン、イタリア))
この場合、「囚人のジレンマ」の理論的シミュレーションとは異なり、両チームが本気でぶつかった場合にも勝ち点が(1、1)だったり(3、0)や(0、3)もありうるのですが、引き分け狙いでドローになった場合とは比べ物にならない消耗度が想定されますし、カードの累積や負傷者がでることも考えなければなりません。そして、そのダメージは続くアイルランドとクロアチアとの戦いにも影響が出るものです。
スペインとイタリア双方にとって、確実にグループリーグを突破するためには最強豪との初戦を無難に勝ち点1づつ分け合った方が双方にとっての最適な選択ではありますが、果たしてどうなるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
サッカー観戦の楽しみ方はいろいろあると思いますが、本稿のような見方も一ついかがでしょうか?
スペインとイタリアがどういう試合の入り方をするか楽しみです。今大会は現在までのところあまり点が入らない傾向があるので、前半に点が動かないようだと、そのまま両チームが最善策(=勝ち点1を分け合う)を選択するかもしれません。
「囚人のジレンマ」は前提として、プレイヤーが相互に意思疎通できない条件がありますが、サッカーは試合が経過するに従い、両者の間で暗黙のうちに相互理解が深まることがあります。その場合、理論としての「囚人のジレンマ」は崩れるので、その経過を観察してみても面白いかもしれません。