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ローマ法王に米を食べさせた男


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ローマ法王に米を食べさせた男  過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

内容説明

過疎高齢化により18年間で人口が半分に落ちこんだ“限界集落”の石川県羽咋市の神子原地区を、年間予算60万円で、わずか4年間で立ち直らせた“スーパー公務員”・羽咋市役所職員の高野誠鮮氏。神子原地区の米をローマ法王に献上することでブランド化に成功させる。農家が株主となる直売所を作って、農民に月30万円を超える現金収入をもたらす。空き農家を若者に貸すことでIターンを増やす。アメリカの人工衛星を利用して米の品質を見抜く。『奇跡のりんご』のりんご農家・木村秋則氏と手をむすんで、JAを巻きこんでの自然栽培の農産物つくりを実践し、全国のモデルケースとなるなど、その活躍ぶりは際立っている。本書では同氏が手がけたさまざまな「村おこし」プロジェクトを紹介。これを読むと、仕事のアイディア力が増す、商売繁盛のヒントになる、そしてTPPにも勝つ方法を学ぶこともできる!


内容(「BOOK」データベースより)

CIAの戦略に基づいてメディアを駆使し、ローマ法王にアラン・デュカス、木村秋則にエルメスの書道家、そしてNASAの宇宙飛行士や総理大臣も味方につけて限界集落から脱却させた市役所職員。



ある「スーパー公務員」の軌跡。

著者の高野誠鮮さんは、石川県羽咋市役所職員です。

それも、学校を出てすぐに地方公務員となったわけではなく、しばらく東京で仕事をしたあと、帰郷して臨時職員からスタートした「叩き上げ」。

アイディアと実行力で評価されていたものの、敵も多かった高野さんが農林課にやってきたのは、次のような事情でした。

 そして翌年の平成17年の4月、市役所の農林水産課内に、一次産業である農業や漁業、林業の生産品を加工して付加価値を高める「1.5次産業」を創出するための「1.5次産業振興室」が新設されました。私ともう1人の職員で、大学交流事業、雇用創出調査事業、市場調査事業、ブランド化事業、農山漁村活性化事業などの9事業に着手することになったのです。市長からは羽咋(はくい)市の中でもっとも人口減少が顕著で疲弊していた神子原地区での、

(1)過疎高齢化集落の活性化

(2)農作物を1年以内にブランド化する

 という命題を与えられました。

「やってやる!」それしかなかったですね。自分を救ってくれた市長には恥をかかせられない。マニフェストをそのまま実行してやろうと。

「農林課に飛ばしてやる!」と言った上司は、頭の中では農林課のことをいちばん汚い仕事をやる、いちばんろくでもない仕事をやっている部署だと思っていた。だから、農家をなめんなよ! って見返してやろうという気持ちもありました。

 そこで具体的に何をすればいいのかと考えた時に、脚本を書いて、ドラマを作ることが出来れば村は動くと考えたんです。ドラマで演じてくれるのは、村の人たちです。こういう場所であの人にこう動いてほしい、こういう発言をしてもらいたいという具体的なシナリオさえ書ければ、村は動くと考えたんですね。なぜそれまで村は動かなかったのか? ドラマを頭の中で構築していなかったからなんです。


もともと東京で放送作家をやっていたという人らしい発想で、高野さんは村を変えていこうとします。

思い切って、有名人に食べてもらえるようにアタックしてみたり(天皇陛下は不首尾でしたが、ローマ法王に「献上」できたのが、ひとつのきっかけになっています)、各地のメディアに、採り上げてもらえるように働きかけたり。

 平成17年10月21日、市長と神子原地区の地区長と私の3人で、獲れたばかりの神子原米を45kg、5kg入りの袋を9つ3人で手分けしてトランクに入れ、千代田区三番町の坂をガラガラと引っぱって、ローマ法王庁大使館前まで持っていきました。

 玄関先にはカレンガ大使が出迎えしてくれていて、中に案内されました。そして市長が、

「神の子が住む高原の名がつく羽咋のおいしい米を、法王に味わっていただきたい」

と、新米をお渡ししたんです。すると大使が、

「あなたがたの神子原は500人の小さな集落ですよね。私たちバチカンは800人足らずの世界一小さな国なんです。小さな村から小さな国への架け橋を我々がさせていただきます」

 と言ってくれたんです。

 正式に法王への献上物にしてあげますということです。


「どうせ無理だろう」とやる前に諦めてしまうようなことでも、やってみたら、意外と反応があるものなんですね。

「ローマ法王御用達」になった経緯などを読むと、それを思い知らされます。

 神子原が「小さな集落」であったからこそ、かえって法王庁は興味を持ってくれたのかもしれません。

 やってみないと、何が幸いするかさえわからない。

「失敗することをおそれない」というのは、立派な「戦略」なのだなあ、と。


高野さんの「改革」がうまくいったことには、やろうとしていることの正しさだけではなく、「それをどう進めていくか」という「プロセスの工夫」も重要だったのです。

著者の実家は地元のお寺で、そういう「地縁」も上手く利用しながら、粘り強く交渉を続けておられます。

どんなに素晴らしいアイディアでも、それを実行してくれる人がいなければ、意味がないのだから。


それにしても、「田舎で新しいことをする」というのは、大変なことみたいです。

高野さんが、神子原地区から多くの人が去ってしまったために使われていない農地を都市住民に貸すというプロジェクトを立ち上げようとしたとき、村民たちは、こんなふうに反応したそうです。

 早速、地区の集会場に100人以上の農家を集めて説明会を開きました。

「みなさんのお子さんの家、ご親族の家で、ここを離れてしまったから使われていない家があると思います。誰も住まない家は汚れて傾き、田畑は荒れてしまいます。そこを田舎暮らしのスローライフに憧れている都市住民に貸して家の維持と農地保全してもらうとともに、みなさんとの交流をしてもらおうと考えています。賃貸料は農地込みで、広さは問わずに、月に上限で2万円。住民票は羽咋市に移してもらいます……」

 そう私が説明していたら、突然1人が、

「いや、高野せん、そりゃ無理やわ!」

 と言い出しました。すると周りも「そうだ、そうだ」と言わんばかりにうなずいています。

「よそ者は村の秩序を乱すげんぞ」

「どういうことですか?」と私は尋ねました。

「俺ら、戦時中に疎開でやって来た人を村に迎えたが、とってもいやだった。朝の掃除はしないし、大事にしている祭りにも参加しないし……。よそ者が来たら村の秩序が乱れるんや。そんな思いはもうしたないげん!」

「そうだ、そんな人間と一緒に暮らしたくない!」

「そんな簡単に、よそ者には貸せんわいね!」

 集会場に怒声が飛びかいました。

 田舎は人間関係が濃密です。近所との利害関係もものすごく濃厚です。村の決まり事は必ず守らないといけません。以前、疎開でやって来た人間はそれをやらずに村の人を傷つけてしまい、村の人々はいまだにそれを苦々しい記憶として残している。村のルールを守れない人間は、村にいてもらっては困るのです……。


僕、こんな村、イヤだ……

「京都の人が『この間の戦』っていうのは、応仁の乱のこと」なんていう、本当なんだかネタなんだかよくわからない話が流布されていますが、「戦時中に疎開してきた人たちが……」って、60年くらい前の話ですよ!

いや、今の人たちは、もっと酷いかもしれないって想像しているのかもしれないけれど、どんなステキなロケーションでも、よそ者としては、こんな閉鎖的な村にかかわりたくはありません。


でも、一度そのコミュニティの「内側」に入ってしまえば、「都会では失われてしまった、濃密な人間関係」を体験することができるのです。

高野さんはまず最初に「酒が飲める女子大生」に「田舎体験」をしてもらうことで、話題作り+地元の人にも免疫をつけようとします。

それでけっこううまくいってしまうというのも、「わかりやすいなー」って感じなんですけどね。

「田舎の閉鎖性」というのは、本人たちや周囲が思っているほど、強固なものじゃなかったのです。

これも、「先入観にとらわれない」「失敗をおそれずにまずはやってみる」高野さんのチャレンジ精神が空けた風穴でした。



 人工衛星を使って、「お米のおいしさ」を測定するという話も印象的でした。

 日本の代理店を通すと、すごくお金がかかるのですが、高野さんが直接依頼すると、驚くほど安く測定できることがわかったのです。

 海外というと、英語でやりとりしなければならないし、なんだかすごく敷居が高く感じられますが、その「ひと手間」をスキップすることができれば、驚くほど安く、人工衛星を「利用」できるのです。


 高野さんは「さいごに」こう仰っておられます。

 実行したから「失敗した」「うまくいった」と言われます。何もしないのとやってみるのでは天地の開きがあり、何度も失敗を繰り返したからこそ私たちは、補助輪なしで、初めて自転車に乗れました。「ひっくり返ったらどうする?」「転んだらどうする?」と言われてもやめてはいけません。もう一度トライして乗るだけ。だから自転車に乗れるのです。

 印刷物の計画書のとおりには世界は動かない。でもそれは、計画書が甘いから出来ないのではなく、実行しないから出来ないだけ。過疎高齢化の問題にしても、何度議論すれば1%高齢化率が下がるのでしょう? 議会で議論さえすれば下がるのだったら、日本中から過疎集落はとっくになくなっています。役人は、文書を作るのが仕事でなく、本当に課題を解決し、変えるための行動や実行する力を求められているのです。


「公務員は……」って言われがちだけれど、「公務員」という立場が悪いわけじゃなく、「公務員だから」と当人も周囲もあれこれ勝手に決めつけて、視野を狭めているのが悪いのだなあ、とあらためて考えさせられました。

自分の可能性に行き詰まりを感じている人に、おすすめしたい一冊です。

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