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男が感じている育児のモヤモヤってなんだ!?これからの時代の"親"像をめぐって 常見陽平×本人 対談

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ネットにあふれる子育て応援系コンテンツ。でも、男性目線のものはやっぱり少数になりがちだ。そんな折、現状に待ったをかける男の育児エッセイ本が同時期に2冊発売された。一冊はBLOGOSブロガーとしてもおなじみ、千葉商科大学専任講師・常見陽平氏の『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う 』(自由国民社)。そしてもう一冊がインターネットユーザー・本人氏がコンテンツ配信サイト・cakesでおこなっていた人気連載に加筆した『こうしておれは父になる(のか) 』(イースト・プレス)だ。

今回はご両人に登場いただき、男たちが感じる「育児のモヤモヤ」について語り合ってもらった。なお、本人氏は顔出しNGのため、書影で顔を隠しての登場となっている。

左:本人氏、右:常見陽平氏

育児について、男同士でちゃんと語らなければ!

常見陽平(以下、常見):育児について、男同士でちゃんと語らなければ、戸惑いを共有しなくてはダメだなと思い、『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』を書きました。育児についてモヤモヤしているのに、何も言えなくてストレスが溜まってるパパっていっぱいいるはずなんですよ。本人さんの『こうして俺は父になる(のか)』はさすがだなと。このあたり、見事に描いているなと。

本人:ありがとうございます。いまうちの子は1歳と4カ月くらい。ちょうど歩きだして、いろんなところに行きたがるので大変、そんな感じです。

常見:うちはちょうど2歳2カ月になったばかりですね。よく話すようになり、いろいろ主張するようになってきました。イヤイヤ期で、「いやだ」ということを明確に言うようになったり。私や妻がトイレに行くと、なぜか水を流したがったり。

本人:やり遂げたい欲求みたいな。

常見:それはありますね。情熱的な娘だなあと思いつつ。若干、親バカ入ってますけども。

「父親らしさ」より「親らしさ」が大事?

—— 今回、お二人の父親目線の育児本というのが同時期に出たわけですが、お2人は「父親らしさ」みたいなものについてどうお考えですか

常見:ちょっと自分語りになってしまうのですが、僕の父親は、僕が生まれる前から脳腫瘍を患っており、体が不自由でした。障害者手帳も持っていました。僕が生まれてしばらくした頃には杖がないと歩行ができず、小学校に入る頃にはもう寝たきりでした。入院している期間も長く。私が11歳になった頃に亡くなりました。一緒にいる期間が短かったのです。

だから、父とは一緒に過ごしたのですけど、あまり覚えてないんです。いつも家にいて、会社に通勤する父ではなかったですし。以来、父とはなんだろうという模索がずっと続いてて、いまだにわからない。もっと言うと、そもそも「父親らしさ」ということに僕はまったくこだわってなくて。「親らしさかな?」みたいなね。

—— 「父親らしさ」ではなく、「親らしさ」

常見:「親らしさ」ということだと、親としてちゃんと収入を得るとか。僕は一日6時間、家事育児をやっていて、知人からは「やりすぎだ」って声もあるんだけど(笑)。嫌じゃないのと、一方で僕がやらなきゃとか、いろんな思いがあってやっていて。

「父親らしさ」よりも「親らしさ」にこだわってますね。ただし、本人さんの主張とも重なると思うんだけど、「カッコいい男でいたい」という思いはあるんです。そのカッコよさって、『BRUTUS』『Pen』的なおしゃれさ。この2誌を読むのをやめたり、この手の雑誌的世界を目指すのをやめたら男として終わりだと思っています。いや、すでにこの時点で痛い中年なんですけど。

本人:今回、「父になる」と本には書きましたけど、考えとしては常見さんと今聞いて似てるなと思ったんですよ。父親、というよりも、どちらかというと親というか。子どもの保護者に近いのかな。経済だったり世話というか、一緒に育ってくところで、親らしくは多少なれたのかなとは思ってるし、そういうものになったなと思うんですけど。

「父」という言葉に関して言うと、やっぱり家長とか大黒柱とか、威厳のある存在だと最初は思ってたんですよ。だから、子どもが生まれるということは、そういうふうに家をレペゼンして、かつ、子どもにも全力で向かい合い、行動すべてお手本になって……と思ってたんですけど、今年もフジロックには行きましたし、独身時代、妻と結婚する前の自分たちがやってたデートみたいなことを子どもと一緒に、ということもやってるし。親らしさ、父親らしさ、と考えると父親らしさってどうなんでしょうねという。

常見:僕はもちろん娘が最優先ではあるんだけど、自分が大好きでしょうがないというのがあって。自分が好きでいられる人間でいたい。ただ、いわゆる「父親らしさ」の威厳とかまるで捨ててて。家ではお手伝い猫型ロボットのという設定なんです。人間リモコン、人間スマートスピーカー状態です。料理つくるし。仲居さんみたいにふるまっています。ちょっとでもミスがあったらいちいち傷つくし。何かあったら「すいませんすいません」って謝るし。「父親らしさ」なんて、そこにはありません。


子育ての話になると男対女になってしまうナゾ

これ、今回の対談の大事なメッセージだと思うんですが、子育てになると、男対女の話になり、男が悪いということに回収されるというのが不思議でならなくて。やっぱり、「人間じゃん、親じゃん」ということだと思うんです。親という威厳はなくて、パートナーみたいな感じ。この人が生存するためのパートナーというか仲間、そういう感じなんでね。

本人:本当にそうですね。結婚して子どもが生まれてという生活をやってみて思ったんですが、妻はもちろんだし、子どもも意外と対等なところあるんだなと思って。

常見:それそれ。

本人:一緒に歩いてる感がすごくあった。

常見:昔の人からは「だらしない」とか言われそうだけど、僕もパートナーだなあって感じがして。一応大学教員なんですけど、教育者は日々、「教え子から教えられる」ことがあるんですよ。もちろんプロとして僕の方が圧倒的に知識がないとダメだし、指導力も身につけてるつもりですが、たとえば教え子のちょっとした素直な気づきや、足で集めたデータにはもちろん教えられる。

もっと言うと、会社だって部下から教えられてる上司はいっぱいいると思うんです。今どきの部下には「上司をマネジメントする力」すら必要ですし。お客さんから教えられることも昔からいっぱいあるわけだから。責任は果たさなきゃいけないとは思うけど、別に「上だ、下だ」じゃなくて「対等だ」という感覚は大事にしてます。

本人:うちの子、最近離乳食からちょっとずつまともなものを食べるようになってきたんですけど、僕が食べられないトマトとかガンガン食べるようになって。食に関して言えば、むしろこいつのほうが一歩先行ってるなって(笑)。

常見:チャレンジして食べるしね。あとは音楽に引きつけて言うと、うちは料理を99%僕がつくるんですね。料理をやってると「これはDJだな」って感じがして。クラブでオールナイトで踊っているときに、Underworldの『Born Slippy』が流れて超盛り上がる的な。20年くらい前のクラブみたいな感じで「きたー!」みたいな感じで盛り上がると嬉しいですね。「この子にこの食材は馬鹿ウケなんだ」なんて気づいたり。

—— 子どもから教えられることもたくさんある

常見:そうなんです。日々教えていただいているくらいに思ってます。

本人:むき出しの感受性みたいな生き物がドーンと来るから。どっちかというとそんなに人付き合い好きじゃなかった自分にとってみたら、「こんな至近距離でダイレクトに来てくれる人間、久しぶりだな」みたいな感じで。

常見:そうですよね。保育園に迎えに行ったとき、バーッて全力で走ってくるとか。

本人:あれすごかったです。最初見たときびっくりしました。

常見:やっぱり素直に面白いものと面白くないものを表現しますよね。たとえばYouTubeとかって見てます?

本人:見てます。

常見:何にハマってます?

本人:歌モノですね。YouTubeで見られるものも含めて、最近はEテレ的なものに反応しだして、『パプリカ』とか流すと踊ってます。

常見:僕と本人さんが微妙に違うのは、本人さんは小学校のときにギリギリ、アニメでアンパンマン見たと思うんですよ。

本人:そうですね。

常見:アンパンマンはアニメが始まったのが、たしか1988年なんですよ。僕はやなせたかし先生の絵本は見たような気がするんだけど、アニメのアンパンマンは見てなくて。バンダイにいたからわかっていたつもりなんですけど、アンパンマンというコンテンツがいかに強いかを日々思い知らされたりとかね。全部「マン」とか「ちゃん」つければキャラクターができることにも衝撃を受けましたけど。あかちゃんマンにはびっくりしましたよ。

本人:(笑)

常見:本当、素の感性に日々教えられるんですよ。


「いざ生まれてみましたとなったら、至らないところばっかり」(本人)

—— お二人は、お子さんが生まれてから「いざ子育てしよう」とか「育児に参加しよう」とか身構えることはありましたか

常見:身構えることはなかったです。やっぱり待望の子どもだから。子供が欲しいと思ってから5年かかったし、「ああ、この子はパパがいるんだ」という。最初に自分が育った家庭の話をしましたけど、帰ってきて当たり前に健康な両親がいる家庭というのが初めてで。両親いるんだ、病人が一人もいないんだ、というのも含めてね。いや、生まれ育った家庭を誇りに思っているし、親には感謝しかありませんが。でも、家庭像は常に移り変わりますけれど、私が幼い頃に思い描いていた普通の家庭はこういうものなんだと噛み締めたり。やりながら戸惑う部分というのは色々とありましたが。

本人:自分の場合は、両親が健在でそこから育ってきた二人だったんですが、育児に関してはじいじ・ばあばに頼れないとなる。東京で夫婦二人で一人の子どもを見るフォーメーションでいくことが決まってたので、やっぱりそつなくというか、ちゃんと育てられるようになれたらなと思ってたんですよ。でも、インターネットとかTwitterを見てると、やっぱりパパという存在は、育児をわかってないディスられの筆頭として大活躍してて(笑)。そういう失敗事例はたくさん出ていると。自分はそういうルートは絶対たどらない、ちゃんとやれるぞと思ってたんです。それを失敗しないように心がけてやってきて、いざ生まれてみましたとなったら、至らないところばっかりという感じでした。それで、ちゃんと自分たちでうまく育てられるように頑張ろうみたいな。

常見:そうか、なるほど。僕はそこで言うととにかく家庭の中で一番格下でいようと思ったんですね。とにかく日々勉強しつつ、失敗してもすぐに反省して直して、妻と娘にストレスをかけない生き方をしようということは常に心がけてますね。それはあるかなあ。

「ちゃんと」やることの難しさがストレスを生む?

—— 今本人さんがおっしゃった、「ちゃんと」というのが、なかなか難しいんですよね

常見:ちゃんと、ね。これ、育児に関わらず今の社会全体で、ちょっとしたことで批判があったり、さまざまな点で社会の分断ということがキーワードになったり、課題も多様で。「ちゃんと」ということ自体がけっこう難しいんじゃないのかなと思っている。一方で、僕も結局ちゃんとやろうとしてるんですよね。

そのことでストレスが生まれるのだと思います。結局、社会に迷惑をかけないことと、何より娘の健康などに害がないことが大事なのですが、ミスしないこと、叩かれないことが前に来すぎている感じ。結果として合格点を上げていて、みんな苦しんでるんじゃないかなという気はしますね。

本人:最初のお話にあった「父親らしさ」も、自分の中でもともと抱いていたイメージがあって、それに少しでも自分が当てはまるように頑張ろうというところがあったかなあと思います。だから、育て方についても父としてだけじゃなくて、家族を仲良くという中で、子どもも元気にはつらつと育つ、といういろんな理想があって、そこから外れないようにというのがあったのかもしれない。最終的には「死ななきゃいい」「腹減りすぎなきゃいい」というところに落ち着きましたけど。そこまで1年かかりました。

常見:そうそう。仕事はサボっても死なないから。たまに致命的なミスってあるけど、それも大体死なないんですよ。でも育児ってサボると子供が死ぬし、死ななくても心身に障害を抱える可能性はあるじゃないですか。普通に考えるとどうせ早く死ぬのは僕の方です。僕みたいな中年よりも、この子のほうが未来がありそうだなと思ってね。だから、自分が主人公じゃなくて応援団なのだと。今は娘にいい人生というか、娘がやりたいと思ったことに全部チャレンジできる人生にしたいですし、母に幸せに暮らしてもらいたいなと思っており。その応援団でいたいです。いざ留学したい、お金のかかる大学や学部に行きたいと言い出したときにどうするかは考えてはいますね。

「ワークライフバランスといいつつ、正直、アンバランスです」(常見)

—— その一方で、お二人とも仕事もバリバリとやっていらっしゃるわけですよね。仕事と家庭のバランスはどうやって取っていますか

常見:本人さんはふだん会社員なんですよね。

本人:そうです。今日半休を取ってやってきました。いわゆるIT業界の人間で、エンジニア企業なので格好はこんなふうにラフでもいいんですが、フレックスで働いてて、仕事終わったら保育園でピックアップして、そんな生活を送ってます。

常見:僕はよく自由人と見られてるんだけど、一応大学の教員なんですね。大学の教員は会社員ほどガチガチに予定が決まっているわけではないですが、微妙に予定が入っていくのです。まず絶対に講義をやらなくてはならないです。昔の大学のように休講だらけなんてことはありえないわけで。他にもオープンキャンパスや入試、委員会活動などもあり。比較的自由ではありますが、それなりに忙しいです。

ワークライフバランスといいつつ、正直、アンバランスです。家庭第一です。申し訳ないですが、僕は子供が生まれてからこの2年間は昔のペースでは全然働いてないです。ずっと悶々としてます。アウトプットのクオリティ下がってんなとか、上げられないなとか。娘や教え子の前でイライラしないためにも、疲れをとるためにも必ず6時間寝ていますし。

完全に弱音にしか聞こえないと思いますが、もっと集中して研究したいなとか、調査したいなとか、原稿も一字一句ていねいに書きたいなと思いますけど、全然回りません。この2年間よく食えてるなと思うくらい、昔に比べると働いてないんですよ。それについては、正直、めちゃくちゃ焦りがあるというのが正直なところです。いつまでここに残れるのかなと不安に思いつつ、仕事はともかく、なんだかんだ言ってがむしゃらに生きてはいます。でも、僕は人生の座右の銘が「中空飛行」だから、偉くなるのはやめようと思ったんです。

芸術監督やってくれみたいな話はおかげさまで来ないのですが(笑)。同世代の書き手はヒット作があったり、ラジオパーソナリティーなんかをやっていて凄いなあと羨ましがりつつ。論者なので、叩かれてナンボの世界ですけど、一方で今以上に疲れたくないので。日々、悶々としていますよ。まあ、芸術監督はともかく、ラジオパーソナリティーは来年か再来年くらいにはできたらいいなと思ってますけどね。


生まれる前の過ごし方はできないと痛感・・・

—— 本人さんはお仕事で悶々としたりすることはありますか

本人:自分自身で言えば、24時間という時間が子どもが生まれたことによって、生まれる前の過ごし方は絶対にできないんだなというのをしみじみ痛感しています。仕事というよりかは、趣味の範囲だったりするんですけど、突発的にライブ行きたいなあというのも絶対無理だし。あとはカラオケ2時間くらい歌ってから帰るもまずできないので。こういうところが、すごく変わってきた。今までライブに足を運ぶとか、イベントごとに身を投じることで、自分の楽しみや何かをアウトプットするのを糧にしてたから、そこがえぐられたなというのは感じました。

常見さんの本でも、子どもが生まれる前は7冊出していたのが今は1冊でペース落ちたって話をされていましたね。それでも、育児を料理とか含めてやってらっしゃる上で教鞭にも立ち、かつブログでは旬の話題を即キャッチアップして書いている。すごいバイタリティだ、尊敬だわっていう。

常見:そう言ってくれるとうれしいんですが、なんかバイタリティ落ちてないかって不安になる瞬間がありますよね。昔はもっとアクティブだったなみたいな。気持ちの切り替えはすごく難しいなと思ってて。知識人として、様々な問題について怒りの炎を燃やしつつ、社会に警鐘を乱打しなければと思って荒ぶっているときに娘のアンパンマンやパプリカダンスに付き合わないといけない。僕、硬派な左派論客なんだけどな・・・。

そうそう、あいちトリエンナーレに娘と一緒に行ったんですよ。表現の不自由展が終わった後だったんだけど、作品を見たり、一連の問題についていろいろ考えてるときに、娘は無邪気にカラフルなものに反応してキャーとやってる様子を見て。とはいえ、意味がわからなくても、一緒に行った体験は大切にしたくて。自分自身も見たかったし。娘を連れ回すことによって、バランスをとっています。

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