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「中国で一番有名な日本人」加藤嘉一氏が南京大虐殺を否定した理由?

 「中国で一番有名な日本人」加藤嘉一氏が南京市のサイン会で発言した「南京大虐殺」に関する発言がいろいろ話題になっているようなので、これについて少し。


1 事件の概要

 最初に概要を紹介する意味でRecord chinaの記事「<続報>日本人コラムニストの「南京大虐殺の真相は不明」発言、出版元が全サイン会を中止に―中国」を下に引用しておきます。

 2012年6月8日、中国在住の日本人コラムニスト・加藤嘉一氏が著書の発売サイン会の席上で行った南京大虐殺に関する発言が大きな波紋を広げている。サイン会の主催であり、同書の版元でもある出版社は、これを収束するために声明を発表した。

 加藤氏は先月20日、自著「致困惑中的年軽人」の発売に伴って、江蘇省南京市のある書店でサイン会に出席した。その際、ファンからの質問に答え、「南京大虐殺の真相については不明である」といった主旨で日中両国に一考をうながす発言を行った。

 これについて、中国国内ではインターネットを中心に抗議が殺到。今後、全国複数個所の書店で予定されていた同氏のサイン会を中止するよう求める声も挙がった。



2 『環球網』の記事

 次に『環球網』に対日新思考で、日本でも有名になった中国社会科学院の馮昭奎氏が興味深い論説「加藤君必须明白“南京的事”」を書いておられましたので、これを翻訳して簡単に紹介させていただきます。

 作家の加藤嘉一は南京のサイン会で中国の読者の質問に対して「当時の日本の南京の事は、私はずっと分からない」と述べた。日中の文化交流に貢献してきた加藤君が日本の中国侵略の史実に対しあいまいな態度をとる理由を考える必要がある。

 筆者は加藤君が2005年4月の「日本関するデモ(涉日游行)」(反日デモのこと)、彼に関心を持っていた。当時小泉の靖国参拝が原因で日中間はいろいろ問題を抱えていた。

 その時彼は、北京大学の日本人留学生会長として、中国人学生は日本人学生に対してとても友好的で、北京で何の問題もなく過ごしていると述べ、日本のマスコミが「反日」などの恐ろしい嘘を流していると反論した。

 しかし、加藤君は中国の若い読者に受け入れられ始めるにつれ、彼は多少おごりがでた様だ。全ての中国人が知っている鉄の歴史の事実について「分からない」と述べたのは意外だった。

 彼がこう述べた理由について2つの可能性がある。1つ目は彼は日本が中国を侵略した歴史について本当にあまり知らないこと。2つ目は、「分からないこと」を装っていることだ。

 もし1つ目の原因なら、これは「教育問題」だ。日本は、青少年に対する歴史を歪曲して、教えていることを意味し、今後の日中両国の民間交流に大きい負の影響を与えることとなる。

 もし、2つ目の原因だとするならば、日本社会が依然として狭いナショナリズムが存在することを意味する。そして「中国を怒らせる話をしたり、怒らせる行動をすれば、政治的に有利になるとという」不正常な状況を意味する。

 日本で日本で政治家を目指す加藤君が、歴史の事実に対して「分からない」と歴史の真実を偽るようにさせたのは、彼が日本国内のある種類の圧力に恐れをなしたからか、それとも一種の「政治的技術」のためか。

 中国の軍事、経済社会の発展により、複雑な感情がある上に、釣魚島(尖閣諸島の中国語名)の領土問題などや、一部の政治家とマスコミの策略により、日本人の中国に対する好感度は下がっている。

 このような状況は、本当のことを言うのは大きな圧力が掛かる(例えば、日本の駐中国大使が石原が釣魚島を買うことに反対したこと等)。何人かの日本の地方政治家は「言いがかりをつけ」て中国を怒らせて、これを利用して「中国脅威論」を扇動して、自分の政治的野心を実現しようとする。

 もしかするとこれが加藤君をして南京大虐殺に対して「分からない」と言わせた歴史的背景かもしれない。

 加藤君は、北京に来て10年近くになっており、本を書き、講演をし、日中両国の交流の代表となり、多くの若いファンを持っている。しかし、この「分からない」は彼のイメージを分からなくさせた。もし加藤君が引き続き日中関係のため力を出したいというのなら、彼はすぐに「南京の事」をはっきりさせなくてはいけない。


3 加藤氏の発言について

 私は以前加藤氏のことについて「「中国で一番有名な日本人」加藤嘉一氏の提案に対する疑問」言及し、書いている内容が少し甘いのではないかと批判したことがあります。

 今回の騒動について、日本でネットのコメントなどを見ると、どうも彼に対してあまり好意的でないものが多いようです。どうも中国よりの発言をすることが多い彼についてあまり良く思っていない方が多いということでしょうか。

 彼の発言内容については、いろいろ言いたいことがある方もいるかと思いますが、言論の自由のない、中国で発言し続けていくためには、いかしかたない面もあるかと思っています。ただ、先に述べたように、私は彼の知識面というか、思考内容については、あまり評価していません。

 実際、加藤氏が今回述べたことは、私もかつて名古屋の河村市長の発言が問題になった時に、南京事件で、「30万人説」だけが正しく、それ以外は認めないという発想はおかしいということではないかと書いたことがありますが(名古屋市長の南京事件否定発言2(中国紙の原因分析を基に))、基本的に同じ主張かと思います(togetterのまとめ記事)。


4 中国の反日思想

 馮昭奎氏の主張がいかに的はずれかというのは馬鹿馬鹿しすぎるので、つっこむ気にもなれませんが、恐いのはこれが中国のいわゆる「反日思想」の基本的思考パターンになっているところです。

 つまり日中関係が悪化した原因は、全て日本が悪く、日本の歴史認識がおかしいことと、日本で(一部の)軍国主義者、民族主義者が蔓延っていることが諸悪の根源だという思想です。

 実際、日本のことを研究している馮昭奎氏が本気でこうした馬鹿げた意見を信じているとは思いませんが、こうした文書を公表することが求められるのが中国で、南京大虐殺30万人説に疑問を呈するとどうなるか、加藤氏は身を以て教えてくれたというところでしょうか。

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