記事

連続Vで地獄から復活の大坂なおみ、米メディア注視の〝Aマッソ失言〟 - 新田日明 (スポーツライター)

女王の完全復活だ。テニスの中国オープン・女子シングルス決勝(6日・北京)で世界ランキング4位の大坂なおみが現世界1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)を下し、大会初優勝。9月の東レ・パンパシフィック(大阪)に続き、日本女子としては史上初となる出場2大会連続優勝の快挙を成し遂げた。

9月に自らと入れ替わって世界1位となったバーディーと新旧女王対決になり、第1セットこそ奪われたものの第2、最終セットを制して逆転勝利に結び付けた。これで7日発表の世界ランキングでは3位へ浮上することにもなった。

前夜の準々決勝では世界6位のビアンカ・アンドレースク(カナダ)とも対戦。2018年の全米オープン・女子シングルスを制している大坂は、今年の全米オープンですい星のように現れて一気に頂点へとかけ上がった19歳のアンドレースクを相手に2時間14分もの激戦を繰り広げると、最後まで集中力を切らさず逆転で白星をもぎ取っている。

この準々決勝では全米女王対決としても注目された中、ツアー17連勝中と勢いに乗るアンドレースクに土をつけた。そして決勝でも世界1位のバーディーに前夜の激闘の疲労から思うように体が動かずに苦しめられながらも我慢のプレーから相手のミスを引き出し、ストローク戦の展開で最後は逆転勝ち。強敵たちを相手に抜群の運動能力を発揮した上、特に準々決勝以降はセットダウンでもいら立ちを見せることなく終始冷静さを貫いていたのが印象的だった。

上位選手を相手にクレバーな試合運びと落ち着きを保ち、今大会を制した意味合いはとてつもなく大きい。自身の好調ぶりを満天下に誇示するバロメーターとなったのも間違いないだろう。そして、年間成績上位8人で争われるWTAファイナル(10月27日開幕・深セン=中国)に進出することも併せて決まった。

今年は天国から奈落へと突き落とされかけていた。2018年の全米オープン、そして今年1月の全豪オープンも連続制覇し、グランドスラム2大会連続優勝。世界1位となって国民的なヒロインに躍り出たが、今年2月にコーチを務めていたサーシャ・バイン氏との契約を解消したあたりから結果が急に伴わなくなり、ゴタゴタも続くようになった。

バイン氏とのコーチ関係解消の裏側に金銭トラブルがあったとする疑惑が持ち上がったり、さらに10代前半の頃にコーチを務めていた人物から「賞金と契約金から約20%を受け取る契約を結んだ」と主張され、約200万ドルの賠償金支払いを求める訴えを起こされたりするなど踏んだり蹴ったりの状況にさいなまれた。

この直後、大坂は「誰も私に味方してくれない」と周囲に漏らし、人間不信にまでなりかけていたという。復調への大きなターニングポイントとなったのは9月に後任コーチのジャーメーン・ジェンキンス氏と契約を解消し、シーズン終了後に新コーチの人選に入るまで父のレオナルド・フランソワさんが代役でコーチを務めるようになってからだ。

父がコーチ代理となってからは破竹の快進撃が続くようになり、中国オープンを制覇した現在まで10連勝中。幼少期にテニス経験のない父の教えのもと、二人三脚で頑張って練習を続けてきたことが今の大坂なおみを作り上げたのは広く知られた話だ。大坂自身が「原点に戻った感じがしている」と率直に評する父とのコンビは、それまで不安定だったメンタル面の不安を大きく解消する形につながっているのは言うまでもない。

大坂のメンタルの強さが一段と増したことを表す話がある。お笑いコンビ「Aマッソ」が先月22日のライブ中に「(大坂選手に必要なものは)漂白剤。あの人、日焼けし過ぎやろ」と問題発言。この日のライブ会場にいた客をドン引きさせただけでなく、ネット上からも猛烈なバッシングを浴びせられる結果につながり、所属の芸能事務所は謝罪文を発表した。Aマッソのコンビも謝罪の言葉を文章形式で寄せているが、批判を沈静化させるまでには至っていない。

そうした中、当の大坂は自身のツイッターでちょうど1週間後の29日に「〝日焼けし過ぎ〟って(笑い)。メチャクチャね。知っての通り、私は資生堂アネッサのパーフェクトUVスクリーンを使っているから日焼けはしないのよ(笑いの絵文字)。」という内容の英文を発信し、その絶妙な切り返しで多方面から称賛の声が上がった。

ちなみに資生堂アネッサは大坂がCM契約を結ぶスポンサーだ。複数の米メディアも、このウィットに富んだ大坂のSNS発信をクローズアップ。米スポーツ専門局ESPNは「あらためてナオミ・オオサカの素晴らしさを再認識できる出来事」と報じ、次のように続けている。

「彼女はハイスピードで世界の頂点に立ったことで環境が激変し、一時期はそのあまりのスピード変化によって心身ともに対応できなくなってしまっていた。コーチとの契約問題が発生したことも、もちろんその大きな変化の要因に含まれる。でも、その苦しい時代を体感して乗り越えたことでメンタルは以前にも増して非常に強くなった。本来であればデリケートな問題としてとらえ、ナーバスになって塞ぎ込んでしまったとしても不思議ではない。それでも彼女はユーモアあふれる言葉で自身が平常心を保っていることを皆に知らせ、そして『笑い』も与えた。ナオミ・オオサカはとても素敵で強い、模範のような日本人女性だ」

一部の日本人の心の奥底に潜む〝闇〟

対照的に同局はAマッソの失言についても触れ、こう断罪している。

「日本のコメディアンコンビは残念ながら自分たちの軽率な失言によって日本人の品位を落としてしまったかもしれない。いかなることがあっても人種差別的な表現を笑いに変えるようなことがあってはならないからだ。決してそう信じたくはないが、今回の問題によって一部の日本人の心の奥底に潜む〝闇〟を見せつけられてしまったところもある。多くの国の代表チームが集まってプレーする東京五輪が2020年に行われるホスト国の日本は『国もしくは個人に対する差別はいかなる差別であっても、オリンピック・ムーブメントへの帰属とは相入れない』とする五輪憲章をもう一度理解し直すことも求められる」

大坂なおみの強く、そしてウィットに富んだ切り返しを時に生み出せるメンタル面を今こそ我々も見習う必要性があるかもしれない。

あわせて読みたい

「大坂なおみ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。