- 2019年10月06日 19:21
金正恩に足元見られたトランプ
2/2■ ボルトン氏、トランプの対北妥協の動き牽制
トランプ大統領の危険な対北朝鮮妥協の動きに対してボルトン前補佐官が批判を強めている。ボルトン氏は9月30日、米シンクタンクの戦略国際問題研究所での講演で「北朝鮮が核兵器を放棄するという戦略的な判断を下していないことは明らかだ」と指摘。現在の状況下で、金正恩委員長が「自発的に核兵器を放棄することは絶対にない」と断言した。

また「北朝鮮はわれわれが与えるべきでないものを欲しがっている」とした上で、膠着状態が長期化すれば「核兵器の拡散に反対する者に不利に働き、北朝鮮やイランなどの国々に恩恵をもたらす」と警告した。その上で、制裁が効果的に履行されていない状況、北朝鮮のミサイル実験を問題視しない姿勢など、トランプ政権の一連の対北朝鮮対応を批判した。
トランプ大統領が評価している北朝鮮による核兵器・長距離ミサイル実験の停止に対しても、ボルトン氏は、「北朝鮮がすでにこうした兵器の実験を終えたからだ」と指摘、「良い兆候ではなく、懸念すべき兆候だ」とし、北朝鮮制裁を一部緩和すれば、核開発が続けられるだけでなく、拡散するだろう」と述べた。事実ボルトン氏が指摘するように、「核兵器・長距離ミサイル実験の停止」はトランプ氏の功績ではない。それは2018年4月20日の朝鮮労働党第7期第3回中央員会全員会議で「核兵器化の完結が検証された」として北朝鮮自らが決定したものだ。

ボルトン氏はまた、北朝鮮が最近行った一連の新型短距離ミサイル実験についても、より長距離のミサイル開発につながる可能性があるとした。ボルトン氏の予測通り北朝鮮は10月2日に新型SLBMの発射を成功させた。
ボルトン氏はさらに、北朝鮮が核技術を他国へ売っている危険があると指摘。北朝鮮が核兵器を持つべきではないと考える人々にとっては、「いつか軍事力が選択肢になる必要がある」と予想した(ロイター2019・9・30)。
■ 新たな「変数」に登場「ウクライナ・スキャンダル」
トランプ氏の「新しい方式」が、これまで通りの原則を守るのか、一転妥協になるのかが注目される中で、米朝協議の新たな変数として「ウクライナ・スキャンダル」が登場した。
「ウクライナ・スキャンダル」は、来年の大統領選で再選を狙うトランプ大統領が、焦りを募らせる中で発覚した事件だが、下院を掌握する野党の民主党は9月24日、トランプ大統領弾劾の調査に入った。

ナンシー・ペロシ下院議長は「トランプ大統領が7月、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談(7月25日)で就任宣誓と憲法遵守義務に違反した」と指摘した。この電話でトランプ大統領は、民主党大統領候補として名乗りを挙げているバイデン元副大統領親子に関連する不正を調査してほしいと軍事援助を条件に圧力を加えながら要請したという。
9月26日には今回のスキャンダル内部告発者の告発状が公開されたが、そこには「米大統領が来年の大統領選挙への外国の介入を要請するのに大統領権限を使ったという情報を複数の当局者から確保した」と書かれている。ニューヨークタイムズは「告発者は中央情報局(CIA)要員」と伝えた。
この弾劾調査に対してトランプ大統領は危機感をつのらせ、「米国政治史上最大の詐欺劇だ。国が危険だ」だと息巻くとともに相当なイラつきも見せている。10月2日に行われたフィンランドのニーニスト大統領との共同記者会見で、記者からの質問に怒りをぶちまけ、ニーニスト大統領を置き去りにして会見場を立ち去るなどの異常な行動まで見せた。

共和党はトランプ大統領がウクライナ大統領との電話で不適切な発言をしたが、弾劾するほどではないと反論している。ワシントンでは、上院を共和党が押さえているので今回の事態が弾劾につながる可能性は高くなく、そのまま米朝協議が進むとする意見が多いというが、しかしトランプ大統領がウクライナ側と裏取引を謀議したという具体的な証拠が出てくる場合には上院で弾劾が実現すると指摘する人達もいる。こうした流れとなれば当然米朝協議にブレーキがかかり、協議はハノイのときのように決裂する可能性が高い。
「ウクライナ・スキャンダル」が、トランプの非核化交渉で硬軟のどちらに影響を与えるのか?それも今後の一つの注目点であると言える。
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