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大いなる誤解

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 ただ、たしかに今、アメリカン・ポークは日本市場でシェアを減らしてきている事は事実です。それは別の事情があるのです。

 それは「アメリカン・ポークが安過ぎる」せいなのです。コンビネーション輸入するためには、524円/kgに輸入価格を設定しなくてはなりません。しかし、アメリカン・ポークは圧倒的な競争力があるため、ハム、ソーセージ用の低価格帯は250円/kgくらいになります。それとセットで524円/kgの輸入価格を作ろうとすると、800円/kgもする豚肉を探してこなくてはなりません。そんな豚肉をアメリカ市場で大量に探す事は無理でして、限りなくグレーな価格設定でもやらない限りは無理です。しかし、それがバレたら高額の追徴課税が待っています。であれば、524円/kgの価格を組みやすい、アメリカよりは競争力が低い(豚肉価格が高い)国からの輸入の方が安心してやれるのです。「安過ぎて輸入するのを躊躇ってしまう」という異常な状態が豚肉輸入にはあります。日米貿易交渉におけるアメリカ側の交渉官はこの現状を分かっていたのかな、と若干首を傾げます。

 では、農林水産省の言うように「(発効後10年で)50円/kgになってもコンビネーション輸入は続く」のかと言われると、これも続きません。まず、消費税の事を勘案すると、コンビネーション輸入で輸入する低価格の豚肉と単体で輸入する低価格の豚肉との差はかなり縮まります。機械的に計算してみた所、差は32円/kgくらいまで縮まります。それに加え、コンビネーション輸入をする煩雑さに伴うコスト、それ程引きの強くない高価格の豚肉を在庫で抱えるコスト、追徴課税を受けるリスク等を考えると、50円/kg払ってでも低価格の豚肉を単独で輸入するというふうになるでしょう。

 多分、この「コンビネーション輸入をする方が有利な状況」から「低価格の豚肉を単独で輸入する方が有利な状況」に転換するポイントは、70円/kg(5年後)⇒50円/kg(10年後)の間の何処かだろうと私は見ています。つまり、アメリカン・ポークの視点から見ると、日米貿易協定が発効してもすぐにはシェアの回復は出来ない(安過ぎてコンビネーションが組みにくいので)、ただ、5-10年のタームで見ていると、ある日突然、コンビネーション輸入の仕組みが壊れてしまって、堰を切った様に低価格のアメリカン・ポークの圧倒的な優位性が確保されるようになる、こんな感じになるはずです。ただ、その時はコンビネーション輸入が崩れているので、高価格のアメリカン・ポークについては今よりも売れなくなります。

 報道されている話とは相当に違いがある事にお気付きいただけるでしょう。差額関税制度(+コンビネーション輸入)なんてのは、誰の幸せにもなっていません。本当であれば制度自体は廃止すべきものです。本件はもっともっと奥が深いのですが、紙幅の観点からこの辺りで止めておきます。報道関係者の方、与野党国会議員の方、農業関係者の方、個人的にコンタクトしていただければ何時でも説明します。

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