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新体制カープ、目標はV奪回か、若手育成か - 赤坂英一 (スポーツライター)

(tadamichi/gettyimages)

 この拙稿が読者の方々の目に触れるころには、4連覇を逃した広島カープの新体制作りが着々と進んでいるはずだ。今年で辞任した緒方孝市監督時代と同様、新内閣もまた生え抜きのOBが中心。カープ独自の野球を追究する球団と現場の方針には揺るぎなく、捲土重来を期して新たなチームづくりに邁進していくことになるだろう。

 しかし、いまのカープは3連覇中にはなかった大きなジレンマを抱えている。来年すぐに優勝奪回と36年ぶりの日本一を狙うのか、それとも目の前の勝利をある程度度外視し、しばらく時間をかけ、じっくりと常勝チームをつくり直すのか、だ。

 広島は今季、主力選手が続々と国内FA権を取得した。主力投手の野村祐輔の動向も気になるところだが、それ以上に攻撃陣の戦力ダウンが懸念される。正捕手の会沢翼は楽天がほしがっている、と一部スポーツ紙で報道された。また、松山竜平に興味を持っているパ・リーグ球団もあるとささやかれている。今年、丸佳浩の人的補償で巨人から移籍した長野久義がFA宣言するかどうかも気がかりだ。

 もっと去就が注目されるのが、やはり今年初めて国内FA権を取った二塁手の菊池涼介である。彼の場合、他球団へ移籍することはなさそうだが、昨年オフの契約更改交渉で、球団にポスティングシステム(入札制度)によるメジャーリーグ移籍を直訴。その直後の記者会見でも「メジャーへ行きたい」と公言しており、近い将来、アメリカへ去る可能性は極めて高い。

 さらに、昨年まで正遊撃手だった田中広輔も、来シーズン中に国内FA権を得る見込み。つまり、今年巨人にFA移籍した丸に続き、菊池涼、会沢、田中広と、昨年までカープの3連覇を支えたセンターラインが、2~3年以内に全員いなくなるという〝悪夢〟が現実のものとなるかもしれないのだ。

 その上、今季主に3番で好成績(103試合、打率2割6分9厘、26本塁打、64打点)を残したサビエル・バティスタが、ドーピング違反で出場停止処分(2019年9月3日から2020年3月3日までの6カ月間)を受け、来年まで3年残っている契約を凍結された。来季、彼が復帰できなかったら、カープ打線の得点源は4番の鈴木誠也ひとりだけになってしまいかねない。今年は丸が抜けた〝3番の穴〟が響いたが、来年以降〝4番以外すべて弱点〟となる恐れもある、と言ってもあながち言い過ぎではなかろう。

 この状況をどう打開するべきか、シーズン終盤、何度かチーム関係者に質問を重ねると、こんな答えが返ってきた。

小園が3番に入るのが理想

 「クリーンアップの第一候補は西川(龍馬=4年目)です。今季はもっぱら3番を打って、そこそこの結果(138試合、打率2割9分7厘、16本塁打、64打点、6盗塁)を残した。龍馬が5番に座り、今年の新人・小園海斗(58試合、打率2割1分3厘、4本塁打、16打点、1盗塁)が3番に入るのが理想です。4番の誠也を挟む並びにできれば、3人とも長打もあるし、足も使える。いろいろな攻撃のバリエーションが考えられますから」

 1、2番の候補はチーム随一の俊足を誇る5年目の野間峻祥(123試合、打率2割4分8厘、2本塁打、16打点、14盗塁)、昨シーズン途中、ソフトバンクからトレードで移籍した曽根海成(64試合、打率2割、0本塁打、2打点、5盗塁)あたり。ただし、来季すぐレギュラーになれるかどうかとなると、先のチーム関係者は首を捻る。

 「野間は足と守備は申し分ないんですけど、課題は打撃です。もともと真面目な選手で、非常に練習熱心な割に不器用。後輩の西川や小園なら自然にできる打ち方が、野間は何度も練習させないとできない。しかも、練習をちょっと休むと、すぐ忘れてしまって、また一からやり直しになる。

 打撃なら、曽根のほうが伸びしろがあるかもしれません。小柄(175㎝、65㎏)ながら、速い真っ直ぐに結構強い。これで変化球打ちも覚えれば、小技もできるし、足もあるから、いまのチームには貴重なピースになる」

 しかし、3連覇を支えたセンターラインの選手たちと比べると、まだまだ未知数の部分が多い。一軍半にとどまっている期待株を見渡しても、来季からすぐにレギュラーに定着できるかどうかは疑問である。

 カープファンに根強い人気を誇る堂林翔太は今年10年目を迎えて、自己最悪の成績(28試合、打率2割6厘、0本塁打、2打点、0盗塁)に終わった。会沢の後継者と目されている3年目の捕手・坂倉将吾(51試合、打率2割3分、1本塁打、7打点)、将来を嘱望された7年目の高橋大樹(27試合、打率2割7分9厘、1本塁打、3打点)もここにきていまひとつ伸び悩んでいる。

中村奨成はどうしているのか

 2017年夏の甲子園で1大会6本塁打の新記録を達成し、広陵からドラフト1位で広島入りした中村奨成はどうしているのか。この2年間、一度も一軍でプレーする機会がなく、二軍のウエスタン・リーグの成績(打率2割7分9厘、2本塁打、9打点)も至って平凡。当然ながら、首脳陣の評価も「やっとプロで野球をやる身体になってきたところだ」と、大変辛辣だ。

 そういう現状で優勝争いができるチームにするにはどうすればいいのか。手っ取り早い方法は、何と言っても実績のある外国人選手を連れてくることである。

 実際、緒方監督1年目の15年には、ジャイアンツ、パドレス、アストロズなどでプレーしたメジャーリーガー、ヘスス・グスマンを獲得。球団史上最高額の年俸1億円プラス出来高払いで契約した。が、「この補強は失敗だった」と、かつての主力選手で、指導経験もある広島OBがこう指摘する。

 「グスマンは確かに実績もあったし、試合でもちゃんとヒットは打っていたよ。だけど、引っ込み思案なのか、プライドが高いせいか、自分からチームに溶け込もうとしなかった。一塁手なのに捕手や内野手がマウンドに集まっても、自分だけ行こうとしない。試合後にはヘッドホンで音楽を聴きながら、キャリーバッグを引いて真っ先に帰ってしまう。オレの仕事はした、それでいいだろう、と言わんばかりの態度だったんだから」

 そのグスマンが左脇腹痛で戦列を離れると、カープはシーズン途中に外国人年俸最高額を更新する1億3900万円でネイト・シアーホルツと契約。彼はチームメートとしっかりコミュニケーションを取るタイプだったが、初来日が蒸し暑い6月だったため、熱中症で体調を崩し、結果的にはほとんど活躍できずに終わった。先のOBが続ける。

 「やっぱりね、カープの場合は、たとえ外国人でも日本人と同じメンタリティを持ってる選手でないとダメなんだ。日本人と一緒に汗をかいて、泣いたり笑ったり、喜んだり悔しがったりできるタイプでないと。最近の例で言うなら、昨年まで7年間プレーした(ブラッド・)エルドレッドは、家族ぐるみで広島の街に馴染もうとしていた。6年間(1977~82年)在籍していた(ジム・)ライトルも、自宅でホームパーティーを開き、日本人選手を招待したりしていたもんだよ」

 そのエルドレッド氏は今年で引退し、来年からカープの駐米スカウトとなる。彼が自分のように広島に溶け込める外国人打者を獲得できるか。小さいようで、意外に大きなポイントではないかと私は思う。若手たちの成長とともに、エルドレッド氏が自分やライトルの後継者を連れてこれるかどうか、どちらも期待しながら見守りたい。

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