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その”辛抱”は誰の、何のためだったのか・・・?

ここ数日、ホットに盛り上がってしまっている関西電力役員らの金品受領問題。

今朝の朝刊では、

「関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役から金品を受領した問題で、関電は2日、社内調査報告書を公表した。受領の総額は3億1845万円相当で、豊松秀己元副社長ら2人がそれぞれ1億円超に当たる現金などを受領していた。」(日本経済新聞2019年10月3日付朝刊・第1面)

と昨日の記者会見を受けた記事が中心になっていたが、今日の午前中には、

「関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役から計3億2千万円相当の金品を受領した問題で、豊松秀己・元副社長ら3人が工事を発注していた建設会社など2社からも金品を直接受け取っていたことが分かった。関電によると、現金を含めて計390万円相当に上るという。関電のコンプライアンス(法令順守)意識の欠如が改めて浮かび上がった。」(日本経済新聞Web。2019年10月3日11時38分配信)

という記事が。

さらに午後になっても、

「関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役から金品を受領していた問題で、関電側は2018年以降に、受領総額のほぼ半額に当たる約1億5900万円を元助役側に返却していたことが分かった。元助役に約3億円を提供した同町の建設会社に対する税務調査の時期と重なる。関電は「以前から返す努力をしてきた」と釈明。長年元助役との関係を深める中で、税務調査がなければ返却や公表がさらに遅れた疑念はぬぐえない。」(日本経済新聞Web・2019年10月3日13時配信)

といった記事が飛び出すなど、次から次へと出てくるバッドニュースは留まるところを知らない。

関電としては、仕切り直しの記者会見で社内調査の報告書を公表し、第三者委員会の設置を発表することで追及の動きに一息つかせたかったのだろうが*1、発表が火に油を注いで発表した内容がさらに掘り返され、大阪市長から官邸に至るまで影響力のある発信元から厳しいコメントが出る、というこの流れは、これまでの他社事例でも何度となく目撃したデジャブ。

そうでなくても「原発」という極めてセンシティブな問題が絡んでいる話で、しかも運悪く臨時国会が始まったタイミング、となれば、おそらくは誰かが分かりやすい形で「責任」を取るまでは、この動きが止むことはないだろう・・・。

ということで、会社側にとっては極めて分が悪い状況になっている本件だが、自分は、本件を語る上では、まず、2日のリリースで公表された「報告書」(社内調査報告書)*2にくまなく目を通すことが、やはり不可欠だと思っている。
リンク:https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/pdf/1002_1j_01.pdf

ここに描かれている「役員・社員や地元関係者に対し大きな発言力と影響力をもっていると認識されていた(が、それも昔の話で実際の影響力はさほどでもなかった)」人物の言動や、それに対する会社の役員、担当者の行動に対してどういう感情を抱くか、というのは、読んだ各人のそれまでの人生経験にも大きく左右されるところなのだが・・・

自分は、ここに書かれているあれこれを、涙なしには読めなかった

担当者の取った行動が少しでも意にそわないと激高して「無礼者!」「お前は何様だ!」と罵倒され、「お前のいい加減な仕事ぶりを今から社長に言ってやる」「お前なんかいつでも飛ばせる」といった言葉さえ浴びせられる。

これが通りすがりのクレーマーのセリフなら、ちょっと気を張れば交わすこともできるだろうが、相手は自社のトップにもアポなしで会える、と言われるくらい”大物”扱いされている人物で、歴代担当者は粗相のないように、という申し送りも受けているし、過去の担当者が左遷されたという伝聞情報すら飛び交うような相手。どんなに腹立たしい思いをしても、そう簡単に逆ギレできるはずもない。

そして、過去からの経緯で、年始会だのお花見会だのお誕生日会だのの供応接待も毎年実施。当然その都度、店の手配や事前の案内状のお渡しから、当日の車手配まで、裏方で汗をかいている社員はいたはずである。

そう、これって、日本企業の総務系の人々、特に地方の隅々まで根っこを張っている会社の総務系の人々にとっては、決して珍しくない光景なのだ*3

もちろん、報告書の中で認定されている数字だけ見ても、この受領金額、そしてこの反復継続ぶりは尋常ではないと思うし、いかに相手が権威を笠に着た「顔役」だったとしても、「多額の金品を受け取る」という行為自体が正当化されるわけではない。

報告書の中には「菓子等の土産物の袋の底に見えないように金品を入れて渡される」(5頁)などと言う、実に時代がかったくだりもあるが、そもそも、いくら相手が「大物」だったとしても、”現ナマ”をそのまま受け取ってしまう、などというような光景は、自分はいまだかつて目撃したことはない。

ただ、盆暮れとか何かのきっかけで「ありがたいもの」を頂戴し、その「お返し」をどうするかであれやこれやと奔走したり、うっかり何かをもらってしまって扱いに苦慮しても「会社で対応する話じゃない」と言われて途方にくれたり・・・という話は、「礼儀」*4を大事にする古い風土の会社であれば、どこにでもある話だと思う。

そう考えると、個々の受領者個人に対して、「何ですぐ返さなかったのか?」とか、「何で会社に預けずに個人で持ってたのか?」といった批判をするのは、コンプライアンスの建前論としてもちょっと筋が悪いかな、と思うし、会社の、組織としてのあり方は問わざるを得ないとしても*5、「受領したかどうか」で個人を制裁対象とするのは、あまり真っ当な解決手法だとは思えない。

発覚して、多くの第三者の視点が介入して、本件を分析することができるようになった今となっては、授受行為自体が「尋常ではない」という評価を下すことも安心して行うことができるし、一方で過去の受領行為に対する評価は「理解しがたい」というものにもなってしまう。

だが、多額の金品をもらっても(むしろ多額の金品だからこそ)、「役得~」と喜んで使うわけにもいかず、後ろめたさを抱えながらそれを手元に置き続ける”辛抱”をしなければならなかった、という当事者の心情に対しては一定の理解が必要だし、だからこそ、そういう”辛抱”をさせた「会社」の責任を徹底的に検証していかなければいけない、というのが本件の帰結となるはずだ。

できることなら、これを機に、明に暗に地域社会を仕切ろうとして関係者に負荷をかけるいろんな分野の”顔役”*7、末端の現場担当者が無駄な”辛抱”をしなくて済む世の中になるなら、今回の関電の「犠牲」も長い目で見れば報われる、ということになるのだろうが、海外に目を移せば、そもそもあちこちにいかがわしい(でも当地では富も名声もある)「顔役」が潜んでいる国だってたくさんあるわけで、やっぱりどこかで”辛抱”の契機は残る。

となれば、「会社」が前に出て、毅然とした態度で断る、とか、(軟着陸させるにしても)個々の担当者が矢面に立たされないようにしっかり組織で守る、ということをしっかりやっていくことの重要性を強調していく必要があるだろう。

そして、繰り返しになるが、どうせ世論を盛り上げるのであれば、やはり、どんな社会にも、どんな組織にも存在する”魑魅魍魎”をあぶり出し、そういったものに”悪しき忖度”をする文化そのものを否定する方向にもっていってほしいものだと思わずにはいられない。

結局、いつも泣かされるのは、末端で汗をかいている名もなき担当者たちなのだから・・・。

*1:10月2日付のプレスリリースは新たな調査委員会の設置について|2019|プレスリリース|ABOUT US|関西電力

*2:同社コンプライアンス委員会の社外委員(弁護士3名)と社内委員(コンプライアンス担当役員ら社内役員3名)が「調査委員会」としてまとめたもの。「平成30年9月11日」という作成日付と公表日とのギャップが、本件の最大の問題の一つでもある。

*3:件の助役本人からの事情聴取の機会がなかったことは報告書の中にも記載されているし、また報告書の性質上、社内関係者をかばう、というスタンスもどうしても見え隠れするが、だからと言ってここで描かれている「助役」のあれこれまで”フィクション”と片付ける気には自分はなれない。
なぜなら、自分の過去の経験の中でも、これに近い人物は見てきたことがあるし、そういう相手の前では一担当者はもちろん、相当上の立場の人であっても実に無力だ、ということをいやというほど味わい、感じてきたからである。

*4:この文脈では決して良い意味ではない。

*5:報告書の末尾に小林敬弁護士が書かれている「事なかれ主義」という言葉だけで片づけて良い問題ではないと思う。

*6:この手の顔役の多くは政治家や役所のOB、地元財界のドンだが、時には一流士業の関係者がこういう立場になることもあったりするので、身に覚えがある方はご用心されたい。

*7:そして、それをしない限り、「地域創生」なんて夢のまた夢で終わってしまう、と自分は思っている。

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