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アル・ゴア元米副大統領が来日、気候変動について2時間半の熱弁

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海面上昇によってもっとも大きな影響を受けている都市は東南アジアが多く、経済的な損失では東京も上位に入ります。世界の平均気温が2度上昇すれば、海面上昇によって日本で1800万人が住居を失います。米国・フロリダのマイアミビーチでは満潮時に、街が浸水するようになっています。ワシントンでも同様です。満潮時に雨が降るとキャピタルモールで魚釣りをする人もいます。ホワイトハウス内のオフィスでも、満潮と豪雨が重なったときに床上浸水しました。もし私が大統領であれば、そんなことがあれば気候危機に目を向けますが、必ずしも誰もがそうではないようです。

気候変動は世界の経済にとっても多くのリスクをはらんでいます。投資対象として炭素を考えると、サブプライム同様に炭素バブルが起きているのです。現在発見され、リストに載り、資産として計上されている炭素のうち、パリ協定に整合しながら実際に燃焼可能なものはほぼないのです。22兆ドル分の炭素が燃焼不可能な、サブプライムの炭素の資産です。炭素の価値は燃焼されることが大前提です。しかし燃焼できないのです。条約があるから、法律があるからではなく、テクノロジーと市場が変わっているからです。2018年7月に英BP社の戦略責任者は「資源の一部は日の目を見ることをない」と明言しました。

一方で、化石燃料に対しての世界中の政府や政治家が出す補助金は、再生可能エネルギーに対する補助金の36倍です。どうかしているとしか思えません。日本も化石燃料に対して巨額の補助金を出しています。日本の再生可能エネルギーへの投資額は2010年まで増えましたが、それ以降下がっています。世界全体では2017年の化石燃料に対する補助金は20兆3000億円です。これはGDPの3.7%に匹敵します。


さて、転換点がやってきました。私たちは判断しなければなりません。世界中のどの国でもやらなければならないことがあります。私たちの手には解決策があります。「変えることができるのか」という疑問の答えはここにあります。

そしてこれから先、「変える意思があるのか」。2000年時点で、世界の風力発電量は2010年までに30ギガワットに達すると予測されていました。現在、この予測の20倍の電力量が風力で発電されています。そして風力発電量は指数関数的に増加し続けています。特に洋上発電が増えると、発電コストも減少します。

太陽光と風力由来の電力が化石燃料による発電コストよりも安いという地域は、5年前には世界の5%しかありませんでしたが、現在では世界の2/3の地域がそうなっています。今後は全世界に広がるでしょう。再生可能エネルギーのコストはどんどん下がっています。変化は急速に起こっています。これは間違いなく良いニュースです。

例えば米国・テキサスやカリフォルニアのある電力会社は、21時以降の夜間の電気代を無料にしています。これは風力発電量が豊かだから実現しています。日本はどうでしょうか。比類ない技術を持つ国です。福島沖には世界最大の浮体式風力発電設備があります。日本には産業の規模も世界意有数の技術もあります。ドイツ、ポルトガル、スコットランドやイギリスでも風力を利用して大量の電力を発電しています。

世界規模で見ると消費量に対して40倍以上の電力を風力だけで供給することができるのです。さらに、17年前、太陽光エネルギーの市場は年間1ギガワットのペースで成長すると予測されていましたが、現実には2010年の段階で、予測の17倍の成長を遂げています。昨年ではこの予測より109倍も良い状況でした。成長はさらに急速に進みます。ドラマティックなサクセスストーリーが実現しています。

日本でも太陽光の発電量が増えています。感動的な数字です。日本には中国や米国と比較しても太陽光設備が多く設置されています。また、世界中でたくさんの雇用も創出されています。太陽光による発電コストが既存の発電コストよりも安くなる「グリッドパリティ」が世界中で達成されています。グリッドパリティは0度と1度の違いです。たった1度の違いと思われるかもしれませんが、水と氷の違いがあるのです。市場ではこの違いは投資の魅力となります。2010年以降、再生可能エネルギーへの投資が増えています。


携帯電話を例に挙げてみたいと思います。非常に大型の携帯電話が登場した当時、米国の最大手・AT&T社がマッキンゼーに調査を依頼しました。「今後20年で、世界全体で携帯電話のユーザーはどれくらい増えるのか?」マッキンゼーの返答はこうです。

「良いニュースですよ! 今後20年で携帯電話のユーザーは90万人にのぼるでしょう!」

現実には今、世界の人口よりも携帯電話の数が多いという状況です。どうして大手のコンサルティング会社が大幅に予測を間違えたのでしょうか。その理由は3つあります。まず、技術が予測よりも急激にコストダウンしたこと。次に品質が一気に向上したこと。そして、興味深いことに、世界の大部分の地域では固定電話すらなく、そのような地域で古い技術を飛び越えて新しい技術を導入したのです。

電力では、例えばインドの人口のうち3億人は現在まったく電力にアクセスできていません。こういった地域では従量制の太陽光発電による電力という新しいビジネスモデルも登場しています。バングラディシュでもソーラー革命が急速に広がりました。バチカン市国は世界で最初のカーボンフリー国のひとつとなります。チリでは急激に太陽光発電設備の建設が進んでいます。

インドの経済学者は「現在、インドで石炭火力発電に投資をすることは非常に勇気がいることだ」と述べています。世界中でも同様だと思います。石炭火力発電に投資することは勇気がなければできません。また、賢くない人でないとできないでしょう。年間の世界のエネルギー需要を満たせるだけの十分な太陽エネルギーが毎時間、空から降り注いでいます。

インディアナ州で行われた調査では「経済的合理性を考えれば、石炭やガスを燃やし続ける理由はない。誰にとっても太陽光や風力を利用して発電したほうがいい」という結果が出ています。これは経済的な意思決定です。

インドでは石油やディーゼルの内燃機関の自動車を購入することを、今後10年以内に違法にすると政府が公表しています。そして世界でも16の国で段階的に内燃機関の自動車を廃止します。自動車メーカーもEVに移行しています。2025年までに世界のバスの半数は電気自動車になります。27の大都市が、今後ゼロエミッションのバスのみを購入することを公表しています。

米国で今もっとも雇用が伸びているのが太陽光発電関連の業界です。石炭関連の5倍近い雇用です。石炭はもはや過去のものです。しかし政治では過去のもののほうがより影響力が大きいということがあります。特に現在の大統領のもとでは。しかし国民にとっては、未来は太陽光や風力なのです。

公的資金の投入という面では、日本と中国だけが石炭火力発電に大きく出資をしています。日本よりも多いのは中国だけです。――考えさせられますよね。世界の金融機関は「これ以上石炭火力に投資をしたくない」という方向に進んでいます。にもかかわらず、日本の納税者は石炭火力に投資しなければならない、という状況なのです。

これまで30カ国が非石炭電力供給のアライアンスに加盟しています。これは非常に有望なトレンドとなるでしょう。東京では初めて自治体が排出量取引制度を導入しました。日本は何ができるのでしょうか。パリ協定を掘り下げるより強いコミットメントをすることが求められています。新しい石炭火力発電に投資するのではなく、太陽光、風力、地熱に投資をしてはどうでしょうか。また固定価格買取制度を進め、競争を促し再生可能エネルギーのコストをより下げるということも必要です。


もちろん、国内で新しい石炭火力発電の建設を止めるということもひとつの手だと思います。石炭火力発電への補助金をやめるということも考えられます。地球温暖化の原因の1/4は建物のエネルギー効率の問題とも言われています。照明効率を上げることも有効です。なぜこういったことをしないのでしょうか。電気を利用する個人が電気料金を払っているわけではない場合が多いというのも理由のひとつです。そうすると政府のイニシアティブが重要になります。これから先、実は石炭より太陽光や風力の電力のほうが安いのです。収益性も上がります。

政府が変われば皆が幸せになります。これは重要なことです。一方、日本企業は日本政府に先駆けて再生可能エネルギーの導入に取り組んでいます。それはとても頼もしいことです。そして日本でも気候マーチなどが行われています。世界全体が地球の危機を認識し、変えなければならないと感じています。特に若い人たちはより良い将来を望んで、そして要求しています。

「最後にNOが出たあとにYESがやってくる。そしてこのYESにこそ、未来の世界がかかっている」という言葉があります。世界でさまざまな革命がおこるとき、最初にNOという大きな声が起こります。そして選択を続ければ、YESという答えが出てくるのです。

私たちはこれからきちんとした判断をしなければなりません。私たちには地球温暖化を止める権利があり、力もあります。地球温暖化は大きな脅威です。皆の力を合わせ、皆をよりエンパワーメントすることが必要なのです。皆の将来を救うということに力を貸して頂きたいと思います。

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