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北朝鮮は中国にシグナルを送っているのかもしれない

北朝鮮の暴走で、直接的な被害を受けるのは韓国ですが、外交的に不利益となり、最も困る国はどこでしょうか。中国だと思います。

このままいけば、日韓米の同盟関係が強化され、アジア地域での米国の存在感が高まっていく流れが生まれ、中国包囲網ができることになります。

北朝鮮の暴走は、その絶好の口実となりました。米国が、中近東から、今後とももっとも経済が伸び、大きな市場となってくるアジアに軸足を移してくることはいうまでもありません。

この夏には、黄海での米韓の軍事合同演習に対しては中国の強い反発があり、米国が演習を行う海域を黄海だけでなく、日本海も加えたこと、また原子力空母「ジョージ・ワシントン」の参加を見送ることで落ち着いたのですが、今回の北朝鮮の暴走によって、米韓の合同演習に原子力空母「ジョージ・ワシントン」を参加させると報道されています。

胸先の黄海で原子力空母が軍事演習するというのは大きなエスカレートです。しかし、それに対しての中国側の反応は、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」、「関係国は情勢の緩和に資することをすべきだ」という洪磊副報道局長の談話の発表に留まっており、従来からはかなりトーンダウンしています。

この間の中国の強硬な外交姿勢によって国際世論の反発があったうえに、住宅地への砲撃や民間人で犠牲者がでたことで、中国は強い主張ができなくなってしまったのです。だから金正日はあえて中国が困ることをやったと見ることができます。

中国からすれば北朝鮮は緩衝地帯でもあり、また国家崩壊が起こると難民が押しせよるリスクがあり(これは韓国や日本にとっても同じ)、無事政権の継承が行われ、また中国方式の経済開放政策を行えば、経済の崩壊もなく安心できます。だからわざわざ赤い絨毯を敷いて、胡錦濤が金正日を迎え、政権継承を認め、そのかわり北朝鮮の経済の安定をはかるために、経済の開放政策を求めました。

しかし金正日にとっては、権力の継承と金正恩体制が維持できることが絶対的な政治目的であり、経済開放政策によって国民が豊かになったとしても、国民が外の世界をも知ることになり、独裁体制を揺るがし崩壊させる大きなリスクとなってきます。

もちろん、後継者金正恩の実績を演出するという意味もあるでしょうが、政権の独立性を主張し、中国の思い通りにはならないことをアピールするための一連の行動を取っているのではないでしょうか。そうだとすると中国にとっては、緩衝地帯としようとしていた北朝鮮が喉元に刺さった骨になってしまったことになります。

だから中国にいくら北朝鮮をなんとかしろと言っても、北朝鮮から、あんたの都合通りにはならないよとごねている相手を制御するためには、それ相当のお菓子をだしてなだめるしかないのですが、しかしそれはそれで、ますます北朝鮮の要求がエスカレートしていくことになります。

また北朝鮮に強い発言を示せば、暴走がさらにエスカレートする危険性が増してきます。それはさらに米国が介入してくることになり、中国包囲網が強化されていきます。だから平壌を非難しないというメッセージしかだせていません。

日本は、困っている中国とこの地で存在感を高めたい米国のあいだで上手に立ちまわるのがいいのでしょうが、この間の中国外交の失敗でその選択肢はなくなってしまいました。

こんなときは、勝ち馬に乗るか、つまり現在取っている政策のように、日中韓の緊密な連携をとるか、困っている相手に手を差し伸べる、つまり中国の立場への理解をしめし、日本は当距離外交を行うかですが、現在の状態では後者はありえません。

それよりも、おそらく中国は包囲網ができることは望まないので、対日政策も変化してくると思います。その潮目の変化を逃さないことがもっとも重要なことではないでしょうか。

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