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依頼が殺到の“レンタルなんもしない人”、家族については「テレビではあまり言いたくない」


 「レンタル彼女」「レンタル彼氏」など、多種多様な"レンタル"が利用できるようになっている日本。とりわけ注目を集めているのが、白いTシャツに青いキャップの「レンタルなんもしない人」こと森本祥司さん(35)だ。

 大阪大学大学院を修了後、26歳で結婚し、31歳のときに勤めていた会社を退社。33歳で長男が誕生。そして昨年、34歳でレンタルなんもしない人をスタートさせた。依頼を受けると指定の場所へ移動、そこで"なんもしない"ことが業務内容だ。できることは簡単な受け答えだけ。

 「人並みに頑張ろうと思って生きてきたのが長かった。普通に就職して、辞めて、フリーランスという形で色々やってみたが、ほとんど自分はなんもできないなと。出世欲はあったと思うが、もう満足した。Twitterでも割と有名になったなと思う。達観はしていない」。


 番組ではそんな森本さんに仕事を依頼。ADになってもらい、一連の業務をお願いしてみたが、電話番、コピー、片付け、買い出しなどは「できない」。企画会議に参加してもらっても「最近気になっていることですか…特にないです」「アイデアを出す…?もちろんできない」。唯一受けてもらえたのは、出演者の座り位置をテストするため、椅子に座ることだけだった。旅行も含め、そこに向かうこと、ただいるということはできるが、なにかをする、判断するということは一切しないのだ。

 とりわけ多いのは、愚痴を聞いてほしいとの依頼だという。それでも行うのは「ただただ聞くだけ。"イエス・ノーよりは、ちゃんと受け答えをする"と謳っていて、その範囲で受けている」。それでも「依頼者の方はだいたいスッキリしたと言っている」。

 今年6月には「飛び降りて入院中の人から『何も知らない何もしない人に会いたい』との依頼があり病院へ。付き添いがいれば外出でき、飛び降りた現場の確認等に同行した。途中『姿は見えるけど話はできない所にいてほしい』と言われ離れた後、3枚目の画像のDMが来た。『1人にさせてくれる他人』が必要だった模様」という依頼について明かしている。「ただただ同行するだけだったので。重いとか内容は関係ない」。


 主婦のAさんは、夫と2人の息子の世話、さらに仕事に追われる日々に落ち込んでいたとき、ファンだった写真家の作品展に一緒に行ってもらうことを思いつき、初めて森本さんに業務を依頼した。久々に家庭のことを忘れ、趣味を楽しむ時間。「人と約束したことによって、行動を起こす力になった。もしレンタルさんを頼まなかったら、写真展には行けなかった」。

 以後、スポーツ観戦の同行など、これまでに6回も森本さんを利用した。「絶対に依頼者を否定しない。悪いことを言わない。そこがいいと思う。みんないていいんだと思う。レンタルさんを見ていると。色んな人がいていいし、自分もいていいと思うようになった。前よりも生きるのが楽になった」。


 去年7月放送のAbemaTV『AbemaPrime』でメディアに初登場して1年あまり。依頼の量は数倍に増え、添い寝の相手、アダルトグッズ店への同行、旅行の相手をしてほしいなど1500を超える依頼が舞い込んだ。テレビ番組への出演、そして書籍も出版された。当初は料金無料、依頼主は交通費とご飯代を払うだけでOKだったが、1万円の料金を設定するようになった。

 「生活はそんなに変わっていない。始めてすぐは収入もなかったので、貯金が減っていく一方だった。最近はギャラが発生する仕事も出てきた。あと、書籍化したので原稿料、印税も入ってくる。お金になることがちょっと出てき始めた。有料化したのは、"タダだから利用する"という人もいたが、そこも腑に落ちなかったし、色々な感情から額も含めてなんとなく。今までお礼をもらったことあったし、ある程度ラインを設けないと、依頼が捌ききれなくなったということもある」。

 先月にはドキュメンタリー番組で家族との別居を報じられ、批判も相次いだ。家族とは現在、距離を置いて生活中だという。森本さんの"今の仕事について"家族は「概ね、いいんじゃないという感じ」とした一方、詳しいことについては「ただ、テレビではあまり言いたくない」と話した。


 心理カウンセリングが専門の明星大学准教授の藤井靖氏は、以前から森本さんと依頼者との間に何があるのか関心を抱いてきたのだという。「実際にお話させていただいて、話を聞くのがうまいと思った。聞いたことに対する答え方もそうだし、聞く姿勢や態度も独特のものがある。惹きつけられる感じはある」。

 また、藤井氏によると人の行動にはDoing(自身の行動)とBeing(自身のあり方)があり、Doingは価値を生み出す一方で、仕事などやるべきこと、やらなければならないこともあるため、根性論、強迫感、ストレスといったものもつきまとう。他方、Beingは自身の存在意義や価値観だ。

 「人の心が健康に保たれるには、Beingの時間、"ただある"という時間が必要だ。日常生活で言えば、ただ乗り物に乗っている移動時間や何かの待ち時間、ボーッとテレビを見たり、ソファで寝転がったりするのに近いような時間。それをレンタルさんは作り出しているのではないか。そして、あるがままでいるレンタルさんに対して、見ている方や依頼する方たちは"やりたいけれどできないことを体現してくれている存在"として、ある種の憧れを抱いていると思う」。

 藤井氏の話を聞き、森本さんは「へぇーって思います」と笑う。「なんもしないことの価値はまだ曖昧なところがあるので、そこを発掘していきたいという気持ちがある。価値がある行動をしてもあまり面白くないという気持ちがある」。それでも今後のイメージについて尋ねると「特にない」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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