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【読書感想】NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

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 ブロックバスターが湯水のように資金をつぎ込んでトータルアクセスを宣伝したことで、アメリカの一般消費者がどっとオンラインレンタルに流れ始めた。オンラインレンタルを初体験する消費者は1千万人の大台に乗せた。ウォール街が想像するよりも市場規模はずっと大きいというヘイスティングスの見立てがようやく裏付けられたのだ。ただし、ネットフリックスにとって不幸だったのは、夏ごろには新規顧客の大半はブロックバスター・オンラインで契約申し込みをしていたということだ。

「オンラインレンタル市場が非常に大きいという仮説は実証されつつあります」とヘイスティングスは4月の第1四半期決算説明会で語った。「新規契約者の大半がネットフリックスを選ぶという仮説が正しいかどうかは何とも言えません。少なくとも現状では」

 第1四半期決算は予想を下回る内容だった。売り上げ、契約者数、利益──。主要な指標が事前予測の下限になったのは、ネットフリックスにとって株式上場後では初めてのことだった。悪いニュースはもっとあった。ヘイスティングスとマッカーシーは年末までの年間収益予想を引き下げたうえ、長期目標──毎年の増益率50%と2012年までに契約ベース2000万人──を取り下げなければならなかった。

 唯一の光明はビデオストリーミングだ。ヘイスティングスにハッパをかけられ、テッド・サランドス率いるコンテンツ獲得チームはビバリーヒルズを拠点にフルスピードで品揃えを増やしていた。同時に、再大多数の消費者にストリーミングサービスを届けるために、多様なプラットフォーム──携帯電話、家庭用ゲーム機、DVDプレイヤーなど──にソフトウェアを埋め込んでいった。こうしておけば、消費者はビデオレンタル店・オンラインDVDレンタルからストリーミングへ手軽に切り替えることができるわけだ。「いずれストリーミングが主流になる」との確信から、ヘイスティングスは徐々に大きな賭けに出始めた。これまでネットフリックスが強みとしてきたビジネスモデルが犠牲になるのを承知のうえで、ストリーミングに経営資源を集中投下する体制を築こうとしていた。

 ネットフリックスの躍進に対して、ブロックバスターもさまざまな改革を打ち出し、オンライン郵送レンタルでも安いプランでネットフリックスを追い詰めます。

 しかしながら、もう少しでネットフリックスの息の根を止められる(あるいは共倒れになる)というところで、ブロックバスターは時代の流れを読み間違ってしまうのです。

 2007年7月30日、キーズはCEOとしての新経営戦略を用意して、幹部社員を対象に研修会を開いた。ダラスより140キロほど南下した場所にある高級リゾートホテルを会場にして、「店舗を再び偉大にする」というテーマを掲げた。彼が描いた戦略によれば、店舗はピザや炭酸飲料などの食品・飲料のほか、携帯音楽プレイヤーのiPodやDVDプレイヤーなど家電製品も扱い、総合エンターテインメント施設になる。

 古参の幹部社員はキーズのプレゼンを聞いてあぜんとした。フィールズとアンティオコも同じような戦略を掲げて大やけどしたというのに、どうかしているのではないか……。

 それ以上に驚きだったのは、キーズがデジタルに明るいどころかまったくの「デジタル音痴」であることだった。

「将来、消費者はブロックバスター店にやって来て、店内のキオスクで映画やゲームソフトを自分のUSBメモリにダウンロードするようになるでしょう。USBメモリの代わりにビデオ再生可能なデバイスにダウンロードしても構いません。こうすれば自宅のブロードバンド回線を使う必要もなくなるのです」

 研修会があまりにもショッキングだったことから、エバンジェリストやシェファード、ザインも含め多数の幹部が証券会社に電話し、持ち株の大半──あるいは持ち株のすべて──を売却するよう指示した。もちろんインサイダー取引にならないように事前に定めた方法に従って、である。

 こんな、時計の針を逆戻りさせるようなプレゼンを聞かされたら、そりゃ、絶望するよなあ……

 僕がそう感じるのは、その結果を知っている影響が大きいからなのだとしても。

 ブロックバスターの場合は、既存の店舗をたくさん抱えていたために、それを切り捨てることができなかった、という事情もあるのでしょう。

 ネットフリックスの側からすれば、「ストリーミングで差別化していくしかない戦い」でもあったのです。

 あと、興味深かったのは、ネットフリックスの「映画評価システム」が生まれたきっかけでした。

 映画スタジオ側が1作品当たり15ドルの卸売価格を引き下げないと分かり、ネットフリックスはウェブサイト上で賢くプロモーションするすべを学んだ。最新作や話題作を特集するのをやめて、祝祭日や人気俳優、ニュースに引っ掛けて旧作のプロモーションを展開するのだ。当初は在庫の大半が人気のない旧作で占められていたため、在庫管理のうえではいかに旧作のレンタル収入を増やせるかがカギを握っていた。

 そこでネットフリックスが導入したのが映画評価システムだ。「メンターグループ」をつくり、もともとは選択肢に入っていなかったような作品へ顧客を誘導するのだ。これは専門用語で、「協調フィルタリング」と呼ばれる。例えば、顧客Aと顧客Bの2人が10本の映画を同じように評価したとしよう。その場合、AはBが高く評価する別の映画も好きであり、BはAが高く評価する別の映画も好きであると推論できる。

 「評価システム」には、「顧客サービス」としてだけではなく、「不良在庫になりがちな旧作に注目させ、借りてもらう」という役割があったのです。

 ネットフリックスは、この「評価システム」を進化させることで、他社との差別化をすすめていきました。

 僕は企業の創業物語を読むのが好きなのですが、この『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』は、とくに優れたノンフィクションだと思います。

 これまで「突然あらわれた巨人」のような存在だったネットフリックスの「顔が見えるようになった」気がします。

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