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  • 東龍
  • 2019年10月02日 18:05

店主が客の前でスタッフを激しく罵倒 飲食店での厳しい叱責がダメな理由

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関係業者に及ぼす影響

飲食店には仕入先などの業者が配達に訪れます。こういった関係業者に及ぼす影響を考えてみましょう。

関係業者にスタッフを叱責しているところを目撃されるのも、あまりよいことはありません。こういった業者は開店前やアイドルタイムに訪れ、営業時間ではない飲食店の素の雰囲気をよく熟知しています。

いくつもの飲食店と取り引きしており、他の飲食店の様子もよく知っているだけに、それぞれを比べてみて思うことがあるでしょう。

緊張感のあるブリーフィングを行っていたり、クオリティを高めるためのミーティングを開催していたり、できるスタッフが未熟なスタッフにレクチャーしていたりするのであれば問題ありません。

しかし、理不尽であったり、いきすぎたりする叱責をしており、スタッフの雰囲気が悪いと感じれば、この先を危ぶんでしまうのではないでしょうか。そうなると、質のよい食材を提供したり、関係を深めたりすることに躊躇するかもしれません。

また、関係業者から他の飲食店にスタッフのモチベーションが低下していることが知られてしまえば、スタッフをヘッドハンティングされてしまうこともあるでしょう。

客に及ぼす影響

最後は客に及ぼす影響を考えてみます。

客は飲食店で食事する際に、おいしいものを食べること、お腹を満たすこと、そして、同席者と楽しい時をすごすことが主な目的であると考えてよいでしょう。

客単価が高ければ高いほど、非日常的な使い方であればあるほど、客は飲食店に期待を寄せるものです。そして、その期待には、美食を堪能できるのはもちろんのこと、快適で楽しい時を過ごせることも含まれます。

したがって、友人と和やかに話していたり、恋人とよいムードになっていたり、おいしいメインディッシュに舌鼓を打っていたり、ワインと料理のマリアージュを堪能していたりする時に、鋭い叱責が聞こえてきたら、興醒めしてしまうことでしょう。

店内があまりにもピリピリした雰囲気となっていれば、マナーや所作を必要以上に気遣ってしまい、料理やワインに集中できなくなります。

意識が分散するので、嗅覚や味覚が鈍くなってしまうでしょう。弾んでいた会話もしぼんでしまい、口数が少なくなってくるのではないでしょうか。

そうなれば、当然のことながら、料理やワインの注文も減るので客単価が下がってしまいます。楽しかった思い出を持ち帰ることができなければ、次回の来店も難しいでしょう。

飲食店には、ある種の非日常性が重要です。したがって、食事や会話に適度な緊張感が必要ですが、最終的にはリラックスして食事や会話を楽しめるようにならなければなりません。

飲食店が生み出した不必要な圧迫感によって、緊張からリラックスへのプロセスが妨げられてしまい、客の食味やコミュニケーションから構成される食体験が損なわれてしまうのは、飲食業としては失格であるように思います。

過度の叱責は必要ない

これまでみてきたように、飲食店におけるスタッフへの叱責によいことはありません。確かに飲食店においてスタッフに指導することは必要ですが、過度の叱責は必要ないということです。

通常の感覚をもつ人であれば、おそらく、オマールブルーの濃厚さを味わったり、コルヴェールの滋味を噛みしめたり、ソムリエが勧めるヴィンテージワインの香りをとったりしている時に、スタッフが叱責されている場を見聞きしたくないでしょう。

そういった場面でも、痛みが感じられず、心地よく過ごせる客というのは、飲食店のスタッフに対しても横柄な態度をとるような人であるように思います。

チームで力を合わせる

飲食店の調理やサービスは楽なものではなく、特定のスタッフだけが活躍して目立ってしまっても、特定のスタッフだけが力不足で叱責されていても、よい飲食店を運営できません。

冒頭で紹介した米田氏の金言通り、チームで絆を強めて協力し合うことによって、クオリティの高い料理を作ったり、素晴らしいサービスしたりすることが重要です。

スタッフはただでさえ少ない貴重なリソースであることに、違いはありません。その有限なリソースを適材適所に配置したり、それぞれに活躍の場を与えたり、中長期的な観点で育成したりすることは、とても大切なことではないでしょうか。

スタッフの育成

スタッフをただ厳しく叱責するだけでは、あまり意味がないだけではなく、客に対しても、関係業者に対しても、あまりよいことはありません。

丁稚奉公という時代ではなく、当然のことながらパワハラやセクハラが容認される時流でもなく、各人の実力やコミュニケーション力、および、育成力が試されるのが現代です。

飲食店は、食体験が本来あるべき姿も考えながら、スタッフを育成してもらいたいと思います。

※Yahoo!ニュースからの転載

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