1年余り前にこのブログで紹介した新事業、世の中的には、なかなか意義があると思いつつ、一体、どこから収入を得て、維持していくのか、疑問に思っていましたが、ようやく、判明しました。
CourtTVの創業者Steven Brill 氏、Wall Street Journalの発行人だったGordon Crovitz氏というビッグネームの2人が昨年9月に立ち上げたNewsGuardのことです。
流行りのAIを使わず、ジャーナリズム出身者で固めたチームが、ニュースサイトと情報サイトをじっくり隅から隅まで精査して採点、まともなサイトかそうでないかを判定し、表示するブラウザ拡張機能です。
その仕組みは、1年前の拙ブログ「フェイクニュース排除にマンパワーで挑戦」に詳しく書きましたが、NewsGuardをダウンロードしておくと、検索エンジンで検索した時には表示されたニュースサイトのURLの頭に、こういう表示が出ます。

この緑マークならまともなニュースサイトということですが、こういう表示も出ます。

日本でもかって問題になったように健康関連サイトには”トンデモ”情報が少なくないようで、このサイトもそのようです。
で、個々のサイトに行くと、タスクバーにあるアイコンがこの緑と赤で表示され、それをクリックするとその理由が細かく表示されるようになっています。
昨年9月段階では56人で、今現在は69人に達するスタッフが、米国のニュース/ 情報サイトの96%に達するという2805サイトを今年8月末までに精査し、判定を下したとのこと。(3ヶ月ごとに見直し、例えば、当初、赤だった例の極右サイトBreitbartは、サイトを改善し、現在は緑になっています)
そのうち30%に当たる834サイトに「赤」判定が下され、そのうちの37%、全体では11%にあたるのが健康関連の”トンデモ”情報サイトだったそうです。
このような情報の無料開示は、消費者にはありがたいことですが、一体、そのランニングコストは一体、どう賄っているのか。一年前に記事を書いた時、ネット上で情報を探しましたが、きっちりした答えは見つからなかったのです。
それが、先日、NewsGuardの1周年報告と、それに関連するCablefaxの記事などで概要が掴めました。
それらによると、NewsGuardのダウンロード数は12万5千件にすぎませんが、マイクロソフトとライセンス契約を結んでいました。MSのブラウザEdgeにプリインストールされて、パソコンでもスマホでもユーザーがアクセス出来るようになっているとのこと。
また、同じくMSがスポンサーになって、全米300以上の図書館で、ProBono(専門家の知識を活かした社会貢献)ニュースリテラシープロジェクトが、NewsGuardを使って行われており、拡大中だそう。さらに35州の学校システムでも採用されているとか。
さらに、インターネット広告に大量に出稿する大手企業向けには、”トンデモ”サイトに広告が出てブランド価値を毀損しないように、プログラマチック広告にも対応するBrandGuardなる製品も用意しています。
このように、地道に足元を固めているように見えますが、実は、トンデモない「金のなる木」が育ちつつあるようです。
それは、ISP(インターネットサービスプロバイダー)向けにペアレンタルコントロール用などとしてとして売り込むということです。
今年夏にYouGovが行った世論調査では、なんと36%が、そうしたサービスがあれば加入すると答えています。しかし、創業者のBrill氏は「36%は不自然なほど高すぎる数字だ」とし、「仮に3%の人が月2.5ドル払ってくれるだけで相当な収入になる」の述べたそう。現に、ISPと契約交渉が始まっているとも述べています。
確かに、米国のブロードバンド回線の契約者は1億件をとっくに超えていますから、控え目の3%で300万人として、月2.5ドルで月間収入は750万ドル。そして、同じことがスマホにも広がれば、さらに積み上がります。
それだけではありません。実は、今年5月ごろから、英国、フランス、ドイツ、イタリアでも同様のサービスが始まっていて、今後、アジアを含めて世界展開を目論んでいるのです。
2人は、2009年、中小の新聞や雑誌が課金システムを導入する助けになるJournalism Onlineを始め、2年後に4500万ドルで売却したという実績があります。10年たって、ビジネスセンスは一段と磨かれていたのですね。共に60歳を超えていますが。その年の功か、アドバイザリーボードも元NATO事務総長とか元CIA長官とか凄いメンバーでめまいがしそう(笑)。